第六章 『明かされる真実』⑤
開いている扉から、六人は中の様子を窺った。
入口の先には、広いエントランスホールがあり、その奥の左右にドアがひとつずつついている。中央は、先の廊下へと続いていた。目に見える範囲での話だが、『MC』の姿はない。
「さぁ、入るばい」
いきなりの銃撃戦に備え、恭也は拳銃を手にした。
そして、まさに第一歩目を踏み出そうとしたその時、レオが口を開いた。
「ちょっと待って」
「な、何や? 調子狂うやんか。どうした?」
気合いを削がれた恭也は、苛々しながら聞いた。
「僕が、先頭に立つよ」
そう言うとレオは、誰の返事も聞くことなく、さっさと施設内へと入ってしまった。
「お、おい」
慌ててあとを追う恭也とともに、他の四人もそれに続いた。
まるで自分の家であるかのように、レオはエントランスホールを進んで行く。
「ねぇ、もっと慎重に行動したほうがいいと思うよ」
との豊の言葉にも、
「大丈夫だよ」
と答えるだけで、別段気に留めてもいないようだ。
そのままの勢いでレオは、エントランスホール奥、左手のドアを開いた。
非常照明のみの薄暗い室内には、十数台パソコンが並んでいた。休日のオフィスさながらの光景だが、唯一にして最大の相違点は、置いてある全てのパソコンが壊されていることだった。
レオの後方から、恭也が中を覗き見た。
「誰も、おらんようやな」
息を吐く恭也の横をレオは黙って通り抜け、エントランスホールへと戻った。
「レオ君、どうしたんかな?」
心配顔で千鶴が恭也に尋ねるが、彼に分かるはずがない。
「さぁ」
と、不思議に思うばかりだ。
「こうやってレオがひとりで動く時は、必ず何か考えがあるんだから、ちょっと待ってみようよ」
豊の提案で、五人はエントランスホールにて待機することにした。
五人が見守る中、レオは、今度は右手のドアの前に立った。先ほどとは作りが違う防音のドアだ。
彼は、躊躇いなくそれを開けた。
そこは、射撃場だった。霞が関の施設にある射撃場とまったく同じ造りだ。縦長の室内を注意深く見回してみるが、ここにも『MC』の姿はなかった。
「やっぱり」
小さく呟くと、レオは射撃場を出た。
エントランスホールへとゆっくりと戻ってくるレオを五人が迎える。
「……で、何か分かったの?」
そう問う豊に、レオは答えた。
「ここに、『MC』はいないみたいだね」
「え? どうしてそんなことが分かるのさ?」
「潜水艇だよ。施設の前に『MC』が乗ってきているはずの潜水艇がなかったんだ。恐らく、彼らは既に別の場所だろうね」
「なるほど」
豊は、先ほどレオが潜水艇を見ながら首を傾げていた理由を理解した。
「何や、四人がおらんとやったら、ここにおっても仕方なかやんか。黒崎に報告して、もう帰ろうや」
恭也が玄関へと引き返そうとする。
それをレオが止めた。
「まだ帰っちゃ駄目だよ」
「何でや?」
「竹田君は知りたくないのかい? 国が機密事項として隠している『MC』の、本当の姿を……」
「本当の姿?」
「そう。僕たちが知っている『MC』というのは、全員が十四歳で、テロ対策のために組織された殺人専門部隊ということだけだ。だけど、僕は、この話にはもっと大きな“何か”が隠されていると思っている。それを知るための手がかりが、この『MC』研究施設にはあるはずなんだ」
「国が隠している“何か”か……」
恭也の表情が変わった。
「面白そうだね」
「あぁ。それに、いずれ『MC』とは会わねばならねぇ。事前に相手のことを詳しく知っておくのは大切だ」
豊と清次郎は乗り気なようだ。
「早坂さんと山瀬さんは、どうする?」
そうレオが問うと、にこりと笑って千鶴が答えた。
「そんなん決まってるやん。レオ君が行く言うてるのに、ウチに断る理由はないわ。亜依ちゃんは、恭ちゃん次第やろうけど」
「ちょっと、千鶴ちゃん!」
亜依が頬を膨らませた。
「……だってさ。どうする? 竹田君」
レオが恭也に目をやる。
「まぁ、お前らだけじゃ不安やからな。付き合ってやるばい」
腕を組むと恭也はひとつ頷いて見せた。
「まったく、素直じゃないんだから。楽しそうだから連れて行ってください、って言えばいいのに」
そう悪態を吐く豊を、
「何か言うたや?」
とひと睨みし、恭也は、エントランスホールから真っ直ぐに続く廊下へと歩き出した。




