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077 「真っ逆さま」

一話1000字前後の短編連作です。


毎週火曜日更新中!

「どーだクソ野郎? 足跡はどっちへ向かってる?」

「……ここで途切れてますね。というかなんで真っ直ぐ行っちゃったんだいぬねこちゃん……」


 師匠が光の球で明るく道先を照らしてくれているから分かるが、いぬねこの足跡が続く先は断崖絶壁となっていた。

 人語を解するとはいえ、それ以外は動物的ないぬねこ。崖から足を踏み外すようなミスは犯さないと思うのだが。普段は「動物をなめるな」とよく言うくせに。


「どうします? これ以上は進めませんよ」


 すでに明かりが無ければ暗黒に包まれるほど、周囲は暗いを通り越して〝黒い〟。師匠の明かりも半径数メートルを照らすだけで、その先はぽっかりと無くなっている。


「進めない? アホかテメーは。このアタシに否定的な概念は通用しねー。やると言ったらやる。出来ると言ったら出来るもんだ」

「いやでもそれって……」


 ハッキリとそうとは言っていないが、断崖絶壁の先へ進めると師匠は言っている。あるいは「進め」と命令してる……?


「オラ」

「あ?」


 どかっ、と。

 しゃがみこんで下を覗き込んでいたら、尻を蹴られた。蹴落とされた。


「えええええぇぇぇぇぇぇ!?!?!?」


 急斜面を滑り落ちるお手伝いさん。頭から下へ落とされたはずが、無意識のうちに体を捻るようにして体勢を立て直し、駆け抜ける。


「なんだアイツ、やりゃできんじゃねーか」


 師匠は見下しながら、追いかけるように自らも崖の下へ身を躍らせた。優雅に滑り降りる姿は、まるでスキーでもしているようだが、一歩間違えれば死に至る。


「んんぅっ!!」


 お手伝いさんは減速するため、体を反転して崖に指を突き立てる。

 指先がボロボロになり、生爪が全て無くなるくらいの覚悟を持って手を着いたのにも関わらず、上へ流れていく壁を掴む感覚があるだけで痛みがない。


「とととっ!? あ、足場か……」


 減速しきる前に足裏が地面を踏みしめたと思ったが、不自然に飛び出した岩場に着地したらしい。

 遅れて師匠も滑り降りてきて、優雅に着地する。


「なるほどな。どうやらこの足場に落ちてから、移動したらしーな」


 崖伝いにいくつか、似たような足場が飛び出しているのを師匠が光の球で照らして発見する。

 だがお手伝いさんは自らの手を眺めて開いたり閉じたりするだけで、話を聞いていなかった。


「大先生……この手袋、いったい何で出来てるんですか……!? 汚れてすらいない! どんだけ頑丈なんですか!」


 滑り落ちた際、崖に手を着いて滑り落ちた。お手伝いさんはこの手袋がボロボロになっていると思っていたのに、一つのほつれもない。


「素材を聞いたら目ん玉こぼれるからやめときな。極細繊維を編み込んであるんだから、頑丈なのは当たり前だ」


 繊維を操るために繊維を掴む必要だってある。繊維で繊維が切れてしまっては意味がないのだ。


「それよりも、恐らくクソダヌキはこの先だ。とっとと行くぞ」


 別の足場へ飛び移った師匠。


 ——その足場が、着地した瞬間崩壊した。

次回第78話「為せば成る」


お楽しみに!

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