063 「勝負あり」
1話1000字前後の短編連作です。3分もあれば読めるかと。
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お手伝いさんの宣言を聞き、眉根を寄せる師匠。
自分の耳を疑ったのか「なんだって?」と聞き返す。
「僕の勝ちだと言ったんですよ。いくらあなたでもこれなら確実に〝一撃を入れる〟ことができます」
「ほぉ? このアタシ相手にそこまで大口叩く奴は初めだぜ」
お手伝いさんの自信たっぷりな宣言を聞いて、師匠はウキウキした表情を見せる。今までにどれほどの相手と似たような事をしてきたのか知らないが、同じ轍は踏むまい。
「で、何をどーすんだ? 是非見せてくれよ」
余裕のある師匠はお手伝いさんの手の内を見てみようと挑発する。
「言われなくても見せてあげます」
これはチャンスだとお手伝いさんは思う。油断している今なら簡単に作戦を実行できる。
彼の周りには、いままで師匠が放り投げてきた不発の爆弾の数々。そしてその手には毛糸のような糸が繋がった少し大きめの針が握られている。
本来ならば逃げ回りながら爆弾を拾うつもりだったが、手の内を見たがっている師匠は大人しく拾わせてくれた。糸と針は逃げ回りながら偶然見つけたものをポケットに忍ばせておいた物だ。
「おいおいまさか……」
「多分、そのまさかです」
師匠の顔色が変わる。お手伝いさんがこれから何をしようとしているのか想像が付いたのかもしれない。
お手伝いさんは導火線が入っていた口に針をぶっ刺し、奥まで押し込む。
そしてベルトに挿しておいた〝チャッカマン〟とやらの引き金を引いて、火を垂れた糸の先端へ。
本来の導火線よりも勢い良く燃え始め、みるみるうちに短くなっていく太めの毛糸。
「この糸はよく燃えるんですよ。付属の導火線では不発でしたが、これならどうでしょう?」
今までの戦いの中で、一歩も動いていない師匠。動かないターゲットにタイミングを合わせることなど簡単だ。
糸が爆弾の中に吸い込まれる直前に師匠に向かって放り投げる。
スプーンで弾こうとしても、そのタイミングで爆発する。
「考えたな……! だが!」
そうぼやきながら、初めて踏み出した最初の一歩はお手伝いさんへ一直線だった。
つまり爆弾の方向へ突っ込んできたのだ。
「えっ⁈」
恐らく避けるだろうと予想していたお手伝いさんはギョッとした。どこまで肝の座った人なのだろうと。
爆弾に突っ込むなんて正気の沙汰とは思えない。
そしてパコン! と。
放った爆弾をスプーンで打ち返し、今一度お手伝いさんの元へ戻ってくる。それも今度こそ爆発するであろう爆弾が。
だがーー、
師匠が打ち返した爆弾はお手伝いさんを大きく飛び越え、壁際で爆発した。
もし師匠が勢い良く打ち返してなかったら、お手伝いさんに直撃していただろう。
「勝負あったな」
お手伝いさんの眼前に突きつけられるスプーン。
背後からの爆風を感じながら、師匠の勝利宣言を聞いていた。
「くそ〜……これ以上は手が無いです……」
両手を挙げて降参のポーズ。
勝負の結果は、お手伝いさんの負けで終わった。
次回第64話「よくやったほうじゃねーの?」
お楽しみに!




