048 「師匠の家」
一話1000字程度の短編連作です。3分もあれば読めるかと。
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「つ、着いた……?」
「うむ、よく頑張ったな。ここが彼女の師匠の家だ」
お手伝いさんの望みは届いていた。
目立たないように周りの色と同じ色で塗装されていたため、いぬねこに案内されていなかったら見落としていたかも知れない。
ついに錬金術士の師匠と初のお目見えが迫っている。
ここまでの道のりはなんだかんだ大変だったため考える時間が無かったが、なんて挨拶をしよう。
思い返してみれば、錬金術士といぬねこからは師匠の情報はほとんど得られなかった。
こうなったら行き当たりばったりのぶっつけ本番で行くしかないだろうと、覚悟を決める。今まで真面目に生きてきたし、失礼な事をウッカリ言ってしまうようなミスはきっと無いはずだ。
大丈夫、何とかなる。
そう自分に言い聞かせながら、目立たない三角屋根の家の玄関をノックする。
「……………………」
どうしてか、緊張が全身を駆け巡る。大蛇に睨まれた時以上に身動きが取れなくなってきた。
しかし師匠はなかなか出てこない。
もしかして留守なのだろうか。
「あまり出歩くような事は無いはずだが……一体どうしたのだろうか?」
いぬねこもこの状況は少しおかしいと言っている。同じ錬金術士ならば、確かに自分の仕事場から動く事はあまり無いはずだ。たまたま出掛けているタイミングに訪れてしまったのか、何か手が離せないような用事の真っ最中とか。
事情はどうあれ早く家に上げてもらって、錬金術士を横にしてあげたい。そして自分も休みたい。
「今は緊急事態と言う事で許してもらえるだろう。中に入ってしまおう」
「え……? いいんでしょうか?」
「大丈夫、相手は人間なんだ。ちゃんと話せば分かってくれるだろう」
「でも、どうやって入れば……?」
「玄関から普通に入ればいい。どうせ鍵なんか掛かっちゃいないさ」
ドアノブに手をかけて捻ると、いぬねこの言った通り何の抵抗もなく開いた。なんて不用心なんだろうと思ったが、ここは山頂な訳だし、寄り付く人間なんかいないんだろう。
それに、開いていたお陰でこうやって中に入って冷たい風を凌ぐ事ができたのだ。ここは師匠のその不用心さに感謝しておこう。
家の中はそんなに広くはなかった。一人で暮らすには充分広い方だろうが、物が溢れ返っていて窮屈さを感じさせる。本を中心とした様々な物が床全体に散乱していて、足の踏み場を見つける方が難しいほどだった。
壁際に三人掛けの大きなソファーがあるのを発見すると、上に乗っていた本やホコリを払い、錬金術士をそこに寝かせた。
ようやく軽くなった体を少しほぐすと、ついにお手伝いさんにも限界がやってきた。安全な場所に行くまでムチを振るい続けてきたが、それも全うした。
お手伝いさんは力が抜けたように床に座り込んでソファーに背を預けると、あっという間に眠りの世界へと旅立ってしまった。
次回第49話「師匠登場」
お楽しみに!




