みんなで遊ぼう(?)ミニゲーム!(激闘編)
ごめんなさい。前半で力尽きました。
【前回までのあらすじ】
「ゲームしようぜ!」
作者が放ったそんな感じの言葉と共に計画始動! 集まる少年少女! 一部超年齢!
集まる作品群! 「〜自称予測不可能のベタSTORY〜」「魔王様の悩みの種」「オレと死神?!」「勇者以上魔王以上」大好評連載中!(宣伝)
そして参戦する6人の勇士たち! 競技は鬼ごっこ! ただし鬼役は超巨大生物兵器、ドリンダちゃんEXだった……!
倒れ行く参加者! 見守る仲間達! 果たして競技の行方は!?
***
……? なんだか胡散臭いあらすじが流れたみたいだけど、総無視だよ。
現在、私こと魔道書の茜は全力で逃げてます。
――ギシャグオラヴァアアアァァァァ!
だって……だってドリンダだもん! 私、一度捕まった事あるんだよ!? もう二度とゴメンなんだよ!
「だ、誰か遅れている人は!?」
「いや、大丈夫だ。後ろに人影は見えん」
「ちゅうか何やねんこれはー!?」
「アカネさん、大丈夫ですか!?」
今、私たち参加メンバーは全員一丸となって逃げている。あんなものが出てきたら勝つとかそんな問題じゃないし。
とりあえず心配してくれるアルスに頷きを返して、ひたすら走る。アトラクション内の、電灯すらも付いていない暗闇の中を。
乗り物のアトラクションなのでレールが敷いてあるのだが、幸運な事にレールを整備する為の道がレールの下にあったので、私たちはなんとかその道で足を踏みはずさずに走る事が出来た。
ただ、ドリンダはレールに触手で絡み付いて、自分の体を前へ前へと引っ張って移動していた。速い。今さらだけど、何をどうしたらああなるのかな?
「……しかし、鬼ごっこという限りは最後の一人になるまで終わらんのだろうな」
苦々しげに、飛鳥が不吉な事を言う。
「で、でも時間制限とかもあるんじゃないかな!?」
「それよりも」
私の反論は、アキラに打ち消された。
「皆さん……時間切れがあるとして、足が持ちますか?」
確かに。今はまだ競技開始から10分ほどだけど、体力が尽きたら終わりだ。
この中で一番体力が無いのは……私!?
「い、いやだ! たべ、食べられッ!? ヒィイイィ! ヌルヌルがッ! ベタベタがぁ!」
「!? 落ち着いてください、アカネさん!」
…………ハッ!
アルスの言葉でなんとか正気を取り戻したが、やはりトラウマだ。しかもこのまま順当に行くと……。
「クソッ!」
私が考えていると、一際大きな声が聞こえた。駿だ。
「こんなドリンダちゃんに捕まりそうなペースで走ってられるか! 俺はひとりで逃げるぞ!」
なんだか推理モノの死亡フラグみたいな事を叫び、駿はペースアップ。
速い。軽やかにレール上を駆けていき、何の障害も無いように飛び、跳ね、さらにペースを上げてそして――
「うおおおおおおぉぉぉぉ――グハッ!」
ぶつかった。
そういや作者さん、手動の扉があるとか言ってたなぁ……。
――ギィシャアアアアァァァ!
そんな事が起こっている内にも、ドリンダは段々と速度を上げて近づいてくる。
「あ、あれ! 扉が見えたよ!」
私の目に映ったのはなんだか未来っぽい、真ん中が上下に開いきそうな扉。
そしてその近くには……自転車!?
「「「「「…………」」」」」
走りながらも、全員の脱力と困惑が伝わってきた。
「し、手動ってこういう事だったんですね……」
「自家発電かよ!」
アキラが脱力を、秀一が困惑を、それぞれ口に出してくれた。そりゃあもう、私でも変だって分かるよ……。
そんな妙な空気の中、飛鳥が一人、速度を速めた。その手には、すでに抜き身の日本刀が握られている。
「だが、こんな扉など!」
そのまま日本刀を上段に持ち上げ、振り下ろす。
空気を裂く音。日本刀の先が地に着く。
しかし、扉には傷一つついておらず、日本刀を震わせるだけだった。
『ふはははは! 無駄無駄無駄ァ!』
そしてその時、何だか悪役な作者の声が聞こえてきた。良く見ると近くにスピーカーがある。
『その扉はダイヤモンドの21736倍の硬さを誇る、チョーカタイゴウキン製なのだ!』
胡散臭いよ。
『という訳で、君達には馬鹿正直に自転車をこいでもらわなければなぁ、ハアッハッハッハ!』
どうもでいいけど、さっきから鬱陶しいよ。
「でもこれ誰がこぐ……って、もうすぐそばにっ!?」
作者に気を取られている内に、ドリンダがすぐそこまで迫ってきていた。
「大丈夫だ、まだ手はある」
みんなが絶望しかけた時、口を開いたのは飛鳥だった。
「ホンマか!?」
秀一の言葉に軽く頷き、飛鳥は歩き出した……倒れている駿の元へと。
え、えーと、これは……。
「多少は気を引けるだろうから――っな!」
放り投げた。駿を。後ろに向かって。
そんな駿は綺麗な放物線を描き、空に吼えていたドリンダの口へホールインワン。
――きしゃ、ぐや、キィエエエエエェ!
なんだか無茶苦茶満足そうだ。触手をビチビチ跳ねさせながら踊って(?)いる。
「よしこれで多少は気を引けた! 今の内に誰か自転車を――!」
「ま、待ってください!」
飛鳥が声をさえぎるようにアキラが叫んだ。
「あ、あれ……」
アキラが指差した方を見ると……ちょうど、触手が壁から生えてきた所だった。
ちゅどーんって感じに壁を割り、現れたのはドリンダに羽のような触手が追加されたもの。もちろんのごとく飛んでいる、サイズは普通のドリンダの半分ほどだけど。
『これぞドリンダちゃんEXの特殊能力が一つ、増殖! 特殊空兵植物ドリンダちゃんスレイブ、略してドリ☆スレだ!』
作者うるさい。ていうか☆の意味は?
いや、そんな事なんて無茶苦茶どうでもいい。問題はそのドリスレ(☆省く)が何十匹も出てきた事だ。
「チッ、仕方ない。応戦するか」
「せやな……桜惷!」
飛鳥は舌打ちしながら先ほどの日本刀を捨て、どこからか真っ黒な刀を取り出した。うん、どこから出したとかはきっと聞いちゃいけないね。
秀一は答えながら印を結び、刀を喚び出した。うん、きっと私が何でこんな描写が出来たかとかツッコんじゃいけないと思う。
「宮鷹とやら、お前は右を頼む」
「あぁ、絶対通すなや」
そして二人は左右に散っていった。
……!
「あとはジテンシャですけど……ボクがやりましょうか?」
「えぇっと、あの……アキラさん、あれの使い方知ってるんですか?」
残った二人は(元の作中でも)異世界組。ていうか口調似てるね。勇者はこんなものなのかな?
その二人の視線は、私に集まった。
「な、何かな?」
「あの、茜さん。あれの使い方、分かります?」
アキラは困ったように自転車を指差す。あぁそうか、二人とも見たことはあっても乗った事は無いのかな?
でも、私には無理なんだ。今の私には……。
「え、えぇっとね、私、足が届かないと思うんだよ!」
適当に言い訳で場をごまかす。そうすると、二人ともどちらがこぐべきかの議論に戻っていった。
後ろを振り返ってみる。
「行くで桜惷!」
<了解だ、秀一!>
秀一は刀に語りかけていた。私の知り合いにもそういう人が居るから(ていうか私自体がそうだから)驚かないけど、ちょっと興味出た。
多数のドリスレが触手を伸ばし、自転車を狙って破壊しようとする。
それに対して、秀一は札をばら撒き、叫んだ。
「守護符!」
札の近くにあった触手が、壁に触れたように弾かれる。しかしそれでも、まだ半分は残っていた。
どうするのか。秀一の手元を見ると――すでに印は完成している。
「もう半分!」
いきなり強い風が吹き、もう半分の触手も薙ぎ飛ばされる。
ドリスレは妨害する秀一を先に倒そうと決めたのか、触手を縮め、照準を絞る。しかし、その時にはもう、秀一はドリスレ達の背後に回っていた。
「植物には炎って、昔から相場が決まってるよなぁ?」
刀を片手で斜め上段に、余った手では印を結んでいる。
そして、刀が炎に包まれた。
「燃えろ――焔火抜刀!」
<オラァ! 灼熱豪熱炎熱ヒャッハァ! 燃えろ萌えろ燃えろぉ! テメェラ全員灰すら残さずや萌やす! 燃やし尽くす!>
色々と間違ってる気がする声が刀から聞こえた。
しかしそんな事、技の威力には関係なかった。ドリスレの一群は真っ二つになり、地面に落ちて萌え……燃えている。
「遅い!」
秀一にばかり気をとらわれていると、飛鳥の方からの声でびっくりしてしまった。
そちらに目を向けると、飛鳥はすでに敵を斬った後だった。
「質より量……その程度で我に敵うとでも――」
そのまま刀を振り上げ、近くの敵を斬る。さらに残っていた一匹を蹴り飛ばして遠くの一匹にぶつけ、近づいて二匹を一気に斬る。
「思っているのか!」
しかし動き回っていたせいで、ドリスレがかなり近くまで来てしまっていた――が、心配は無かった。
飛鳥が別の敵を片手で斬りながらもう片手を持ち上げると、仕掛けていたワイヤーが動きを止めたのだ。
「これで最後っ!」
そして飛鳥が後ろを見ずに放ったクナイで、それらは全員地に落ちた。
スゴイ、この二人、無茶苦茶強い。
「アカネさん、早く!」
前を見ると、もうドアは開いており、アルスはその先に居た。
自転車のほうを見ると、やはりこいでいるのはアキラだ。女の子に任せるのが嫌だったのかな?
「速く、行って、ください! これ、最高速で、やらないと、すぐに、閉じて――」
アキラが荒い息を吐きながら、必死に促してくれる。
でもね、ゴメン無理なんだ……。
「アカネさん、早く来ないと――っ!?」
アルスは気づいたみたい。
私の足に絡みつく、ドリンダの触手に。
「無理なんだ、ゴメンね、アルス……先に行って」
「そ、そんな!? それぐらいすぐに!」
アルスが扉をくぐってこちら側に戻ってこようとした時、それは起きた。
――ギシャオオオオオオオオオォォォォォ!!!
駿を食べた時よりなお強い歓喜の咆哮。ドリンダちゃんの祝福と共に、この洞窟は彼女(?)の支配下に入った。
壁、天井、床。全てから触手が這い出してくる。きっとしばらく動かなかったのは根を張るためだったんだろう。
「何ぃっ!?」
「チィッ!」
さすがの二人も、足場が無い状態では戦えない。
「これじゃあ……!」
呑み込まれた自転車から飛び退ったアキラも剣を構えようとするが、やはり足場がないと無理だ。
もしも、ここに一人でも飛んだり浮いたり出来る人が居れば結果は変わったのだろう。現実は無情だ。
「アルス……一人だけでも、逃げてほしいんだよ」
「み、みんなあああぁぁぁぁ!!」
アルスの叫び声を耳朶に響かせながら。
私は、目をつぶって不快感に身をゆだねた。
***
ここはテーマパークの端の端、海に面したそこには帆船を模したアトラクションが浮かんでおり、近くに文字通り浮遊している(なんかジェット噴射みたいなので)モニターには作者が映っている。
『はっはっは! やはりドリンダちゃんEXの特殊能力その二、生長には敵わなかったようだな!』
作者ウザイ。
満場一致の不快の視線を受けながら、作者は高笑いした。
「外道め……」
精巧に作られた帆船のレプリカの上、仁王立ちした灯夜が呟く。
『いやいや〜、シャワールームに直行させてあげただけでもナンボかマシでしょ。今頃みんな、精神的ダメージを受けながらヌルヌルを洗い流しているさ!』
外道だった。
何はともあれこの帆船の上、次の競技が始まろうとしていた。
天下無双チーム―小鳥遊 灯夜
武闘院チーム―不治宮 紀子
魔界チーム―里原 葵
聖涼チーム―レナ・フォード=ライズ・ハールド
天和湾屋チーム―クルル・バスティ
影薄同盟―北川 一聖
『さぁて、競技参加者も出揃いまして……今回の競技は――これだぁ!』
作者が叫ぶと、彼が映っているモニターが切り替わり、文字が表示された。
『無双大会夏の陣! 〜生き残るのは誰だ!?〜 』
またもや胡散臭かった。
「無双大会だと?」
「ナツノジン……?」
「生き残るのは……って嫌な予感しかしねぇ!」
一堂に動揺がはしる。特に影薄。
『うん、まぁとりあえずね、アレ知ってるでしょ? ○国無双。アレ見たいに出てきた敵を片っ端から倒していって、制限時間終了時に一番多く倒していた人の勝ちでーす』
敵ってオイ、とほぼ満場一致の胡乱顔。
『フハハハハ! まぁとりあえず、その海賊船みたいなのがフィールドで、甲板の上以外に出たら失格だから。つー訳でバトルスタートイェイ!』
そして作者の掛け声と共に、RPGに出てきそうなガイコツ剣士×無数出現。
「……は?」
疑問の声は一聖だ。
その声に反応したのか、甲板にワラワラ現れたガイコツ剣士が一斉にそちらを向く。規則正しく体育会系のように回れ右(or右向け右)、ギラーンと目が光った。
「え、嘘……?」
一聖が唖然としている内に、ガイコツ剣士たちはまるで兵隊のようにがしゃがしゃと音を立て、歩き出した。
そのまま軍団に一聖は飲み込まれていった。さながらタイムセールス中のオバサンに巻き込まれるように!
「ちょ、ま、俺、最近折角戦えるようになったのにいいいいいいいいぃぃぃぃぃぃ――…………」
ドップラー効果な声と共に、一聖は一部のガイコツと海に落ちていった。
『はいはい、一聖脱落ね。影薄チームはいいトコねぇなー』
「……作者、あんな化物どこの世界観から引っ張ってきた?」
正直かなり腰が引けているが、かろうじて灯夜が訊ねた。
「あれは……なんかに似てるような? んにゃー、なんっか違うようなー……?」
近くでは、レナが首を捻っている。
「ねぇねぇ、里原さんにクルルちゃん、あーいうのって居るものなの?」
「私は見たことなーい。マー君の魔界には居ないのかも」
「似てるのは知ってるけど、同じとなると……分かんない」
紀子も二人に尋ねるが、やはり答えられないようだった。
そんな所に、作者からの回答が割り込む。
『そりゃー知らなくて当たり前、魔界とかは似たの居るだろうけどさ。元々、このテーマパークは僕の没ネタ集合体なんだよな。そっから使える情報を取り出して、こんな感じにでっち上げたって事。そのガイコツは昔考えた雑魚キャラって事ね』
釈然としない者もいたが、一応は全員が納得。
『ちなみにソイツ、弱いけど復活するから。まぁそういう訳で尽きる事はないから、頑張ってねー』
そしてそのままモニターはどこかへと飛んでいった。
残されたのは参加者五人とガイコツ剣士×無数。一聖? ドーデモイイジャン。
「よーし、とりあえず……プリンー!」
先陣を切ったのは葵だった。手元に剣を召喚し、魔法と剣でなぎ払っていく。
「わ、私もー! リュウ君とデート!」
続いてクルルも一群の中へ突っ込む。同じく剣を振り回し、そして別方向でドンドンガイコツを倒す。
「なんだかよく分からないけど、私も!」
さらにレナも鎌を出し、重力魔法で牽制しながら突撃していった。
それぞれ三方へ散り、敵のいない中央に残されたのは灯夜と紀子。
「……ふむ、少し思ったんだが」
「……うん」
二人はは向き合って呟き、同時にため息を吐いた。
「俺(私)たち、不利だよな(ね)……」
そう、こんな明らかに戦闘する競技では、戦闘力を持たない二人では不利すぎる。
灯夜には小鳥遊流護身武術があるにはあるのだが、広範囲を薙ぎ倒せるほどのものではない。紀子にしたって、ヤンデレ属性を持つただの女子高生で――
「……ん?」
そこで灯夜は気づいた。ここは作者の没ネタ集合体、つまりは妄想空間である。
「もしかして、それなりに何でもありなのか? いつも全開なパロネタをこちらの意志で使えたり……? だとするならば、不治宮の作中での印象や行動……属性に解体しても大丈夫か……ふむ、その中で作者の印象に強く、なおかつ戦闘能力があり、実現可能な者は……」
「ん? 小鳥遊さん何考えてるの?」
「いや……な。ちょっとそこで待っていてくれ」
灯夜は紀子を置いて、少し離れた内部への扉へと近づいた。
そこにあったのは包丁。何故か血が付いている、何故か刃が欠けている。
どうしてここにこんな物があるのか。
それに対して灯夜はこう考えた。ここは作者の思考のゴミ溜まりなのだから、必ず臨んだ通りになるわけではないと。ある程度は気分的なものが混じるのではないかと。
「不治宮、これを持ってみてくれ」
灯夜はくいと親指で鉈を示した。
「へ? う、うん……別にいいけど……」
紀子は良く分からないといった風に首をかしげながらも、包丁に近づいて――手に取った。
「…………」
その瞬間、紀子の目は暗く暗く、裏よりもさらに暗く沈む。妙に脱力したように腕をダランとさせ、とてもつもない陰鬱オーラを放っていた。
「う、おぉ……正直予想以上だが、どうだ?」
「……ゆー君ゆー君ゆー君ゆー君ゆー君ゆー君ゆー君ウフフフフ……」
「予想以上過ぎる……! 作者が少し前にそちら方面に勉強していたのは知っていたが……まさかこれほどまでに印象が強いとは……」
作者の気分、それはまさしく読んでその通りに気分的なもの。つまりは「その場のノリ」。
「ヤンデレ」という区分分けがある紀子が、それを強調する物を持てば……と灯夜は思ったわけだが、まさに的中。危なすぎるほどの効果を発揮している。
「よし! そうだとわかれば俺も……」
自分の区分を考えてみた。
・お嬢様
・姉妹
・俺口調
・金髪碧眼
絶望した。
「ぐ……役に立たん……。いやむしろ一つ一つが広義的過ぎてイメージがまとまらん上に、全部まとめると該当する物がない……!」
金髪碧眼のお嬢様っぽい武器……分からん、と呟いてその場に崩れ落ちる灯夜。
そんな灯夜の頬を、冷たい物がかすめた。ズドン、という音と共に突き立つ白銀の煌めき=セラミックス。
「ゆー君とデートゆー君とデートゆー君とデートゆー君とデートゆー君とデート……」
そして、今この戦場で一番危ないのは自分だと、そう確認した。
***
ここは帆船の船首に近い方、葵が魔法でガイコツ剣士を吹き飛ばしていた。
「あはははは! すごいすごい首が反対だよ!」
かなり遊びながらも、順当に敵を倒している。
ガイコツを薙いでふと足を止めた時、葵の視界の端に真っ赤なドレスの人物が映った。灯夜だ。脇目も振らず全力疾走でこちらに向かっている。
「あれ? どうした――」
の? と聞きかけて、さらにもう一つの人影を見つけた。もちろん紀子だ。
腕をダランとさせたまま、「あはハはははハハは!」なんて歪な笑い声と共に灯夜を追いかけている。
「さ、里原! 助けてくれ!」
灯夜が叫んだ。
「え、えぇっと? なに? なんなの?」
いつもはいじる側だからか、葵は突然の出来事に理解が追いついていない。
「あははははハはハハハは!」
しかし紀子はそんな状態でも構わず灯夜を追いかける。
ついに灯夜が葵の位置を追い越した時、紀子の対象が変わった。飛び上がり、葵の脳天に包丁を叩きつけようとする。
「うひゃあ!?」
葵がほぼ反射的に持ち上げた剣で、紀子の包丁は受け止められた。
「うふふふふゆー君とデートゆー君とデートゆー君とデートゆー君とデートゆー君とデート」
心なしうっとりした表情で、紀子は後ろへ飛び退った。
それを視界の端に収めながらも、葵は灯夜の方へ首だけ向ける。
「えと、あの……これ、何?」
「優勝するなら他の参加者を全員潰した方がいいと判断したらしい……まったく、物騒な……」
「なるほど!」
「待て! 何でそんな『そんないい考えがあったのかー!』みたいな反応なんだ!?」
葵は灯夜の台詞を聞き流して前を向いた。
「ふふふ……それなら話は早いよ! 全員船から落とせば私の勝ちだね!」
「そ、その手があったかー!」
「そっかー!」
「待てそこの二人! 駄目だそんな事しちゃ! 駄目だって! 駄目だって言ってるでしょおおおぉぉぉ!」
口調が変わるほど必死な灯夜の言葉にも耳を貸さず、レナもクルルも納得してしまった。
そして今ここに、世にも恐ろしい戦闘が繰り広げられる。
「『ダークネスショット』!」
「なんの! 重力魔法・超重力!」
「やめろ! 俺は一般人だ! こんな魔法合戦に巻き込むな!」
「あはははは! 私だっていくよー!」
「…………うす胸」
「「「なんだとおおおおぉぉぉ!!?」」」
「やめろー! 盛り上げるなー! 確かに不治宮以外、胸は無いが!」
「「「…………」」」
「あ、あれ? 怒ってるか? い、いやスマン、ちょっと口が……」
「自分だって無いくせにー!」
「一人だけ落ち着いててー!」
「…………醜い争い」
数十分後、帆船は真ん中から綺麗に割れて、炎上していた。
***
所変わって、ここは中央広場。時は移って、帆船炎上から一時間後。
そこには今回のゲームに参加した全員と、作者が映ったモニターが。
『さっきの……無効な。なんていうかもう、途中から誰が何を倒したのか分からんようになったから……得点に含めない事にするな?』
作者はげっそりとした顔でボソボソ言った。
「で、次の競技だな」
和也が呟くと、それに反応して作者の顔があがる。
『おう! 次はクイズ大会だー!』
作者が叫ぶ。すると、ボンと安っぽい音を立て、カラフルな座席が現れた。背もたれに二つの電光板があり、机の前には名前が書かれ、手元にはそれぞれボタンがある。
赤い席には和也と書かれ、後ろの表示は3。青い席にはアイスと書かれ、表示は5。黄色い席には龍二と書かれ、表示は6。緑の席には悠冶と書かれ、表示は4。白い席には文一と書かれ、表示は2。段ボール箱の席にはキッタナイ字で『きょうた』と書かれ、後ろにあるバレーボールの得点板は片方が1とめくられている。
『んじゃまぁ、数字の説明からするけど「「「待てええぇぇぇ!!」」」
作者の台詞を、影薄同盟がさえぎった。
『んあ? どーしたよ?』
「どーしたじゃねぇよ! 恭田さんの扱い違いすぎだろアレ!」
「なんで段ボールなんだよ! なんで体育の授業に出そうな安っぽい得点板なんだよ!? 適当丸出しじゃねぇか!!」
一聖と駿が抗議する。
『飛び入り参加なんだからしゃーねーだろ』
まったく、と呟きながら作者が手を振ると、ステキなテーブル(紅茶とクッキー付き)が出現。もちろん座り、紅茶を啜る作者。
『僕の妄想具現化にも限度はある』
「これ見よがしに上等なモン作ってんじゃねー!」
なおも抗議する一聖。駿はいきり立って作者に殴りかかろうとする。
そんな二人に、恭田がポンと肩を叩いた。
「まぁ落ち着け。俺なら大丈夫……勝てばいいだけの話だ」
言葉の前半は二人をなだめるように、後半は作者を睨んで強い語調で。
『へぇ。思ったより自信があるっぽいな』
「クイズ大会だからな。俺が勝てるかもしれねぇだろ」
そう言って恭田は不敵に笑った。
『ん、まー似合わない表情の影薄は置いといてルール説明なー』
「似合わない言うな!」
『ま、この数字は今までのゲームで順位の高い順から6〜1で割り振ってるんだ。二回目のも含めるつもりだったけど……無効試合だから二倍した数字な』
本当に置いとかれる恭田。そして数字が二倍になる電光板。
『影薄同盟は後から手動で直しといて。で、ま、ここに書いた数字は支援回数だ。この数字の回数分だけ、回答者に答えを教えたりと支援する事ができる』
作者が解説しながら手を振る。すると次は、それぞれの座席の後ろにそれぞれ二つずつ、パイプ椅子が現れた。影薄同盟のは茣蓙。
『Hay! では回答者及びその仲間は指定の席にお座りくださーい! これより、ミニゲーム大会の最終決戦ダァーー!』
***
という訳で、全員座った。
『もちろん、この形式で理解してくれているとは思うが、早押しクイズだ。終了時に一番ポイントの高いヤツが優勝。分かったな?』
全員頷く。態度はそれぞれだが。
『では第一問! 東大寺――「いっけー! マー君!」
作者が問題文を読み始めた所で、葵が後ろからアイスの手を動かした。
「ちょ、葵さん!?」
「だって早押しなんだから、早く押さないと!」
「せめて問題文ぐらい聞かせろ!」
口論虚しく、アイスの手がボタンに届きそうになった所で――時がゆるやかになる。
ただ、この状況を実感として感じられる者はただ一人。
「こんな所で使えるのは驚きだが――行くぜ、鎌」
<了解、ご主人!>
和也。運命すらも捻じ曲げる鎌、「運命の悪魔を切り裂く刃」を持つ者。
「さってと、悪魔は……」
<右のほ「左だ阿呆」
悪魔と呼ばれるそれを和也が切り裂いた時、その空間は終了。アイスの手がボタンからずれた位置を叩く。
そして鎌を振り下ろした体勢のまま、和也はボタンに手を伸ばした。
「オラァ!」
「ちょ、待てや和也! 答えわかっとんのかいな!?」
「多分、むきになってるだけのような気が……」
そしてその瞬間、やはりというべきか動く者が居た。客観的には高速で、主観的には周りが遅くなっているだけだ。
「別世界でなら使っても大丈夫だからな……!」
悠冶の「S.T.mode」だ。
そして和也よりも先に手が届きかけた時――やはりというべきかしつこいというべきかもういい加減にしやがれコンチクショー。
和也と悠冶、二人の手がボタンを押しに行こうとする前の位置に戻っていた。
「ハハッ、ほぉら馬ぁ鹿、焦りすぎだ」
文一の別人格、ヨモギの魔法である「否定」だ。なんであろうと消す事ができる反則級の力、それで手が動いたという事実を消したのだ。
「文一……? い、いやとにかく馬鹿にしてないで早くボタンを押せ!」
「……ん? あぁ、そういうルールか。まぁ、メンドイしいいじゃん、ハハ」
「良くないよ!?」
ヨモギは動かない。
その隙を突いて、恭田が動いた。
「ぬおおおぉぉぉ! 影薄の意地いいいぃぃぃ!!」
その手は動きを逸らされたアイスや動く前に戻された和也と悠冶、動く気が無いヨモギよりも速かった。
恭田の手がボタンに届く、まさにその時――ていうかもうだれも割り込むなよ飽き飽きなんだよ。
「ほいさ」(ピンポーン)
机とボタンにひびが入るような速度で、龍二がボタンを押していた。
『う、おぉ……! ちょっとそれ修復するのもメンドいんだけどなぁ……ま、いいや。で、答えは?』
手を振りながら(その動作で机は修復された)作者が訊ねる。
「リュウジさん、答え分かるんですか?」
「トウダイジとかしかー……うみゅう」
アルスもクルルも首を捻る。一瞥し、リュウジが事もなさげに答えた。
「ん? 聖武天皇じゃねーの?」
『正解いいいぃぃぃ!?』
なんと正解だった。
『つーかどうして分かったの!? むしろ奈良の大仏とか答えてくれれば適当だと思えるのに……』
「勘だ勘。たいした事じゃねだろ?」
たいしたことです。
そして、龍二の支援とはまた違った方の表示に『1』と出る。
『え、えぇい……じゃあ次の質問だ!』
作者が次の問題を出そうとする。今この場には、一種異様な雰囲気があった。
龍二はともかくとして、他の全員は妨害したり妨害にあったりしている身だ。次に誰が何を仕掛けてくるか、それが考えるべき事。
考えた末、5人中3人は同じ結論に至った。
『では第二問! 弘法も筆の誤りという言葉が――「レナァ!」「飛鳥、頼んだ!」「行け、茜ぇ!」
和也の席から、悠冶の席から、文一の席から、それぞれレナ、飛鳥、茜が飛び立った!
……つまり、結論とは支援するべき後ろの人に妨害を頼む事だった。
『ふふふ……ついにこのバトルの真価に気づいたか……』
しかも、作者は推奨していた。
それぞれのポイントが1減り、それぞれがそれぞれに襲い掛かる。
まずはレナ。鎌を振りかざし、龍二の真上から落下。
「我、ここにて鎌の意を唱えん。我が鎌よ真の力を現せ。其は科学の闇が産みし数多の中の一陣の光の内なり! 出でよ! 燃え盛れ焔よ、燃えろ燃えろ燃えろ燃えろ燃えろ燃えろ燃えろ燃えろ! 煉獄の鎌!」
龍二に対して鎌を振り下ろす――と見えて、狙いはボタンだ。回答権を奪う気なのだろう。
とてつもない熱量を伴った鎌、それの降下に割り込んだのは黒い剣だった。
「やらせない!」
クルルだ。龍二のポイントが1減るが、なんとかボタンは無事である。
そのまま二人は鍔迫り合い、やがてどちらからともなく離れた。
レナが再び踏み込もうとする――が、ここで作者の声が聞こえた。
『あ、ちなみに1行動に付き1ポイントだからな。もう一回攻撃したらポイント減るぞー!』
和也の残りポイントは5、対して、龍二は11。迂闊には近づけない。
レナが首だけ後ろに向けて、和也に続けていいか聞こうとした時、そこでも騒ぎは起こっていた。
飛鳥だ。それぞれの机から繋がったワイヤーが、和也の利き腕を捕らえていた。
「和也、動くな!」
秀一は桜惷を取り出し、ワイヤーを切り裂く。その間に、和也は片手だけで氣を溜めていた。
「雨宮流気功術基礎の型・爆撃殺!」
狙撃。飛鳥はその場から飛び退いた。これで和也:4、悠冶:7。
なのだが、ここで飛鳥の背後から襲撃をかけるものが居た。葵である。
剣を取り出し、下段から切り込み。飛鳥は飛び退いた体勢のままで、刀を背に回して受け止めた。
「ほう……出来るな」
「優勝は私のものだー!」
そのまま、二人は適度に打ち合い続ける。
そんな葵が出ていったアイスのチームには、茜が居た。
「どうも、こんにちはだよ」
とても朗らかに、小学生にしか見えない無邪気な笑みで、茜は挨拶した。
アイスとアキラはどう対応しようか迷って動けない。
その隙に、ヒョイと灯夜がボタンを持ち上げた。
「あ、あぁ! 盗られた!?」
「ふん、油断する方が悪い」
灯夜はボタンを持ったまま、一目散に逃げ出す。これで文一:2だ。
「くっ、追うぞアキラ! このままでは葵に殺される!」
「わ、分かりました! くそっ、なんて卑怯な……!」
そしてそのまま逃走劇――とはならず、灯夜はそのボタンを大遠投。卑怯の元凶、文一へと渡した。
「さぁてさて、マー君さんにアーちゃんさん? 今、貴方達の運命は僕の手の平の上にあるわけですが……」
黒かった。ヨモギじゃないけど文一が黒かった。
そんな感じに、カオスな状況。
『く……ふふ。いやァ中々カオスじゃあーりませんか。いやはや、こういうのを待ってたんだよ』
作者だけが楽しんでいた。
***
しばらく経って、第13問目。
ここまで来て、途中からは妨害も比較的落ち着いており、支援ポイントも得点もまったく同じ横並びだ。
支援ポイントは1か2。得点は2。
『さてさて、キリがいいのでこれで最終問題とさせて頂きます』
作者の言葉、それが耳の届くと、全員が身構えた。
最後の最後、支援ポイントを使い切り、敵を押しのけてでも正解する気だ。
『問題! 現代では愛媛にあたる伊予国にある群の名前を一つ、挙げなさい』
マニアックな問題だ。たまたま知っている以外、答えられる人間は少ないだろう。
しかし、そんな事など関係なく、全員が全員戦闘態勢だ。もう誰にも止められない。
『では――初めぇ!』
むしろバトルを臨んでいたかのような作者の声と共に、技を放つ大多数。
例えば和也の席。
和也「ミヤ……アレやるぞ」
秀一「アレ、か……ま、一回感想欄で使ったから大丈夫やろ」
和也・秀一「王者の風、全てを飲み込み」「覇者の怒、全てを震わせる」「風は天を貫き通して」「怒は大地を砕き散る」「光を」「闇を」「「滅する、裁きとして! 奥義・風天怒土滅殺!!」」
レナ「ギガントグラヴィジョン!」
レナは高位の重力魔法、二人に至ってはネタバレ技だった。
さらに、龍二の席。
アルス「『我が聖剣ライトブリンガーに宿りし神々の力よ。今その力を解き放ち、邪なる者を討つための聖なる加護の力を我に与え給え……リスティル・オム!!』」
クルル「『全ての闇よ、我に集え。漆黒の暗闇よ、光を打ち消せ。我の願いよ、悪しき者、善しき者、全てを飲み込む闇となれ……ガレス・シェバンツァ!!』
龍二「おー、頑張れ」
エル『貴様も奥義なり何なり使わんか、馬鹿者!』
龍二「めんどっちーなー。ま、たまには包丁使ってやらねーと包丁が変になるかもしれねーか。な、包丁?」
エル『貴様は……!』
龍二「よっしゃやるぞ!」
エル『いきなりか!』
龍二・エル『閃雷、全てを分かち』『轟雷、全てを砕く』『二つの雷ここより集い』『全てを飲み込む光とならん』『『奥義!龍王天雷剣!!!!』』
二人はそれぞれの最強技。龍二もそれなりである。
そしてアイスの席。
葵「よーし、マー君もアーちゃんもやっちゃえー!」
アイス「待て! こんな所で魔法なんて使うと被害がだな……」
葵「大丈夫だよ。きっと」
アイス「何を根拠に言っている!?」
アキラ「魔王……こうなった葵さんには何をいっても無駄ですよ……」
かなり諦めムードな魔界組。それぞれ、魔力を集中させる。
お次は悠冶の席。
紀子「ど、どーするのゆー君!?」
飛鳥「ふむ。我ら一般人としてはこのような非常識極まりない勝負に参加できんのだが」
悠冶「だな。あんな事、出来るはずがない」
紀子「じ、じゃあ逃げ――」
悠冶「る訳ないだろ」
飛鳥「こんな時の為に、な」
飛鳥はバッグから様々な重火器類を取り出す。重だ。マシンガンとかバズーカとかソッチ系だ。
最後に、文一の席。
灯夜「さ、さすがにこれは……」
文一「お嬢様は逃げてください。……茜、やるぞ」
茜「え、えぇ? でも確か、この状況で武器化はネタバレになるんじゃ……?」
文一「気にしたら負けだ」
茜「え、ええええぇぇぇ!?」(強制武器化)
文一「(検閲)、展開。(発射+発射+発射+発射)×(検閲)。(検閲)!」
こちらは完全なるネタバレだった。(検閲)入れられてるし。
まぁ、そんな感じで。
恭田・駿・一聖「うわああああああぁぁぁぁ!!!」
『お、影薄同盟、正解。宇和ね』
色々と大変な物が放たれちゃいました☆
***
残骸になったテーマパーク、ここに居るのは作者と影薄同盟だけ。他はもう帰った。
『よし、お前らにテーマパークのチケットをやる! 良かったな!』
「「「良くねえええええええええええええええええぇぇぇぇぇぇぇ!!!」」」
三人の叫び声が、仲良く大空へ消えていった。
投稿時間ギリギリ……えぇもうすいませんでした。
実は、最後の最後にシリアスバトルを無理矢理入れてカオス度を上げようとしてましたが、時間の都合で排除。帆船での作者の妄想うんぬんは、それのための伏線だったんです。(構想段階のチート級能力な文一がラスボス予定だった)
では、グダグダですがここらで終わらせて頂きます。
……投稿できてない人も居るし、出来ればまたやりたいなぁ、この企画。




