105 「やっぱり私って天才だね〜!」
一話1000字前後の短編連作です。
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練金釜の前に立つ錬金術士の手には、モフモフのついた巨大なスプーンが握られている。
釜の中身を一定のリズムでかき混ぜて、滞っていた仕事を片付ける。
「それにしても、こんなに違うなんてね〜……」
今までは普通の棒でかき混ぜていたが、専用の練金棒を作って使用した感想としては『段違い』だった。
効率も、完成度も、何もかも。
これならば、苦手であった武器の練金もまともなものが作れるに違いない。
「さすがはお師匠さんだね〜。いろいろあったけど、行ってよかったかも」
お手伝いさんのことは、ただただ残念だったとしか言いようがないが、起きてしまったことはしょうがないし、過ぎてしまったことは気にしていても仕方がない。
いち早く体を治してもらって、元気になってほしい。
「ゆっくり街に行けるのはいつになるかな〜」
中身をかき混ぜながら、思いを馳せる。
食材などの必需品を買い足しに何度か街へ行くことはあったが、アトリエでお手伝いさんを一人にしておいては何かあった時に対処できないため、必要最低限のものを買ったら真っ直ぐに帰宅を繰り返していた。
当分は、のんびりしていられるような暇はない。
「お気に入り探すの、お手伝い君にも手伝ってもらうんだから」
ゴムが切れてしまったお気に入りのパンツ。
そのおかげで命拾いしたので安いものだが、それはそれ、これはこれ。
責任はとってもらう。
「できた……っと。ん、バッチリ〜!」
練金釜から練金したものを取り出し、出来栄えに頷く。
それは依頼されていた、壊れたお皿の修復。雪のような純白に美しい赤と金の装飾が施された観賞用のものだ。
先祖代々伝わる大切な家宝を壊してしまったので早急に直せないか、ということだったが、これならば問題ない。
破片などはしっかり揃っていたので、直すだけなら造作もない。
「あ、そうか〜! その手があった〜!」
直った皿を見やって、大げさに手を打つ。
クオリティーも効率も圧倒的に上昇したオリジナルの練金棒がある。
これさえあれば。
「すごい薬を練金して、治してあげればいいんだよ〜! やっぱり私って天才だね〜!」
薬の練金も仕事としての経験はある。市販の物を増やす作業じみたものだったが、最低限の知識は吸収済み。
そこから独自の発想を軸に試行錯誤を繰り返せば、果てには病気も傷もたちどころに治す、その名に恥じぬ「万能薬」を作れるだろう。
善は急げと言わんばかりに、新たに手に入れた練金棒を最大限活用して滞っていた仕事を消化し、お手伝いさんを治すために必要な時間を作ろうと意気込むのだった。
次回第106話「どうぞっお手紙ですっ!」
お楽しみに!




