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無限英雄  作者: okami
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第8話『超人狩り』

 佐羽鬼統治さばき とうちの言うネクスターというのは。

 ネクスト能力。

 次の世代に進化する為の能力。

 1点抜きん出た能力は、適正を強めたもの。

 それをうまく束ねれば、人類は宇宙にも適応できる。

 蒼い雪は進化を促すための地球の意思。

 人は次の段階に進む準備にはいったのだ。

 そして統治は、自分の能力が全てのネクスターの中で一番優れていると豪語した。





 ネクスター狩り。統治に従わないネクスト能力者を狩る事が、統治の元に集められたネクスター達に与えられた使命だ。


「ひっひ・・・」


「従うと言ってさえくれれば、死ぬこともなかったというのに」


 スパークリングはそういうと、つかんだ男の頭に電流を流し込んだ。

 男は悲鳴も上げられずに目を見ひらいで倒れた。


「火葬お願いします、パイルマニア」


 スパークリングに言われて、パイルマニアは死んだ男の遺体に火を放った。

 体内に電気が残っていたのか、その体は弾けて消えた。

 スパークリングが殺した男は虫を操る能力を持ったネクスターだった。


「次に行きましょうか?」


「楽しそうだなお前は」


 パイルマニアはウンザリした表情でスパークリングを見た。


「何故お前は統治にしたがっている?」


 一度聞いておきたかったことだ。

 ガイオナースの中でもスパークリングは特に統治に信頼されている感じがするのだ。


「なんですかいきなり?」


「はっきり言うと俺はお前を相手にしたくないから統治に協力している」


 パイルマニアとスパークリングの能力は同質であり、属性が違う。

 お互いに倒せない相手ともいえる。


「正直ですね」


「どうせ初めから信用してないだろうが」


 そんな事はないとスパークリングは返したが、パイルマニアは信じない。


「そうですねぇ。一つはあなたと同じで、私も統治の相手はしたくないんですよ。あの能力はね」


 ふっと笑った。

 言うには、スパークリングの能力で太刀打ちできないわけではないが、勝てるとは思えないらしい。


「そしてもう一つはね・・・私は優柔不断でね」


「?」


「人に言われるままに行動する方が安心するんですよ」


 自嘲気味に言った。


「それならインフィニティについてもよかったんじゃないのか?」 


「そこは統治と戦いたくないというので解決ですかね」


 スパークリングはそう笑って、次の現場に向かうためにその場をたった。


「・・・統治の能力か」


 パイルマニアは呟くと、スパークリングの後についていった。





 いつもの学校の屋上で、腕に包帯にギプスを巻いた京介は呆としていた。

 腕の骨にひびが入ってたのでしばらくはヒーロー休業だ。

 スーツの改善にも時間がかかるらしい。


「よう! あれ、怪我?」


 円奈瞳が勢いよく顔を出した。


「ヒーローのアレで?」


「ああ、負けちゃった。ボッコボコに」


 京介は深くため息をついた。


「・・・ヒーローなんてやめちゃえばいいのに」


「一度やっちゃったもんは、そう簡単にはな」


 瞳は京介の横に座った。


「はいはい、愛しの天舞さんの為だもんね」


「まぁな」


 少しは否定するとかしろ。と瞳は脳内でつっこんだ。


「まあでもしばらくは休むしかないな」


 と、包帯を巻いている腕を見せていった。


「じゃあさ、デートしようよ」


「安静にしたいんですが」


「遊園地とは言わないから、映画くらい付き合って欲しいな」


 断る理由もないので京介はOKをした。




 

 京介は放課後まで時間を潰し、瞳と待ち合わせて校門を出た。


「映画なんて久し振りだな・・・3年は行ってないな」


「レンタルですましちゃう人?」


「いや、どうせ一年もすればテレビでやるじゃん」


 なんて会話をしつつ貼ってある映画のポスターに目をやり、何を見るかと迷う。


「円奈は何見たい?」


「なんでもいいよ」


「お前が誘ったんだろうに」


 瞳としては、京介と映画にくることが目的だったので、別に見るものは何でもいいのだ。


「じゃあこの、ミジンコカンフー~ミクロ拳法ニューヨークに行く!~にするか。CMガンガンやってるしな」


「それ絶対面白くないよね?」


「何でもいいって言ったじゃん」


「任意くんがみたいならいいけども。見たくないでしょ?ネタでしょ?」


 とりあえず謝った。

 無難なところでアクション映画を選んだ。が、やるまでに少し時間がある。

 2人は喫茶店で時間をつぶすことにした。





 早馬瞬速はカラオケボックスのバイトから帰って来ると、コンビニでオニギリ系の類のものを買って来ると秘密基地にやってきた。


『なんでここに来るんですか』


「俺んチ、クーラーついてなくてさぁ。はははは」

 早馬はオニギリのビニールをカサカサとならしつつ答えた。


『アルバイトなんてしなくても十分なお金は支給しますが』


「分かってないねぇ、貧乏生活の逆境こそロックなんじゃねぇか」


 ブレインはロックとかよく分からないと思った。


「インフィニティのスーツの修復は進んでるか?」


『修復自体は替えがありますが、改良を加える必要があるので』


 ブレインはモニターにインフィニティーのスーツのデータを出した。


「・・・よく分からんが今の時点ですでにオーバーテクノロジーなんだなぁ」


 早馬はパックの緑茶を飲んだ。


『あなたのスーツは本当に防御力のカケラもないですからね』


 ハイスピードのスーツは単なる見た目のために用意したものなのであるが、ハイスピードが加速する際には本体にバリアのようなものが展開するので、こんなものでも問題はないのだ。


『しかしこれからは戦闘もこなして貰いますから、こちらで強化させて頂きますが』


「デザインは変えんなよ、苦心したんだぜ」


 ブレインは正直ダサいと思ったが口には出さなかった。


『・・・分かりました、ご期待に添えるように努力しましょう』

 



「イマイチだったな」


「だったねー」


 映画館から出て第一声がそれだった。

 話題のアクション映画はかなり不発だったようだ。


「じゃ、メシ食って帰るか」


 京介は伸びをする。


「えー、ラブホは?」


「金ねーし」


「据え膳なのに」


 さすがに瞳も本気ではないが。

 恋愛としてはどうか分からないが、友人としては京介と瞳の距離はこの数週間でかなり縮まっていた。

 元々ノリはあう相手であったが。


「・・・見つけたぞ、ネクスター」


 声が響いた。


「!?」


 京介が身構えると、景色がゆがみチューインが姿を現した。


「お前にはふたつの選択肢がある。俺と一緒に来てその力を組織に役立てるか、ここで俺に始末されるかだ」


 チューインの体がぐにゃりと曲がった。


「ひっ!」


 瞳が声をあげた。


(・・・どうして俺が能力者だと・・・?)


 ブレインが言っていた超人たちが発する波動のようなもの。それを探知する事が相手は出来るのか。


「返答は・・・円奈瞳?」


 京介が予想しない名前がチューインの口から飛び出した。


「・・・・!」

 京介は瞳を見る。


「えっ・・・わた、わたし?」


「そうだ、キサマからネクスト数値を探知した。しらばっくれても無駄だ」


 チューインがスライム化すると、瞳の両手両足を押さえ込み、壁に押さえつけた。

 瞳がうめき声をあげる。


「さあ、力を見せてみろ!」


 スライムからチューインの顔が浮かんで言った。


「何言ってるのか・・・わかんないよ!」


 身動きの取れない瞳が叫んだ。


(・・・なんだ? まだ自分の力に気がついていないのか?・・・)


 さすがにチューインも今の瞳が演技でしらばっくれているのではないと悟った。

 しかしネクスターが能力を発動させる時に出る反応が瞳から発せられているのである。


「・・・常時発動させて、本人が未だ気がつかない能力だと? ええいややこしい!」

 チューインは体の一部を針のように尖らせた。


「目の一つも潰してやれば、発動するかもな」


 その針はゆっくりと瞳の目に向けて伸びていく。

 身動きが出来ず、恐怖によりその針から目が離せなくなる瞳。


「いやァ・・・」


 のどの奥で唸るような声だ。


「さあ・・・能力を見せろ」


 チューインの目に狂気が走った。

 ずっ。刃物が肉を通る音が響いた。


「あば、ばばばば・・・」


 ガクガクと震え、奇妙な声を出したのは、チューインであった。

 額から、刃物の先がはえていた。


「だだだ、な、にぃぃ・・・」


 チューインが後ろに顔を向けると、京介がナイフをチューインの後頭部に突き刺していた。


「顔だけ実体化してたのが、アダんなったな」


 護身用に持っていた超合金のナイフをありったけに強化して刺した。もう助からない。


「・・・ネクスト、反応・・・きざ、きザマも・・・ネク・・・ぐぶおぁ!」


 チューインは口から大量の血を吐くと、そのままスライム化して地面に落ちた。

 瞳を束縛していたチューインの体の一部も、液体が重力に負けるように、地面に落ち、大地に染み込むように消えた。

 チューインは死んだ。


「・・・・・・」


 京介はチューインを刺したナイフをじっと見た。


「・・・意外と」


 意外と簡単だった。相手を殺すのは一瞬だった。呆気ない。

 超人とはいえ、確かに1人殺した。だが京介の中にショックは意外なほどなかった。

 瞳を助けることしか頭になかった。


「・・・任意くん・・・!?」


 瞳の声がして京介は振り向いた。


「任意くん・・・わたし、なんか、なんか・・・変なの・・・」


 瞳の体の一部が溶けている。そうチューインのように。


「・・・どうしよう、これ、ねぇ・・・」


 瞳が自分の腕を見ると、腕はドロリと溶けた。


「ひっ・・・ひっ・・・」


「円奈! イメージしろ! 体を!自分という個体をイメージするんだ!」


 京介の言葉に、瞳は必死にいつもの自分を、鏡でみた自分を想像する。

 溶けてない手を、想像する。

 すると、スライムが段々と形を作り、手の平を再生した。

 そして全体の体の崩れも収まり、元の瞳の体に戻った。


「・・・戻った・・・?」


 とりあえず戻った安堵と、どうして自分がこんな事になったのかという混乱が交差し、瞳の頭の中はごちゃごちゃだ。


「・・・円奈が能力者・・・? チューインと同じ能力? そんな偶然があるのか、いや・・・」


 とりあえず考えてもはじまらない。京介は瞳を秘密基地に連れて行くことにした。

 こうなればもう瞳も無関係ではない。


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