018 「ピクニック」
一話1000字程度の短編連作です。一話読むのに三分掛からないかと。お勉強の休憩にでもチラッと読んで頂ければ。
毎週火曜日不定時に更新中。
いぬねこはお手伝いさんから錬金術士の頭の上に移動して相変わらず昼寝をしていた。そちらの方が寝心地が良いのだろう。
「この辺でいいかなー」
しばらく歩いていると、錬金術士が急にそんな事を言った。
「何の事ですか?」
「歩き疲れたから休憩しようって事ー」
「はや⁈」
歩き始めてから10分程度。お手伝いさんが目的について聞く事を諦めた直後の事だった。
「まだ全然歩いてないですよ⁈ 家が余裕で見える距離ですよ⁈」
ビシッビシッ! と見慣れた家を勢いよく指差すお手伝いさん。遮る木立すらないだだっ広い草原なので目視出来る。
なんならいったん戻って何か食べ物を持ってくるくらいは簡単に出来てしまう距離だろう。
「先生は家に籠もりっきりだから体力が無いんです! そんな事ではいざという時に困りますよ! 今回みたいに遠出をするのはもちろん、魔物に襲われた時に対処が出来なかったら怪我をするどころか死んでしまうかも――」
「よいしょっとー」
錬金術士は草っ原に大きめのシートを敷いていた。うさぎがいたり虹が架かっていたりと、とても子供っぽいファンシーな絵が描かれたシートだった。
「――って聞いてますか⁈」
「いや、聞いてないよー」
「そんな堂々と⁈」
返事をしてきたのなら聞こえてはいたようだが、お手伝いさんが必死になって説教しても右から左だった。
「お手伝い君、そんな所に立ってないで座ったら?」
いつの間にか錬金術士は敷いたシーツの上にちょこんと座っていた。ポンポン、と空いているスペースを叩いて〝ここに座れ〟と伝えている。
いぬねこも錬金術士の頭の上から空いているスペースに移動していた。
「立ってたらピクニッ……休憩にならないでしょー?」
言いかけた言葉を飲み込んではぐらかした。
その程度ではぐらかされるほどお手伝いさんは鈍くないし、そもそもほとんど言ってしまっている。誤摩化しようがないだろう。
「さてはこれが目的でしたね?」
「なんの事かなー?」
フーフーと鳴らない口笛を吹いてそっぽを向いた。
「そうならそうと言ってくれれば良かったんですよ。分かってたらこんな装備じゃなくてちゃんとご飯とか用意したのに……」
言いつつも靴を脱いでちゃんと揃えてから指示された場所、錬金術士の隣に腰を下ろした。
「それじゃ駄目なの!」
「はい?」
食事の用意もお手伝いさんの仕事の一つである。最初はヘタッピだったが才能があったのかみるみるうちに上達して、レストランのコックにも引けを取らないくらいの腕になっていた。
3ヶ月でそこまでの腕になるなんて、本当に料理の才能があったのだろう。
だからこそ、こういう時はお手伝いさんの出番なのに「それじゃ駄目」と言われた。
美味いもん作れ作れとうるさいくせに。
「いつもお世話になってるからお礼に私が作ってきたのですー!」
じゃじゃーん! と言わんばかりの顔で自分のリュックから網かごを2つ取り出した。ちょうどサンドイッチやら、おにぎりやらが入りそうなサイズだ。
けど、そんな網かごは家には無かったような気が。
「カゴから作ったんだよー! すごいでしょー?」
「ああ、どうりで」
一から、というかゼロから作ったみたいだ。だから家にはない物だったんだ。
錬金術士はカゴを編めるほど手先が器用ではない。いぬねこに編み方を教えてもらったとしても完成までは困難なはず。
となるとやはり錬金術か。
「むー……それだけ?」
錬金術士は何かを期待している子供みたいな表情だ。
「さすが先生ですね。おみそれしました」
「でしょう? フフン!」
意外にある胸を反り返らせて、誇らしげな表情に変わった。
こういう時だけは扱いやすくて分かりやすい人だ。
そんな人だから僕は……。
お手伝いさん苦労してますね。練金さんかわええなぁ……!
次回第19話「パンドラの箱」
お楽しみに!




