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040 「一方その頃・2」

一話一話が1000字程度の短編連作です。一話読むのに3分かからないかと。


毎週火曜日更新中!

 錬金術士はお手伝いさんのペースと比べると、ゆっくりゆっくりと、しかし確実に登山していた。

 というか、ゆっくりじゃないと無理だった。


「つかれたー……」


 充分に整備されていない山道を歩くには錬金術士の体力は明らかに足りないのだ。女の子だし、普段から家に籠っているので体力が無いのは仕方の無い事だと割り切ってしまえばいいが、錬金術士という職業柄、家に籠り続けている訳にもいかず今回のように出掛ける必要もある訳で。

 結果、お手伝いさんから大きく遅れを取ってしまった。


「だって女の子だもん?」


 なんて独り言をこぼしたくもなってくる。

 きゅるるー……。

 一緒になって錬金術士のお腹も、可愛い独り言をこぼしていた。


「はぁ……お腹空いたー」


 思えば、お手伝いさんにお弁当を食べてもらう事ばかりを考えていて、自分は全然食べていなかった事を思い出す。

 お手伝いさんが攫われていなければ、いや、せめてリュックからカゴを持ち出したりしていなければ今この場で食べる事も出来たのに。

 そんな事を考えながらゆっくりと登山を続ける。

 お手伝いさんが決死の覚悟で一つ目のカゴを平らげ、二つ目のカゴを持ち出した事によって空腹にはなったが気絶しないで済んだ事を錬金術士は知らない。お手伝いさんの影の努力があったお陰で今もゆっくりではあるが歩き続ける事が出来ているのだ。


「二人ともだいじょうぶかなー」


 いぬねこもいるしお手伝いさんだって馬鹿じゃないからきっと大丈夫。

 そんな風に考えるが、やっぱり心配事が頭から離れていく事は無かった。そしてそんな事を考えていると集中力も散漫になる。


「きゃ⁈」


 足下を見る事を疎かにしてしまった錬金術士は小さな段差に躓いて転んでしまう。

 柔らかい草や土がある草原と違ってここは山道。固い地面にゴツゴツした石や岩がある場所で転んだりしたら大変な事になる。斜面が急だったら転げ落ちる事だってあるだろう。


「いったーい!」


 錬金術士は膝小僧を激しく打ち付けてしまったようで、かなりの血が流れ出していた。おまけに体を支えようとして出した手も擦り剥けてボロボロになっている。

 グルルルルゥゥ……。


「あら? またお腹が鳴った?」


 今の錬金術士には怪我をどうにかする手段は無いので放置する事を決めると、そんな音が聞こえてきた。

 だがこれは自分のお腹の音じゃない。いくらお腹が空いているとはいえこんな、はしたない音を出す訳が無い。出る訳が無い。それによくよく思い返してみれば音が聞こえてきた場所もお腹からじゃなかった。

 背後から聞こえてきたような気が。


「うそでしょー……」


 恐る恐る、振り返ってみると、そこには牙を剥き出して低く唸るオオカミが数匹も居た。大きな岩山がちょうど死角になっていて気付かなかったようだ。いつもの錬金術士なら意外に優れている聴覚で気付く事が出来たかも知れないが、他に考える事がありすぎてそこまで気が回らなかった。

 ここは冷静に、なるべく背を向けぬよう刺激しないように、お得意のゆっくりさで転んだ時に投げ捨ててしまった槍を拾いにいく。


(さてどうしましょー)


 なんとか拾えた槍を構えつつ、暢気にそんな事を考える。

 その時、一瞬地面が大きく揺れた。地震とは違う揺れ。

 それはまるで、どこかで大爆発でも起きたかのような揺れだった。

次回第41話「作戦会議」


お楽しみに!

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