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MC ~死に行く運命の子供たち~  作者: 直井 倖之進
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最終章 『生まれることの意味』⑨

「なるほど。ここ、国会議事堂には爆弾が仕掛けられとって、その爆発まで、残り、……十五分っちいうことか」

 現状の説明を聞くと、腕時計を見ながら黒崎が言った。

「あぁ、そうだ」

 黒崎と澪の登場で漸く目を覚ましたキングがそう返事をし、

「因みに、爆弾の解除はできない。そうするように俺がクイーンに頼んだからな」

 と、エースが補足した。

「……で、これか」

 黒崎は、今度はガラステーブルに置いてある携帯テレビを指差した。

 テレビの映像は、先ほどから同じニュースを繰り返し伝えていた。


『臨時ニュースをお伝えします。本日未明、テロリストを名乗る集団が、六人の中学生を人質に取り、国会議事堂を占拠しました。主犯格とみられる人物は、男女二人。黒崎剣一と荻原澪です。なお、黒崎剣一は、福岡市の公立中学校教諭であり……』


 話の途中で、黒崎はテレビの電源を落とした。

 そして、

「ここから出れば、撃たれて蜂の巣。出らんかったら、爆破で瓦礫に埋もれる。……打つ手なしばい」

 と溜め息をつき、ちらりと澪のほうに目をやった。彼女は、静かにジョーカーの遺体を見つめていた。

「……黒崎」

 悲壮感溢れる声で、恭也が彼の名を呼ぶ。

「ん、何や。別にお前が気にすることやなか。ここに入った時点で、こうなることは薄々分かっとったとやけん。それより、爆発までの残りの時間、五分でよかけん、俺の話ば聞いてくれんや?」

「話? 話っち、何ね?」

「いや、まぁ、お前ら六人にとってよりかは、どちらかと言えば、三人に向けた話になるかも知れんばってん。どうや?」

 黒崎は、三人の『MC』に投げかけた。

「聞こう」

 そうエースが頷く。

 六人の子供たちと三人の『MC』の視線が集まる中、やがて黒崎は話し始めた。

「今から十五年前、七月の終わりごろのことたい。当時十五歳やった俺は、突然現れた黒服の男二人に連れ去られた。着いたところは、草垣群島にある研究施設やった。俺と同じく、そこに連れてこられた奴が、他に四人おった。施設に着いた俺たちは、そこで採血されたり心電図を記録されたりと、健康診断みたいなことばさせられた。そして、三日目。俺たちは、施設の最奥にある実験室のごたるところに通された。部屋の隅には六つのカプセル、中央には手術台のごたるものも置いてあった」

「それって、俺たちが見てきたととまったく同じばい」

 そう恭也が呟く。

「それから?」

 エースが先を促した。

「その部屋で、俺たちは、“あるもの”を採られた」

「〝あるもの〟っち?」

 恭也が尋ねると、黒崎はすぐには答えず、

「その前に、お前たち。赤ん坊はどうやってできるか知っとるや?」

 そんな妙なことを唐突に問い返してきた。

「それは、精子と卵子が結合して受精卵になり、母親の胎内で成長して……」

 即座に、豊が教科書を読むかのように返答する。体育は苦手な彼だが、保健体育だけは得意だったのである。

「それたい。俺たちが採られたとは」

「え? まさか、採られたのって……」

「あぁ、精子たい」

 黒崎は、一度深く呼吸をすると、エース、キング、クイーンの三人を順番に見つめた。

「もう察したと思うばってん、俺たちから採られた精子で生まれたのが、『MC』であるお前らたい」

「え? ちょっと待って。せやったら、『MC』の中の誰かが黒崎さんの……」

 思わず口を挟んだ千鶴だったが、拙いと判断したのか言葉の最後を濁した。

 だが、黒崎はそれを正直に告白した。

「そのとおりたい。『MC』の中の一人は、俺の子供たい」

「それが誰なのか、分かっているんですか?」

 レオが尋ねる。

「……俺だ」

 レオの問いにそう名乗り出たのは、エースだった。

「エース、君が?」

「あぁ、そうだ。黒崎さん、……黒崎剣一は、俺の親父だ」

「何や、知っとったんか?」

 黒崎がエースを見た。

「知っていたよ。『MC』研究施設から出る時に、施設内のパソコンを全て閲覧したからな」

「全員が見たとか?」

「いや、閲覧したのは、俺とキング、それからクイーンの三人だ。他の二人は、興味がないようだったからな」

「やったら、母親のことも?」

「……」

 黙って俯くエースに、クイーンが声をかけた。

「もう言ってもいいよね?」

 エースは黙ったままだったが、クイーンは構わずに口を開いた。

「私の、いいえ、私たちのママは、……澪さんなの」

 六人の子供たちの視線が澪に集まる。

 すると、澪は小さく頷き、

「はい。私が、五人の子供たちの母親です」

 と答えた。

「どうして、教えてくれなかったんだ?」

 エースが咎めるような眼差しを向ける。

「……ごめんなさい。言えなかったのです」

 澪はエースに謝罪すると、自らの過去について話し始めた。

「今から三十年前、飛行機の墜落事故がありました。その飛行機に、私の両親は乗っていました。それと、母親の胎内には、私も……。飛行機の墜落により両親は他界しましたが、私は助かりました。息を引き取る母親の胎内から、奇跡的に救い出されたのです。両親を亡くした私を育てたのは、今の韮沢総理でした。彼は、私を世間から隔離した施設で育てました。学校に通うことは勿論、戸籍にさえ記載されることすらなく、私は、殺人術を教授されながら施設ですごしました。そして、十五歳の誕生日を迎えた日、『MC』研究施設へと移されたのです。研究施設で私は、卵子の採取手術を受けさせられました。その卵子と、黒崎先生を始めとする五名の精子とを人工結合させ、カプセル内で育てられたのが貴方たちです。それから約十ヶ月。貴方たちが誕生するころ、私は別の施設へと移るよう命じられました。ですが、私はそれを断りました。貴方たちと一緒にすごしたかったからです。貴方たちは、私がお腹を痛めて産んだ子ではありません。でも、紛れもなく、私の子供たちなのです。離れるなど考えることもできませんでした。そんな私に、韮沢総理は、ある提案を持ちかけました。それは、二つの条件を飲めば貴方たちと一緒に暮らすことができるというものでした。二つの条件とは、“自分が母親である事実を伝えないこと”と“子供たちに殺人術を教授すること”でした。私は二つ返事でその条件を受け入れました。そして、物心ついた貴方たちの前に、指導者として現れたというわけです」

 全てを話し終えた澪の瞳は、大粒の涙で溢れていた。

「そうか。そんな理由が……」

 そう呟くエースの隣で、

「え? ってことは、ママ、三十歳なの? 見えないよ。すっごく若い!」

 クイーンが無理にはしゃいで見せた。

 目から零れる涙を拭うと、澪は、言葉の代わりににこりと彼女に微笑みかけた。

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