短編:面白くないと分かって作品を創る作家はいない?
再掲載シリーズの一つです。
PIXIVとマルチ投稿するかもしれません。
短編:面白くないと分かって作品を創る作家はいない?
面白くないと分かって物語を描く人間は果たしてどれだけいるだろうか?
ラノベ作家志望のフリーター、浜崎 淳は思う。
彼は元々会社努めの人間でフリーターになったキッカケは簡単だ。
就職した先で上司と上手く行かず、耐え兼ねて退社したのが理由である。
思えば勉強、勉強、勉強だけの人生だった。
それが普通で当たり前だと思った。
だが今にして思えばロボットの様な生き方だったように感じる。
若者の自殺者が多いのはある意味この辺りが関係しているのかも知れない。
それから就職活動をして、その場繋ぎでフリーターになり、そして今はニートになった。
何の為に働いているのか、生きているのか分からなくなったのだ。
ふと彼は部屋で高校のアルバムを見る。
そこでクラスである有名人を見た。
そいつは変な奴だった。
今の夢の無いご時世、夢を追い掛けて高校を卒業した後、漫画の専門学校に行った奴だ。
やたら絵が上手い奴で彼は今も漫画家を目指しているのだろうか?
それとももう既になっているのだろうか?
奇妙な事にソイツは携帯電話を所持していない奴で同窓会にも顔を出さないと来ている。
そのため奴の今は知る由がない。
ともかくソイツの事を思い出して、ふと昔の事を思い出した。
それは図書室で見た一冊のラノベの事だ。
ラノベ。
ライトノベルの略称。
挿絵が付いただけで小説と言うには幼稚な文章の塊。
自分でも書けるんじゃないかと思った程だ。
彼もラノベは好きで国語の読書感想文をラノベで提出する様な奴だった。
ラノベ何か読んで人生の何の役に立つのだろう。
そう思いつつパラパラとラノベを見た記憶がある。
正直こんな物を見るぐらいなら高尚な小説でも読んだ方が人生の役に立つと思った。
だと言うのに何で自分は偶々立ち寄った図書館でラノベを見ているのだろうか。
と言うか最近の図書館はラノベも取り扱っている事に驚愕した。
まぁそんな事よりも改めてラノベを見てみる。
やはり文章は幼稚だが、物語は分かり易い。
続きが気になり、気が付けばドンドンとラノベを読んでいた。
そしてふと思った。
これなら自分でも書けるんじゃ無いかと。
今にして思えば馬鹿な事をと思った物だ。
先ずハウツー本を購入する所から始まり、そしてタイピングで苦労した。
次にどんな作品を書くかで悩んだ。
またハウツー本によるとプロットが重要らしいのだがそこでつまづいた。
取り合えずファンタジー物を書いた。
そうして色々とあって
主人公が異世界に召喚されるファンタジー物を書いた。
そして魔王を倒すとか言う物語を変化球を織り交ぜた結末の奴だ。
ストーリーもキャラクターも決まって今度は文章でヒィヒィ言う事になった。
後から知る事になったが大体普通のラノベは一冊当たり十万文字。
メモ帳で直すと一八〇~二〇〇キロバイトだ。
それを書き上げて完成すると言うのがどれだけ大変なのか思い知った。
そうして原稿を書き上げ、投稿に漕ぎ着けるのだが……今度は書式や投稿の仕方でつまづく事になる。
パソコンに詳しくない自分は●太郎を購入して書式を整えた。
投稿もちゃんとハウツー本やサイト規定通り見てやった。
そして結果はゼミ漫画の様に大賞受賞ではなく、二次選考で落選した。
自分の書いた作品が世の中に出回っている幼稚な文章に負ける。
その事実に打ちのめされた。
そんな時だった。
奴と再会したのは。
何時も通っている図書館に奴はいた。
名前は久保田 亮介。
驚いた事に漫画家から自分と同じラノベ作家志望に転向したらしい。
しかもまたまた驚いた事に心療内科通いで療養中との事であり、治療がてらラノベを書いているそうだ。
本当に驚いた。
「へえ~君も書いてるんだ……」
「あ、ああ……」
図書館の椅子に座り会い語り合う二人。
「どうしてラノベ作家に?」
「現実の壁にぶち当たってね。うんでラノベ作家に転向したわけ。それにラノベなら自分の思うとおりにキャラクターを動かせると思ったから」
「キャラクターを動かす?」
「そう。不遇なキャラクターとかどうしても出るでしょ? そう言うのをなるべく減らしたいな~とか思ってラノベ作家に転向したんだ」
最初は何を言ってるのか分からなかった。
だがそれはライトノベル書き続けている内に何となく分かる事になる。
彼は自分の産み出したキャラクターを愛しているのだと。
それが不遇なキャラクターを減らしたいと言う言葉の真意なのだと思った。
ライトノベルは自分が考えている以上に奥深い。
どう言う物が売れるかは正直分からない。
亮介に教えられたが自分が読んだ幼稚なラノベは劇場版やアニメ作品、ゲーム化までしている大ヒット作品だった。
それを幼稚だと批判した事を伝えたが……曰く、ラノベは小説ではない別物らしいからその評価も強ち間違いではないと言う。
正直自分の浅はかさに打ちのめされた気分だった。
そうして次に書いたラノベは今風だと思った異能力者達の物語。
だけどこれも二次選考で落選になった。
何が行けないのだろうと思い、亮介に相談してみた。
「WEBに載せてみたら? もしくは他社に見せるとか?」
と言う答えが帰って来た。
他社に見せるのはどうも気が引けたのでWEBに載せてみた。
すると待ち受けていたのは想像だにしなかった展開だ。
いや、打ちのめされたと言って良いだろう。
PVがあまり伸びず、しかも感想すら来なかったのだ。
自分が幼稚だと批判したライトノベルどころか素人の作品にすら及ばない。
この事に自分は愕然とした……
暫くラノベから遠退いた。
就職も決まらず、ダラダラとフリーターを続ける日々。
だが何時しか自分はまたラノベを書いていた。
もう二度と書かないと誓ったのに。
そうして出来上がった三作品目。
今度は昔好きだったロボット物だった。
亮介のアドバイスで他のロボット物には無い要素などを詰め込んだ結果、第三次選考を突破。
しかしそこで落選してしまった……
そして今に至ると言う訳だ。
はぁ……会社を退職してからかれこれ二年近く経つ。
自分にラノベ作家など夢のまた夢なのだろうか。
正直不安になって――そこで気が付いた。
何時の間にか自分の人生の目標がラノベ作家になっている事に。
何故だ?
俺って就職するんじゃ無かったのか?
俺は戸惑いを覚えた。
だけど不思議と全否定するつもり失せていた。
高校時代の自分が今の自分を見たらきっと正気を疑うだろう。
安定した人生こそが全てだと思っていた自分。
だけど今では「こう言う生き方もあるんだ」と思った。
そしてふと、ラノベに対する見方も変わった。
確かに文章も幼稚で高尚な小説に比べれば格って奴は違うかも知れない。
子供の落書きと芸術家の作品ぐらいの差があると言う人もいるだろう。
だけどラノベの一つ一つ、人気のラノベだろうと、たった一冊で完結しているラノベも同じだ。
その作者の頑張りが、編集者や物語を彩るイラストレーターなどの複数の人間の想いが一つになって強く込められている。
打ち切りになった漫画だって同じだ。彼達だって本当はもっと連載を続けてアニメ化とかを夢見て、何よりもヒットして欲しいとか言う願いを込めて描いているのだろう。
面白くないと分かって作品を創る奴はいない。
だが、もしかすると面白くないと分かって作品を創ってる作家もいるかも知れない。
だけどそれはただ辛いだけだ。
それでも続けてヒットを飛ばすのが本当のプロと言う奴なのだろうか?
例えそうだとしたらアマチュア作家の方がプロよりも作家として幸せなのではなかろうか?
そう思えてならなかった。
「ラノベの書き方に結局のところ正解なんて存在しないからね。文章力とかじゃ無くてただ面白いか、面白くないか……それだけなんじゃないかな?」
「そうか……」
やはり久保田 亮介は創作の先輩だと思った。
ラノベに関しての見解は単純で深い。
「それで最新作はどんなジャンルにするの?」
「ああ、それ何だけど今度は……」
そうしてまた俺は新たな最新作の制作に取り組む。
自分が面白いと思った作品を創るために。
【END】
ご意見、ご感想お待ちしております。




