006 「仕事とピクニック」
一話一話が2000字程度の短編連作となっております。一話読むのに三分もあれば充分くらいの文量ですので、何かの休憩などにチラッと読んで落ち着いて頂ければそれだけで書いた意義があるというものです。
週に一話投稿出来ればいいなぁと思ってます。
「先生はいつもそうやって面倒事を僕に押し付けますよね」
「お手伝い君はいつもそうやって愚痴を言いつつも受け入れてくれるよねー?」
危ない命を、文字通り拾ってもらった身としては偉そうな事は言えないから。当然、反抗なんて事も出来ない。
そもそもする理由が無いし、するつもりも無い。
「さてさて、今日はどんな依頼が届いてるかな?」
錬金術士は調子を良くしたのか、上機嫌な様子でよくありがちな真っ赤なポストの中身を確認する。
「あれれ?」
しかし、少なくとも依頼の書かれた紙が一通くらいは入っているはずであるポストは空っぽだった。この時間ならばすでに郵便の人が届け終えているはずであるが、また今日に限って珍しかった。
「どうしたんですか?」
いつまで経っても空っぽのポストの中身を凝視し続ける錬金術士は、突然こんな事を言った。
「今日はお仕事おやすみって事だねー!」
「いやいや、まだ終わってない仕事があるじゃないですか! 追加の依頼がないんだったら残ってる仕事を片付けるチャンスですよね⁈」
「ぶーぶー」
「ぶーたれても仕事は減りませんよ」
「えー……せっかくみんなでピクニックとか行けると思ったのにな……」
ブツブツと誰にも聞こえないような大きさで言った。
しかしお手伝いさんはしっかりと聞いていた。
「……じゃあ、雑用とかは全部僕が引き受けますから、先生は仕事に集中してください」
そうじゃないと、行きたい所にも行けない。仕事が残っていたら、心の底から思い切り遊ぶ事なんて出来ないだろう。
あくまで仕事が優先だ。
「お手伝い君はどうしてそこまで私に仕事をさせようとするの?」
本当にどうしてか分からない様子で聞いてきた。
「どうしてって。錬金術士は世界規模でみても人口が少ないですからね。一人がサボるだけで大きく遅れを取るんですよ?」
「それくらいは知ってるもん。私自身が錬金術士なんだから」
「だったら頑張ってくださいよ。それに……」
「それに?」
「仕事が終わらないと、せっかくのピクニックも楽しめませんよ」
錬金術士が何となく言ったピクニックという単語を聞いて、お手伝いさんは頭の中ですぐに企画していた。半分は仕事をしてもらうための飴としてだが、もう半分は単純に楽しそうだと思ったからだ。
「ピクニックしていいの⁈」
「仕事が一段落したらですよ」
「ぶーぶー」
「ぶーたれてる内はピクニックに行けませんよ」
言ってる事はさっきと違うが、内容としてはあまり変わらない。
「じゃあ頑張るー!」
「そうしてください」
結果として、錬金術士にはいい飴となったようだ。お手伝いさんとしてもピクニックは楽しみだったし、たまにはこういったご褒美みたいなものがあっても罰は当たらないだろう。
後の事は、錬金術士の頑張り次第であった。