第六章 『明かされる真実』①
第六章 『明かされる真実』
八月十四日、午前一時。首相官邸五階、総理応接室。
「韮沢総理。『MC』の所在が判明しました」
そう報告したのは吉川長官だった。
「場所は?」
「草垣群島、『MC』研究施設です」
それを聞き、総理はにやりと笑った。
「ほう。自分たちの巣に帰ったか」
「はい」
「では、早速、臥蛇島の子供たちを向かわせてくれ。それと吉川君、今回は君も同行するように」
「え? 私も、ですか?」
吉川長官は表情を曇らせた。
「何か問題でもあるのかね?」
「それが……」
周囲を気にして言葉を濁す吉川長官に、総理は柔らかい物腰で先を促した。
「ここは官邸だ。盗聴の心配などはないから安心したまえ」
「は、はい」
緊張した様子で一度深く呼吸をすると、吉川長官は漸くその重い口を開いた。
「マスコミへの公表はしておりませんが、実は、昨日、奥多摩の山中にある火薬倉庫から、大会用に準備してあった大量の打ち上げ花火が盗み出されました。しかも、犯行をなしたのは『MC』で、花火は既に『MC』研究施設へと運びこまれたようです」
「以前話していたTNT火薬も一緒にかね?」
「いえ、そちらは別の場所に保管されているようです」
「なるほど、それで?」
「もし、『MC』が施設爆破のために火薬を持ちこんだのだと仮定した場合、そこへ近づくのは危険かと……」
「だから、自ら出向くのは避けたい、か」
「……」
吉川長官は顔を伏せた。黙したままで返事はなかったが、つまりはそういうことだった。
「吉川警察庁長官」
「は、はい!」
突然役職つきで名を呼ばれ、彼は思わず身を固くした。
「警察官の使命は何だ? 自らの危険を顧みず、国民を守ることにあるのではないのかね? いやしくも君は、警察組織で最も高い階級であり役職でもある警察庁長官という立場にあるのだ。君が気弱な態度を取れば、二十七万人の部下に示しがつかなくなるのではないのかね?」
そう諭すと、総理は試すような目で吉川長官を見た。
『MC』の件は、その全てが国の機密事項である。そのため、ここで彼が研究施設への出向を断ったとしても、一般の警察官にそれを知る術はない。当然、部下に示しがつかなくなるということもない。無論、そのことは吉川長官にも分かっていた。
しかし、内閣総理大臣に、「使命として出向せよ」と言われ、断ることのできる警察官はいない。それは、警察庁長官といえども例外ではなかった。
吉川長官は、そう答えるしかない返事をした。
「承知しました。本日、私も『MC』研究施設に同行いたします」




