表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
MC ~死に行く運命の子供たち~  作者: 直井 倖之進
PR
28/59

第五章 『合宿』②

 十分後。

「じゃあ、話し合ったことをまとめるよ」

 一度五人を見回してから、レオは続けた。

「今回、僕たちに与えられた任務は、“『MC』の潜伏先が判明するまで、この臥蛇島で生活すること”なんだけど、それにどんな意味があるのかは不明。でも、現在、この島の周辺が船舶進入禁止になっている事実と、収納ボックスの中に人数分の“これ”があったのを総合して考えれば、この島で何かが起きることは明白」

 “これ”と呼んでレオが取り出したのは、施設内で六人が毎日使用してきた拳銃、“ニューナンブM60”だった。

「そこで、これからなんだけど、先ずは、この島の地形を把握することから始めてみようと思うんだ。ただし、何があるのか分からないから、探索に行くのは女の子を除く四人だけで。いいかな? 早坂さん、山瀬さん」

 レオが二人へと目を向ける。

 この問いかけ、いつもの千鶴ならば、「レオ君について行く」と言い出したであろう。

 ところが、この時の彼女は、

「うん。そうしてもらえると助かるわ。さっき少し見てんけど、ここ、シャワーがついてるみたいやねん。四人が外に出てる間に使わせてもらうわ」

 と、意外とあっさり留守番を承知した。

 また、それにつられるように亜依も小さく頷いた。

「よし。そうと決まったら、暗くなる前に戻れるようすぐに出発しよう」

 レオに促され、恭也、豊、清次郎が拳銃を携えて立ち上がった。

「レオ君、早く帰ってきてな。ウチ、お夕飯の準備して待ってるわ」

 笑顔で手を振る千鶴に見送られながら、四人は建物をあとにした。


「……さて、と」

 四人がいなくなったのを見届けると、千鶴は、徐に亜依へと視線をやった。何故だろうか、その目は怒っているようにも見える。

「な、何?」

 僅かな動揺を隠し、亜依が尋ねる。

 すると、小さく溜め息をつき、千鶴は言った。

「何、って、こっちが聞きたいわ。今朝、ウチらが道場を出たあと、恭ちゃんと何があったん?」

「いいえ、別に、何も……」

 言葉を濁す亜依。

 だが、千鶴は更に追及した。

「やったら、施設を出てから今まで、二人の会話がないんはどうしてなん?」

「会話がないのは、清次郎君も同じでしょう?」

「清ちゃんは、元もと口数が少ない人やから心配ない。でも、亜依ちゃんは違う。そうやろ?」

「……」

 亜依は黙って俯いた。

「なぁ、亜依ちゃん。『MC』の怖さ、澪さんから聞いたやろ? 下手すると、全員殺されてしまうかも知れんのやで。せやから、その可能性をできるだけ削るためにも、今はお互いが信じ合い、助け合わなあかん。せやのに、二人はぎくしゃくしてる。気になるのは当然やん」

「そう、だよね」

 亜依は、申し訳なさそうに小柄な身を一層縮めた。

「ウチ、()()(ごと)にあれこれ口出しするの、ほんまは嫌いやねん。せやけど、不協和音があるせいで『MC』に殺されるなんてもっと嫌や。亜依ちゃんもそうやろ? やから、話してみて。六人の誰も欠けることなく、生きて帰るためにも」

 千鶴の必死な訴えが通じたのか、漸く亜依はその重い口を開いた。

「あ、あのね……」

 彼女は、七夕祭りでの出来事と道場であったことを千鶴に話した。

 そして、

「ねぇ、千鶴ちゃん。私、怖いのかも知れない。人を好きになって、またその人に裏切られるのが、怖いのかも」

 その目に涙を浮かべる。

 そこに、千鶴はきっぱりと告げた。

「亜依ちゃんは、ずるいわ」

「え?」

「だってそうやろ? 亜依ちゃんは、まだ恭ちゃんのこと信じてへんやん」

「だから、それは裏切られるのが……」

「そんなもんは言い訳や。裏切られるのを怖がるんは、その人を信じたあとなんちゃうん? 七夕の彼氏と恭ちゃんは、まったく違う人なんやで。信じてくれてへん人を守ろうとして殺されたんじゃ、恭ちゃんも浮かばれへんやろ?」

「恭也君は、死なない!」

 亜依は、むきになって否定した。

 それを見た千鶴は、「分かってる」と言うように頷き、

「ほら、やっぱり亜依ちゃん、恭ちゃんのこと好きなんやん」

 と、微笑んだ。

 単純な誘導訊問に引っかかってしまったのだと気づいた亜依は、真っ赤になって顔を伏せた。

「好きなんやったら、信じてあげなあかんやろ?」

 千鶴が亜依の肩にそっと手を置く。

「うん」

 亜依は頷いた。

「まぁ、万が一、亜依ちゃんを裏切るようなことをしたら、その時は、ウチが恭ちゃんに、真空飛び膝蹴りをお見舞いしたる」

 そう言って千鶴が笑うと、亜依も、

「ありがとう、千鶴ちゃん」

 と、笑顔になった。

「……あ、そうや。もうひとつの建物、見に行かへん?」

「うん。行ってみよう」

 千鶴の提案に亜依も賛成し、二人は、向かいにある建物へと駆け出して行った。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ