0.前言撤回します
ハロー。皐月お兄ちゃん、真也お兄ちゃん、お元気ですか?
あたしは初めての一人暮らし(寮生活だけど)に悪戦苦闘しながら、ようやっと華里大学に入学して3ヶ月を迎えることができました。
え?まだ何も始まっていないじゃないかって?
ノンノン。心配ご無用。あたしはとにかく元気でやっていますからね。
皐月兄ちゃん、そっちの仕事放り出して帰国してこないでよ。クビにされたらどうすんだっつうの。
従姉妹の文月お姉ちゃんとこにはちゃんと週に2回顔出してるし。
あ、そうだ。バイトも決まったんだよ。大学の近くのカフェ。
新しい友達も出来て、楽しい毎日です。言われなくても写真は送ります。だから文月お姉ちゃんに盗撮を依頼するのは止めろ、皐月の馬鹿兄貴。
ともかく華里に入ってよかったと改めて思います。いい人ばっかだし、食べ物は美味しいし、何よりうざったらしい皐月お兄ちゃんがいないのが一番嬉し……気にしないで下さい。
今食堂で同じ学部の子とお昼を食べてるところ。激辛カレーライス大盛りで500円って安い。学生の財布に優しい。
タダでつく福神漬けを大盛りによそって空いたテーブルにつき、スプーンを取り出して真っ白なご飯とカレーのルーを程よく混ぜ合わせ、口に放り込む。
うーん美味しい。真也お兄ちゃんがよく作ってくれたカレーライスと甲乙つけがたいほど。っておい、インドに修行に行くとか言い出すなよ。そして泣くな。
空気は奇麗、緑もたくさん、食べ物は美味しい、嫌な奴は一人もいない(多少イラッとくる奴はいるけど)。
大事なことだからもう一度言います。
華里大学に入って良いこと尽くしです!
「あ、あの……」
ん?見たことない女の子に声を掛けられた。皐月お兄ちゃん、チャオ。
「ああ、何か用?」
椅子に腰掛けている所為なのか分からないがやたら背が高くないか、この子。顔は小さいくせに…って超美人じゃん。
今一緒にご飯食べてる未亜は可愛い系だけど、これはまたレベルが高いな。
もしかしたら同じ学部じゃないのかもしれない。うんうん。
なんて色々考えている合間にも目の前の美少女は恥ずかしそうに手をもじもじとさせ、顔を赤らめてあたしを見ている。いや、見下ろすが正しいか。
あたしと友達になりたいとか?そんなわけない。こんなちんちくりんでサルみたいな奴にわざわざ交流を申し込みたいとか、あるわけない。へっ。
「あなたが……」
か細い声が届いて意識を戻す。潤んだ目に見つめられて、ここが食堂だということも忘れてしまうほどだ。
「え、何?」
覚えていないが、この子に何か粗相でもしてしまったのだろうか?
尻すぼんでいく言葉に聞き返すと、美少女は突然私の右手を握り(左利きで良かった。貴重なカレーがぶっ飛んでいくとこだった)、今度はよく通った声で
「あなたが好きです」
「………はい?」
賑やかだった周囲が一気にシンとなる。少し離れた人には聞こえていないようで、まだ騒がしいが。そしてあたしの斜め前に座って食事をしていた顔見知りの男子は彼の美少女を一目見てなぜか納得したような顔をし、次いで私を同情の眼差しで見てきた。
向かい合って座っている桐原未亜は俯いていた。
なんなんだ。この状況は。罰ゲームかなんかか。
圭がいたら爆笑もんだな、これは。蓮実には絶対知られたくない。
「ええっと……」
どう言えばいいものか。あたしは非常に困った顔をしていたと思う。
握られた手を離してもらおうと口を開きかけた瞬間、美少女の声が被さった。
「付き合ってください」
お兄ちゃんたち。先ほど申し上げた数々の発言、前言撤回します。
どうしてこうなった。
miaの今までのお話の中で登場した人たちをどんどん出していこうと思います。
ハチャメチャな話になりますが、よろしくお願いします。