第五章 『合宿』④
拠点で待っていた千鶴と亜依に、レオが代表して結果を報告した。
「そうかぁ。何もない普通の無人島やったってわけやな。まぁ、それでも、島の地形は大方把握できたし、レオ君が無事やったってのが何よりやわ」
四人がいない間に焼いていた壺鯛の干物をテーブルの上に置きながら千鶴が言った。
「レオ君、レオ君って、レオばっかり。僕たちの心配はしてくれないんだから」
むっとした様子で、豊が口を挟む。
「え? 何? ひょっとして、豊、妬いてんの? 可愛いなぁ」
「そんなんじゃないよ!」
茶化す千鶴に、喰ってかかる豊。笑いながらそれを見ている四人。
ガスランプに照らされた室内で、彼らは、久し振りに『MC』や任務のことも忘れて食事と談笑を楽しんだ。献立は質素なものだったが、心の安定を得るには十分だった。
……しかし、
「何だか、皆でキャンプ場に遊びにきてるような気分やなぁ」
そう呟いた千鶴の言葉で、六人は現実に戻った。
思い出したのだ。ここはキャンプ場などではなく、遊びにきているわけでもないのだということを……。
「明日から、どうしようか?」
案を求める豊に、レオが答えた。
「当分は、ここを拠点に生活していて大丈夫だと思うよ。ただ、灯台は島自体を照らすのには役立っていないし、灯りはガスランプしかないから、出歩くのは日中だけにしておいたほうがいいだろうね」
「ちゅうことは、今日やることは何もなかとやろ? もう休もうや」
恭也が大きな欠伸をする。
「そうしよう。僕も疲れちゃったよ」
賛同する豊も大口を開けた。どうやら“欠伸は伝染する”というのは本当のようだ。
「ほな、また明日にしよか? あ、そうや。向かいの建物、こっちと同じ造りやってん。せやから、ウチと亜依ちゃんはあっちで寝ることにするわ。……亜依ちゃん、行こ」
そう言って、千鶴が手招きする。
すると、亜依は、
「待って。これが終わるまで」
と、洗いかけの食器を彼女に見せた。
「そんなん豊に洗わせたらいいやん」
「ちょっと、何で僕なのさ?」
豊がむくれる。
「だって、豊の家、定食屋さんなんやろ? 皿洗いは得意分野やん」
「そんなわけないだろ!」
仲よく言い合う二人に背を向けると、亜依は洗い物の続きを始めた。
そこに、
「手伝うばい」
横から恭也が手を差し出した。
「う、うん。……ありがとう」
亜依と恭也は、並んで皿洗いを始めた。
亜依が洗った皿を恭也が布巾で拭いていく。そんな二人の様子に気づいた千鶴が、豊との話を止めて亜依に声をかけた。
「亜依ちゃん。ウチ、先に行っとくからな。ちゃんと恭ちゃんと話せなあかんで」
「ちょ、ちょっと、千鶴ちゃん!」
亜依が膨れっ面を見せる。
だが、千鶴は、
「ほな、おやすみ~」
そう言って五人に手を振ると、別に気にする様子もなく向かいの建物へと去って行った。
拭き終った皿を重ねながら恭也が亜依に尋ねた。
「俺に話って、何?」
「そ、それは、……あの、今朝は、ごめんなさい」
「何が?」
「私のことを、守れるわけがない、なんて言っちゃったこと。恭也君の気持ちも考えずに、本当にごめんなさい」
「え? どうして、亜依が謝る必要あるとね?」
恭也は不思議そうな顔をした。
「謝らないけんとは俺のほうたい。亜依は俺が守る、とか、今の俺が言える台詞じゃなかった」
「そんなこと……」
「ばってん、俺に亜依を守れるだけの力がなくても、守りたいっち思う気持ちは本物たい。それだけは、信じてもらえるね?」
「うん。ありがとう」
亜依が笑顔で返事をすると、顔を赤くしながら恭也は、
「これで、終いばい」
と、最後の皿を重ねた。
「じゃあ、また明日ね、恭也君」
「あぁ、おやすみ」
軽く手を振る恭也に見送られながら亜依も千鶴の待つ向かいの建物へと歩いて行った。




