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第39話・バディ結成!

 地下都市の天井を埋める蜂の巣のようなコンクリート構造物。


 古いコンクリートの低く連なる雑居ビル。

 ポツポツと灯りのついた街に、煙突と無骨な配管。


 その中を赤いテールランプが二本連なって駆け抜けていく。



 僕はバイクの後ろのシートに腰をかけている。

 目の前に見えるのは空色のジャケットと、浮き出た背骨。

 そして、レザースカートから遠慮なく飛び出た、生足……


「おおい! どこ見てんだ! ドスケべ少年スゴミっちー!?」

「どこ見てるって、ノリコさんの方ですよね!

  こっち見てないで、 前見て運転して貰えます!?」



「アッハハ! 大丈夫大丈夫、ウチ転ばないからー!

 でも触ったら浮気だからな!姫様に言いつけちゃうぞー!!」


 目の前のノリコが振り向きながら指で胸をつついてくる。

 この人は本当に運転を始めてから、ほとんど前を見ていない。



「だから、姫様とは何も無かったんですってば!

 そもそも姫は婚約者居るんですから!!」


「えー! そうだったのー!?

 浮気じゃ無いならどこ触っても良いよー!!」


「触らないっすよ!! やめてくれませんか、そういうの!!」



 すると、ノリコの喋りのトーンが急に落ちた。


「ってかさ、さっきからウィング掴んでるけどさ

 それ、ボディのネジ緩むからやめてくれない?

 二人乗りは腰掴んでてくれた方が、バランス良いんだよね。」


「えっ……」



 確かに、掴む場所が無かった。

 座席の後ろ側の、バイクのボディの部分を無理矢理掴んでいた。

 僕はすぐにそこから手を離し、手を前に持ってきた。

 そこには、ノリコの細くてくびれた腰。

 掴めとは言われたが、掴むのをためらう。


 ……すると。


「ああ! ああーっ!! バランス悪ーい!

 掴んでくれなきゃ倒れちゃうー!?」



 ノリコは頭とバイクを激しく揺らし、蛇行運転させ始めた。

 振り落として殺す気なんじゃないかと思う程に遠慮ない。

 もはや運転という名の凶器。テロ活動だ。

 やむを得ず、僕は彼女の腰を両手で掴んだ。


「あ、危なっ! やめてください、落ちるっすよ!」

 その瞬間……


「きゃーっ! いやらしい手つきだー!!

 おーい姫様ーっ!浮気が居ますよ!コイツ浮気ー!!」

「はあ!? 何言ってんすか、めちゃくちゃ過ぎっすよ!!」


 それに対し、ブリアンがネオさんのバイクの後ろで振り向いた。



「だから、スゴミとは本当に何も無かったのよ!

 私は姫でスゴミは一般人よ! ありえないでしょ!?」


 それを聞いてネオが冷静にツッコミを入れる。

「いつの間にお前ら名前呼びに進展したんだよ。」


「そ、それは……っ!!」

 ブリアンは屈辱そうに黙って、ネオの背中に頭をつけた。

 ネオさんのバイクはまっすぐ、綺麗な軌道を描いて進んでいく。



 それに比べてコチラは……


「スゴミっちぃ! 指が熱いぞお前ー!

  ワイルドに! もっとワイルドにぃい!」

「何がワイルドなんすか! 暴れないでくださいっすよ!」



 腰を掴んだというのに蛇行運転をやめる気配がなかった。

 ブリアン姫がノリコの後ろを嫌がった理由と、基地に来た時

 ものすごくキレてた理由が、今わかった気がした。


 しかし不思議なのは、運転はめちゃくちゃなのに


 まっすぐ走ってるネオさんのすぐ後ろから、一切距離を離さず

 同じ速度で付いて行っている事だった。



 僕はその中でネオさんに抗議した。

「そういえばネオさん、僕達のこと追い出してから

 監視して敵と戦ってたんですよね……

 それって僕らを囮に使ってたってことですよね」



 ネオさんは冷淡に回答する。


「いつ来るかわからん敵より、敵に早めに出てきて貰って

 裏から処理する方が楽だからな。

 ただ、規模が想定より大きかったんだよ。」


「暗殺計画ってそんなに大規模なんですか……

 暗殺なんだからひっそりやるものでは……」



 そこにノリコが口を挟む。


「最初は1人だったよー?

 それが5人部隊とかになってー、最後はすごい人数でさあ!

 姫様……追っかけたくさんで人気者だね!!


「そんな人気……嬉しくないわよ……」


 僕はホテルでブリアン姫の涙を見た。

 だから僕はそんなネオさんの態度に、怒りを感じていたのかもしれない。

 ネオンさんもそうだった、意図的な発言を投げて

 僕を動かして物事を進めようとしてくる。



「それならせめて、教えてくれれば良かったじゃないっすか!」


「囮やれなんて、その姫は拒否するだろ

 それに突然出て来たお前を信用してた訳じゃないし

 そもそも本来お前助ける義理は無いのに助けてやった

 感謝されても恨まれる覚えは無いけどな。」


「それは……そうなのかも知れないっすけど……」



 僕はネオさんと口論して勝てる気がしなかった。

 そんな会話中でもノリコはぶっ込んで来る。


「あー! スゴミっちが突然出て来たってぇ

 ネオっちの風呂中にスゴミっちがいきなり

 いやらしく抱きついてきたって話!?」


「えっ!?抱きついてきたのはネオさんもですよ!?」

「お、おい、バカやめろ!!」


 ネオさんの動揺を示すようにバイクが少し揺れて

 ブリアンは少し、しかめた流し目をこちらに送っていた。

 それを受けて僕は少しうつむいた。



「でも、知ってたら僕も動き方とかあったと思いますし

 それで姫様になにかあったらって思ったら……

 それ、自分は悔しいんですよ……」


「ぬわーん!! スゴミっちぃ! お前良い奴だなぁ!?」


 ノリコが完全に手放しで振り返り、僕の両肩を掴んで揺らしてきた。

 なんでこれでバイクが真っ直ぐ走ってるのか分からない。


「ちょっと!! マジで前見てくださいってば!!」


「スゴミ……」

 それを見ていた、ブリアンのつぶやきは静かだった。

 実際の所、一番怖かったのは彼女だ。

 それを聞いてネオは、自分の腹を掴んでいたブリアンの手を取って

 下にずらし、腰へとつかみ直させた。


「ってか、お前ら本当に初対面か?

 まだ 出会って4時間もしてないよな……

 なんでそんな仲良くなってんだよ。」


「だーから、裸で抱き合ってたんだってばあ!!

 愛の爆発に時間は意味を成さないのさー!!」


 ノリコが入ってくる度にどんな空気も茶化される。


「それ本当に、誤解っすからね!?」


「まあ、ホテルの中までは監視してないから安心しろ

 本当に何してたかは見てない。」


 熱くなる僕の弁明をネオさんがフォローしてるように見えて

 むしろ何かを確信してるようで怖い。ブリアンが静かに同調する。


「スゴミは本当に何もしてないのよ……私にはエリオット王子がいるんだから。」



「そっかー! スゴミっちは姫様にフラれちゃったんだね!

 じゃあ姫様にフラれた者同士、仲良くしよーね!!」


「えっ……はい、よろしくお願いします。」


ブリアン姫は特に反応もしないまま、ネオの背中に頭を埋めていた。

そんな状況で進んでいると、ネオさんが突如、真剣な声で通信を入れる。




「ノリコ、前方100、14時から装甲車。」

「あい!了解ー!!」


 ノリコ元気よく答えた後、車体をまっすぐ走らせた。

 それと同時に彼女を腰を掴む僕の手をパシパシと叩いて

 低いトーンで声をかけてくる。


「ちょっとふざけないからさ、本気で抱きついてて」


「……え?」



 その時、正面100m程の交差点の右側から、巨大な鉄塊が飛び出してきた。

 それは大型バスに鉄板を貼り付けたような装甲車。

 装甲車は交差点に突入し、僕達の行く先を封鎖する形で交差点内に止まる。



「ちょっとあれ! ぶつかりますよ! 閉じ込められた!?」


「だから抱きしめてろって、言ってんだろうがーっ!

 バイクの魂は一体化! 振り落とされんなよ相棒ーっ!!」


「あ……相棒!?」

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