036 「頭痛」
一話一話が1000字程度の短編連作です。3分もあれば読めるかと。
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「なんか……いっこうに気温が上がる気配が無いんですけど……」
お手伝いさんが吐き出す息は真っ白。
いぬねこは変わらず肩掛けに包まってお手伝いさんに抱えられているので暖かそうだが、ちょこんと出ている顔や耳は寒そうだ。
「それはそうだろう。少しずつではあるが上り気味になっているようだし、標高が上がれば気温が下がるのは自然の摂理じゃないのかい?」
「僕はこんな洞窟も山も、話に聞いただけで実際に訪れるのは初めてなんですよ。だからあまり詳しくないんです」
言いながら、しっかりと地面を踏みしめて進んでいく。
幸運な事に、怪鳥の巣からここまでずっと一直線。変に迷う事は無くて助かっているのだが、どこの出口に繋がっているのかは二人とも分からない。
まさに出たとこ勝負というやつだ。
「家は雲よりもさらに上の位置にある。このまま登り続けていれば、きっと近い場所には出るだろう」
「雲の上って……」
そんなに高い位置にあるのに、錬金術士の荷物はたったのあれだけだったのか。
リュックからカゴを取り出す時に中身を少し確認したが、暗黒物質が入ったカゴと手帳のような物しか入っていなかった。
目的や場所を前もってしっかり教えてくれていれば、もっと入念に準備をしたのに。錬金術士のリュックにだって必要そうな物を詰めさせたのに。普通に食べられる物とか。
雲を突き抜けるような標高の山を登るための装備とは思えない。登るならもっと入念に準備をするべきだとどこかで聞いた気がする。
「イテテ……」
「どうしたんだい?」
「いえ、ちょっと頭痛が……」
どこで聞いたのか思い出そうとすると頭痛が脳裏を駆け巡り、記憶をかき乱していく。
おかしい。今まで頭痛なんかに悩まされる事なんて無かったのに。
「もしかしたら高山病と言う奴かもしれないね。標高が高くなると空気が薄くなっていって、体の機能に必要な栄養が取り込み辛くなって起こるらしい」
本当にいぬねこは物知りだ。
いったいそんな知識はどこで手に入れているのだろうか。
大半は家の書斎から得ていると聞いていたが、お手伝いさんだって少なからず家の本は読んでいる。いまだに読み切れないほどの大量の本があるが、そのなかに高山病とかいう病気の事が書いてある本なんか無かったような気がする。
お手伝いさんの知らない本がまだ存在しているのか、それとも他の方法で知識を得ているのか。
気にはなるが、今はそれどころじゃない。
とにかく歩いて、出口から外へ。
「イテテテ……」
やっぱりどこで聞いたのか思い出そうとすると頭が痛くなるお手伝いさんだった。
次回第37話「一難去ってまた一難?」
の前に1月1日にあけおめ話を特別編としてアップする予定なので、よろしかったらそちらもドゾ!
お楽しみに!




