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舌戦は大好物ですわ


財務部に勤める公爵閣下は、何くれと年上の紳士たちに声をかけられる。予算云々の催促だろうか。

押しの強いおじさま方に囲まれた夫に笑いながら、オリビアは友人との談笑や家族との再会のため少し離れた。


久しぶりの社交は捗り、先ほどの王女とのやり取りのこともあって、オリビアもご婦人方に人気だ。

新婚生活のことやら夫の豹変のことやら話していて、少々喉が乾いてしまった。


飲み物を取るついでに、息抜きをしようと会場を出て廊下に出る。

荘厳な金色に飾られた廊下は階下からの吹き抜けで、人は少なくともあらゆる場所から目につく。

幅のある階段には宝石があしらわれ、よく披露パーティーにも使用されていた。


「まあ、順調かしら」


王女のちょっかいがこの程度で収まるとは思わないが、正直ここからは正真正銘ただの横恋慕である。

この国は一夫一婦制で、婚姻中の不貞は双方にダメージが強い。


まあバレなきゃいいではあるが、バレたら社会的地位を失うレベルだ。

もし王女との不貞となれば、彼女を娶らなければならないので、そこを狙いそうではあるが。


あくまで妻はオリビアなので、王女が横恋慕しても怒るだけの理由がある。

ゲームのオリビアは、方法を間違えただけ。

あまりに陰湿に命を狙ったから、思ってもみない王家への叛意なんて罪まで被ってしまったのだ。


夫の気持ちがオリビアに向いているというのは、かなり大きな原動力だ。

だって、オリビアが嫉妬したら、たぶん彼は喜ぶ。オリビアも、夫が嫉妬したらものすごく嬉しい。

そういう関係性を築けていることが、今世のオリビアの強みだった。


「あーら。旦那様に放っておかれたの?」


くすくす、隠しもしない嘲笑に振り返ると、砂糖菓子の王女と取り巻きがいた。

否定とも肯定とも取られない角度に首を傾げ、ひとまず挨拶代わりに軽く膝を曲げる。


「シュヴァル様のこと、譲っていただけるでしょ?」


おっと。直球で来たな。

貴族的な言い回しが苦手でいらっしゃる王女は、こういう時も裏表なくまっすぐ言葉にしちゃう。

周りの紳士ご婦人方がぎょっとしているじゃないか。


「あなたでいいなら、従姉妹のわたくしの方が相応しいじゃない? シュヴァル様って本当に素敵。お美しいし、凛としてらっしゃるし、あなたにはもったいないわ」


家では、妻にせっせと貢いだり気遣ったり、たまに甘えたりする可愛い人なのだが。

そういえば、美しいとか冷たそうとか、思うことは少なくなった。


「わたくしくらい可愛かったらよかったわね。あなた、彼には似合わないんだもの。きっと、シュヴァル様を支配してるのでしょう? あなたを優先するなんて、それ以外ありえないもの」


なるほど。王女の中では、彼女以外を優先させるからには、相応の理由がないとおかしいことになるのか。

謎理論だが、幼い頃から蝶よ花よと育てられた弊害だろう。


オリビアが夫を支配し、強制している。

そういう方向性でないと、彼女は自分の価値を保っていられない。

なんて。なんて。


「お可哀想な方……」


つい、ぽろっと本音が漏れた。おっと。思わず。ね?

眦を釣り上げた王女が、ぎんっとオリビアを睨みつける。


やっぱり、オリビアは堪え性がないのかもしれない。あと、ちょっぴり衝動的。

けど、残念ながら、そんな自分をちっとも悪いとは思えないから、もう悪妻でもいい気がする。


「王女殿下は、想い人に気持ちを返していただけない恋は、無意味だと思っていらっしゃるのね」


憐れむように、悲しそうに眉尻を下げて。

口元を扇子で隠し、オリビアはほんのり儚く微笑む。


「同じ強さで想われないと、ご自分には価値がないとお思いなの? そんな悲しいこと、おっしゃらないでくださいませ」


「は……?」


「恋とは、ええ。確かに相手がいて成り立つものです。けれど、相手の心が誰を向いていたとしても、恋心はあなただけのものですわ」


そうそう。恋をするのは自由。たとえ相手の恋の相手が、自分でなくても。


頭がよろしくないって本当なのね。

王女が意味がわからないとばかりに目を白黒させている間に、オリビアは畳みかけるべく口を開いた。




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