034 「2〜3点」
一話が1000字程度の短編連作です。3分もあれば読めるかと。
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お手伝いさんの準備は万全だった。備えあれば憂いなし。まさに用意周到とでも言おうか。
リュックに入っていたのは、必要になりそうな物がほとんど。
ナイフにランプ、父さんがくれた熱い思いに母さんがくれたあの眼差し。
後半は冗談としても、武器とは別のナイフに明かりとしてのランプはもちろん、予備燃料も入っていれば料理道具まで一式入っていたりと、このリュックが一つあるだけでしばらくは生きていけそうなほどに、てんこ盛り満載な内容となっていた。
大きさに限界があるリュックにこれだけ沢山の物を詰め込むには、相当のパズル的要素が含まれているだろう。
適当に詰めただけじゃ絶対に入り切らない。
きっと、この3ヶ月で培った技術が生きてきたのだ。
さんざん家の掃除もしてきたし、整理整頓なんてお手の物。今や錬金術士よりもいぬねこよりも、物の置き場所などは詳しいほどに。
「寒いですね……」
季節的には暖かい方なのだが、洞窟の中は不思議と冷えていた。年がら年中お日様の日が当たらないうえに、風が流れているものだから体感温度は相当に低い。
「確かにこの寒さは、なかなか堪えるね。さすがの小生も堪え難い」
と、言っている割には平気そうな口調だった。
いぬねこはお手伝いさんに抱かれていて、おまけに肩掛けのような布(もちろんお手伝いさんのリュックから出てきたもの)で体を覆っているためそこまで寒そうじゃない。しかも自前の毛皮まであるんだからむしろ暑いくらいじゃないだろうか。
この状況で一番辛いのは当然お手伝いさんである。
片手にいぬねこを抱き、片手にランプを持って先を照らし、その脚で前へと進んでいく。
いぬねこを抱いているお腹辺りは平気だが、その他の部分が冷えてきた。
「いぬねこちゃん……せめて自分で歩いてくれませんか……?」
両手が塞がってしまっているため、もしもの時に対処出来ないし、バランスも取り辛い。足場はそこまで悪い訳ではないのだが、油断すると湿っていたり場合によっては凍っていたりで足下をすくわれかねない。
いぬねこを下ろす事でお腹辺りも冷えてしまうが、転んだりして二人とも怪我をしてしまうよりはマシだろう。もし怪我をしてしまってもお手伝いさんの万能リュックには治療道具も完備されている訳だが、使わないに超した事はないだろう。
「それは無理な相談だよ君。小生の肉球がガッチガチになったら死んでしまうではないか」
「肉球は心臓なんですか⁈」
「そうとも言う。だからあまりふにふにしないで欲しいのだ。血行が良くなってしまう」
「そりゃ結構!」
「2〜3点」
「低いし曖昧だ⁈」
体感温度がさらに下がってしまった二人でした。
次回第35話「一方その頃」
お楽しみに!




