妹
「も、申し訳ございません!」
ピコリン
[こっちです。]
案内しろと命令し、声の元に向かう。そしてある部屋にたどり着いた。そこで見たものとはーー
「ほら、この方がどうなっても良いの?」
拷問? をしている妹と思わしき人物とメイドだ。イスにメイドを固定し、その隣に俺が知らぬ男が立っていた。そして妹の手にはショートソード、かな? 床に鞭も転がっている。
「分かりました……」
メイドはナイフを渡されそれを指に当てる。予想でしかないが指を詰めさせるらしい。それもナイフで。スカートが破れて露出している太ももには鞭の跡が見られる。
「セフィール、ごめん……」
男がメイドに謝っている。男はメイドに比べると若い。メイドが二十歳くらいなのに対して十七歳ほどに見える。
セフィールと呼ばれるメイドとこの男の関係は分かるか?
ピコリン
[もちろんです。おそらく想い人かと。状況から察するに男の方は無理やり連れて来られたようです。]
なるほどねぇ〜、結構手の込んだことをするな。視線を戻すと妹と目が合った。
「あ、お兄ちゃん……」
お兄ちゃんだと!? くっ、これがIMOUTO萌えなのか? あ、今はそんな事は関係無かった。
妹の名前はなんだろう。
ピコリン
[クリスです。]
「クリス、やめろ」
注意をする。これで大人しくしてくれれば良いが。
「……お兄ちゃんがそう言うなら」
なんでこいつはこんな態度なんだ?
ピコリン
[お兄ちゃん子だからかと。]
うん、だろうね。おそらくあの手に着けているブレスレットが触られたとかだろう。
「?……あ、ありがとうございます!ありがとうございます!」
そう言ってメイドは部屋を出て行く。残されたのは俺と妹のクリスの二人だけだ。
どうしてクリスはあんな事をしたんだろう。よっぽど気が立ったんだろうか。
ピコリン
[これは妹様の趣味です。失敗をした使用人を連れ込んではいたぶります。]
なっ……これには絶句せざる終えない。
ピコリン
[しかし特に悪い事というわけではありません。この世は封建社会、貴族にとってあれくらいは普通なのです。ちなみにイザーク様の父や母も同様な事をしています。]
なるほど……そりゃそうだよな。文明的によく知らないけど中世ヨーロッパぽいしなぁ。封建社会ってこんなんなんだな。
ピコリン
[それと、この家、バイヤー家は貴族との中でも度を超えてます。一度領地についての事を確認しておいた方が良いかもしれません。]
爆発寸前ってか? はは……それは笑えねぇな。平和に暮らしたいってのに。問題なく、普通に。
「お兄ちゃん?」
おっと、我が可愛い妹が目の前にいるんだったな。ボケーとしてる危ない人に見られるところだったぜ。
「あぁ、悪いな。だがこれからはなるべく控えるんだぞ?」
俺はこの国までとはいかなくとも、せめて領内は変える。そのためには本丸からってね。
「なんで? 分からないよ……今はお兄ちゃんが言ったから止めたけど、あいつらは私達の物なんだよ」
歪んでやがる。上流階級ってのはこうも身勝手なのか。クリスは俺の妹だけあってまだ幼いのが救いだな、まだ更生の余地がある。問題は両親だ。優しそうな面しながら中身は残虐か。いや、残虐とすら認識していないのだろう。和解はまず無理と判断して進めよう。
「クリス……よく聞いてくれ。物は大切に、だ。
そして、俺の言う事は聞け」
「っ」
大人しくなったようだな。さてと……どうしたものかねぇ。まずは領地の把握か。
ピコリン
[補足ですが一番酷かったのがイザーク様です。そのため妹様は貴方の言う事を聞いているのかと。]
○
「父さん、書庫に入る許可を貰いたいんだ」
俺は今八歳だ。十歳になると貴族の子供は学園に通わされる事がほとんどだ。そこでする事はコネ作り、派閥の所属など。
そして学園で良い立場を得るために前知識が欲しいと頼み込んだ。
「そうか、やはりイザークは賢いな!」
この馬鹿豚がっ。俺は父と母が嫌いだ。創作物などによくある典型的な悪役貴族のまさにそれだからだ。
書庫には領地に関する書類なんかが保存されていたりする。この世では本は貴重だ、なので必然的に貴族の屋敷にある書庫は警備が厳しくなる。その限りではないが、そこに重要な書類を保存する事が多いのだ。
「はぁ〜出るわ出るわ、計算の合わない財務系の書類」
これは酷い……おそらく三割くらいはどっかで漏れてんぞ。さらに、そこから良い暮らしを維持、向上させるために金を使う。そして贈賄まで。
「うん、これ赤字じゃん」
歳入を歳出が超えている。借金に、税を上げるつもりだろうが……今でさえ重い税をこれ以上上げるとなると民が爆発だぁ。学園に入学する前に最低でも何か一つバイヤー領に産業を導入しなければ破綻だ。
「おや、これは……」
領地の酷さを確認した後は知識を付けるために本を読む。リミットは学園に入学するまでの二年。分からない所があれば質問する。そして見つけたのがーー
「魔法、やっぱりあるのか!」
手に取ったのは、馬鹿でも分かる魔法講座! だった。タイトル舐めてんだろ笑。
どうも!
名前がごっちゃになってしまっていたので修正しました。多分これで合っていると思います。それと、名無しAとメイドの関係も修正しました