039 「迎えに行かなきゃ」
一話一話が1000字程度の短編連作です。一話3分もあれば読めるかと。
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そろそろお手伝いさんの体力も限界に近づいていた。
意識も朦朧とする瞬間がたまにあるし、手足が言う事を聞かずに躓いて転びそうになったりもした。
当然歩きっぱなしは酷な話なのでこまめに休憩は入れていた。いぬねこもそうした方がいいと言ってくれている。
しかし悠長に休んでいる暇は無いと言わんがごとく、息が整うまでの短い時間の休憩で、すぐさまお手伝いさんは歩き始めるのだ。
「もっとしっかりと休憩する事をお勧めする。山道に無理は禁物だと教わらなかったかい?」
「僕にヤマミチと言う知り合いは居ません」
「そういう意味で言ったんじゃない。山道を歩く際は無理せず慎重に行動するべきと言いたいのだよ」
「ここは山道じゃなくて、洞窟です」
「いつから君はそんな屁理屈を言うようになったんだい? そんな子に育てた覚えは無いのだけれど」
「いぬねこちゃんに、育てられた覚えは、ありませんね」
言いながらも、すでに息が切れてきている。
足取りも、かなり重い。足取りだけじゃなく、手、頭、服、靴、全てが重く感じる。
「減らず口が叩けるくらいには元気なようだけれど、一泊くらいは野宿を覚悟しておいた方がいいかも知れないね」
お手伝いさんのリュックの中には寝袋も完備されている。ランプの燃料はギリギリだが一泊するくらいなら何とかなるだろう。
ここまでの道中に魔物と遭遇するような事は無かった。この先も安全とは言い切れないが、魔物にとっての餌が無いこの洞窟では居るだけ無駄だろうし、恐らく寝ていても襲われるような事は無いはず。
「寝ている暇はありません!」
と、お手伝いさんは言った。
「君は何を焦っているんだい? このまま無理を続けては本当に死んでしまってもおかしくないんだよ? 幸いな事にここは安全だろうし、体力を回復させて万全を期した方がいい」
「……僕は、そうかも知れません……」
「ん?」
いぬねこは、一瞬お手伝いさんが言っている事が分からなかった。
「でも、先生がいる〝外〟はどうなんですか? ここより安全と言えるんですか? また魔物に襲われるかも知れないじゃないですか!」
お手伝いさんが急いでいる理由は、つまりそういう事だった。
あの怪鳥のように、襲ってくる魔物が他にもいるかも知れない。もしそうなったら、あの華奢な体で自分自身を守れるとは思えなかったのだ。
「それに先生の事です、どこかで体力が尽きてバタンキューってなってたらそれこそ危険じゃないですか」
足取りは重く、狭い空間に長居した所為で気分も重い。
それでも、進まなくちゃ進まない。重くても足を前に出さないと、進めない。
「だから、僕が迎えに行かなきゃダメなんです!」
その時、お手伝いさんの目に一筋の光が差し込んできた。
次回第40話「一方その頃・2」
お楽しみに!




