003 「命の小川」
一話一話が2000字程度の短編連作となっております。一話読むのに三分もあれば充分くらいの文量ですので、何かの休憩などにチラッと読んで落ち着いて頂ければそれだけで書いた意義があるというものです。
週に一話投稿出来ればいいなぁと思ってます。
「ちなみにだが、君の考えはどうなんだい?」
「え?」
いぬねこがお手伝いさんに問う。
「あ! 私も気になります! お手伝い君にとって命って何だと思いますかー?」
「ええ⁈」
まさか、自分の意見を聞かれるとは思っていなかったお手伝いさんは錬金術士の質問に対する答えを用意していなかった。
どちらかの話に同意すればいいのか、それとも何か別の答えを考えた方がいいのか……。
逡巡したが、別の答えを考える事にした。同じ答えではつまらないだろう。
「小川……とかですかね」
「小川? 小川っていうと、あの上流から下流へ流れていく水の事で合っているかな?」
「その小川で合ってます」
いぬねこはわざわざ確認を取る。
他にどんな小川があるのか疑問に感じたが、ここは深く考えない。結構回りくどい思考をしているのがいぬねこだ。その回りくどさに付き合う必要はないだろう。
「どうして命は小川だと思うのー?」
錬金術士はさっぱり意味不明なようで、説明を求めてきた。言われなくても説明はするつもりだ。じゃないと誰にも伝わらない。
「命の誕生が上流。というか源泉で、海という終わりに向かって流れていって、また源泉へと循環する。この循環が生まれ変わりみたいかな、と」
お手伝いさんは若干の照れくささのような感情を隠しながら説明した。
「それにほら、人の体のほとんどは水で出来てるんだよって先生が教えてくれましたし、ピッタリかなと思って」
お手伝いさんの言う先生とは、錬金術士の事だ。
「なるほど。曲がりくねっていたり枝分かれしているところも、まるで人生のように感じるね。ある意味、風船よりも具体的なんじゃないのかい?」
「そんな事ないですぅー」
イタズラっぽく言ういぬねこに、錬金術士はすねたように答えた。
「でもそれぞれで考えが違うって面白いね。いろんな命があるんだねー」
最初の質問。命って何だと思いますか?
答えは、ハッキリ言って分からない。
風船だと答え、ともし火だと答え、小川だと答える。きっと他にも答えがある。
こんな質問をした錬金術士の意図は分からない。単純に興味本位だったのかも知れない。
「それじゃ、今日もお仕事がんばろう!」
錬金術士は、拳を振り上げ笑顔で仕事に取りかかった。
イラスト:兎星アノさん。






