うちの夫は異世界一
その後のことと言えば。
王女殿下は、横恋慕の上に公爵夫人を害そうとしたことで、陛下の怒りを買った。
そりゃそう。そもそも、オリビアの婚姻は陛下の意向。抑えられなかった陛下にも非はあるけど。
自滅してくれたヒロインには、感謝の意を示したいし、退場くらいは祝わせてほしい。
ということで、精神的に幼い彼女を大層心配した心優しき公爵夫人オリビアは、長兄の伝手で陛下に降嫁先を紹介した。
監禁調教幼女趣味の田舎男爵だが、きっと大事に愛でることだろう。
王家に借りも作れたし、お兄様にも褒められたし、夫に素晴らしい妻と言ってもらえたので、すこぶる機嫌がいい。
え? 二枚舌と暗殺者もどき? さあ。青筋を立てて怒り狂う長兄に預けたので、処置済みなんじゃないだろうか。
二人ともなぜかオリビア贔屓なようだが、悪役の溺愛ルートなんかいらない。
なんせオリビアには、とっても素敵な旦那様がいるので!
「夫人。事件の証言をしてくれた紳士方やご婦人方が、みな小刻みに震えていたのだが、心当たりはあるか?」
詳しい事情を聞きに来た最後の攻略対象者の騎士団長が、しきりに首を捻っている。
さあ。悪いキノコでも食べたのかしら、心配ね。
聴取で疲れた団長は胃が痛そうにしていたので、次兄特製の精力剤を差し上げた。
薬草採取と調剤が趣味なのよね、お兄様。オリビアは飲まないけど。
そうして、やっと諸々の処理が落ち着き、王女が田舎男爵の元へ嫁ぐ日。
たまたま王宮を訪れていたオリビアは、不意の目眩で医務室に運ばれた。
たいしたことはないし、ちょこっとふらついただけなのに、従兄妹たちが大騒ぎで運び込んだのだ。
今まで没交渉だった王太子とその他の従兄妹たちは、唯一の妹ポジションとなるオリビアに構いたくて仕方ないらしい。
第三王女の性質が形成された過程を知るようで複雑である。
なんとか彼らを宥めすかし、夫の元に案内してもらうと、彼はちょうどヒロインの見送りのため門にいると言う。
まあ、なんて素敵なタイミング。
どうせ最後に会いたいとか我儘を言ったのだろうが、今はとっても気分がいいから許してあげる。
「あなた!」
「オリィ? どうした」
若干不機嫌そうだった夫から少し離れた場所で、馬車に乗り込もうとしていた第三王女がオリビアを睨みつける。
うふふ。いいのよ、いいのよ。
「あなた、聞いてくださいませ!」
弾んだ息のまま夫の腕を掴むと、首を傾げた優しくて可愛らしい旦那様がそっと腰を抱く。
「あなた、家族が増えますわ!」
「えっ?」
「赤ちゃんができましたの! ふふ、お腹にいるんですって!」
二秒ほどの間。
わくわくと待っていたオリビアは、急に両脇を掴まれて幼子のように抱き上げられ、夫人らしからぬ笑い声を上げた。
珍しく、夫が表情を崩して笑っている。ああ、なんて可愛らしい。
「やった! オリィ、すごいぞ!」
「ふふっ。あなた、嬉しい?」
「もちろんだ! ああ、こうしてはいられないな。あなたの身の安全が何より大事だ。護衛を増やさねば。先に失礼する。あ、王女殿下、ご結婚おめでとうございます」
おざなりに挨拶された王女は、顔を覆って泣き出したけれど、夫は気にした様子もなく踵を返した。
笑顔のオリビアの腰をしっかり抱いて、顔中にキスをする。
オリビアは、とーっても気分がいい。
性格が悪い? そんなの知ってる。今世のオリビアは、すっごく気が強くて、あんまり優しくない。
でも、いいのだ。優しくて可愛らしい旦那様は、こんなオリビアを好きになってくれた。
だから、オリビアはたぶんずーっと、死ぬまで勝ち気に幸せだ。
「あなた、愛していますわ」
一生、大事にしますわね!
お粗末様でございましたm(*_ _)m




