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MORE THAN BLOOD  作者: 藤倉崇晃
ゲームの顛末
8/19

ポニータ

渉と順子が二人で行動をとるようになってから数日が経った。




吸血鬼ギゲルフは、百合っ子の血を集めるゲーム(第一話、第二話参照)で5人中3位だった。1位はシグネチャ、2位はストラクチャ。この二人と大きく差が開いてしまっていて早くも敗色濃厚だった。そこで4位のギブネマチャに、




「組まないか?お前、誰の妹でも別に構わないって言ってたよな?」




と懐柔した。




百合っ子の血を50kg集めて妹を「製造」するゲームで、優勝者は、妹を率先して可愛がる兄の座が手に入るが、ギブネマチャは誰の妹でも仲間だろうという認識だった。




ギブネマチャは少し悩んでから了承した。




「僕は構わないよ」




ギゲルフに協力して勝たせれば、ギゲルフに次ぐ独占的立場に立てると思って。








ある日。




渉は、学校から自宅まで帰ろうとする順子を校門前で待っていた。




順子は、




「渉ちゃん。授業でなよ」




と言う。




渉は、




「太郎がいないんじゃ学校に行っても仕方ないよ。『悪い魔法使い(※吸血鬼のこと)』の件が片付いたら、俺は探しに行く」




と言う。




「渉ちゃん。安藤君が親友なのはわかるけど、安藤君みたいに『喧嘩が強ければいい』って考えるのそろそろ止めにしたほうがいいよ。私は危ない目に遭ったのを助けて貰っているけれど、間違ってると思うよ。本当は、身の回りで人の形をしたものが傷つけ合っている原因になるくらいなら、死んでしまいたい…」








渉が返事をせずにいると、前方から男性の二人組がやって来た。




吸血鬼ギゲルフと吸血鬼ギムネマチャだ。




「いたいた。僕と組んだのは正解だよギゲルフ」




「ギムネマチャ。コイツらがシグネチャの言っていた殴り合いのできる全く新しいタイプの陰陽師と『逃げた獲物ちゃん』かな?」




「間違いないんじゃないかな」




渉は、




「お前ら一体何者なんだ?」




と言う。




順子は、震えながら、




「渉ちゃん。こんなに危ない目に遭うくらいなら…私、犠牲になる」




と言う。




渉は、




「しっかりしろ…!そんなのいいわけないだろ…!心を強くもて…!順子は何も悪くない…!」




と言うと、戦闘態勢の構えをした。




ギゲルフは、




「俺達は吸血鬼だ。2対1で戦う気か?」




と言うと、ギブネマチャは、




「3対1だよ?」




と言う。




渉は、




「3対1だと?」




と言う。




すると、渉の目の前に先日喧嘩で殺した不良のリーダーの亡霊が現れた。




「イテェ…イテェヨォ…イテェヨォ…」




亡霊は渉に纏わりつくと渉は身動きが取れない。




ギブネマチャは、




「君のガールフレンドは僕達が可愛がってあげるからね」




と言って、渉の敵愾心を煽る。




渉は亡霊を力でねじ伏せようとするが、亡霊は全く退かない。




肉体の無い亡霊。




渉が、




「除霊する…!俺は殴り合いのできる全く新しいタイプの陰陽師…!」




と言って呪術を唱えようとすると、








ザクッ…!








「痛っ…!」




渉の脚に、ギムネマチャの投げナイフが刺さって呪文を妨害する。




ギブネマチャの特殊能力




「ゲシュペンストエコー」




対象者1名が最近殺害した人物の亡霊を霊界から呼び出す。対象者1名は纏わりつかれ、自由を奪われる。
















その隙にギゲルフが順子の背後に回ると、順子の腕を掴んで、




「面倒くせぇ…注射器でチビチビ採血してたんじゃ勝てないよな?」




と言うと「誘惑の魔力」ではない力を使った。








順子は、




「キャアァァァァア!腕が…!返して…!」




と叫んだ。








順子の腕が取れた。




血は流れていないが、ギゲルフの掴んだ左腕が取れてしまった。




左腕のない順子。




ギゲルフは、




「コイツでゆっくり採血してやる」




と言うと、順子の腕を盗んでギブネマチャと一緒に逃げて行った。








投げナイフが飛んでこなくなると、渉は除霊をした。




「順子…!ゴメン…!」




「嫌…!渉ちゃん…!私は左腕を盗まれてしまった…!どうしよう…!」








ギゲルフの特殊能力




「デタッチャブルドール」




対象者に触れる事で発動し、両腕両脚の計4部位のうちどれか1部位を選んで奪う事ができる。ただし返すまで次の盗みは出来ない。








順子はその日の晩に失血死で死んだ。




順子が死ぬと、遺体に左腕が戻って来た。




順子は注射針で全身の血を抜かれた死体として発見され、警察は殺人と自殺の両面で捜査したが結論が出ず。ただ順子の死はコミュニティの犯罪クレジットには計上された。吸血鬼による犯行である疑いが固いため、不問には出来ないという政府の判断だった。




一気に13kgの採血に成功したギゲルフが1位に躍り出た。




日本政府は東京コミュニティの吸血鬼が秘かに掟破りをしている可能性を疑う事になった。しかし彼らが妹を「製造」しようとしている事実には到達できなかった。




ギゲルフは、




「このまま逃げ切りたい。こっそり百合っ子以外の女も狙って多く血を集めるぞ」




と言う。




それからまた二ヶ月半程の時間をかけて地道に採血を繰り返した結果、東京コミュニティの吸血鬼は50kgの血液を集める事に成功した。




「製造」とは、アイアンメイデンという中世の処刑具に封印された「1000年の魔女」に大量の血液を飲ませる事で「1000年の魔女」の子宮から新しい吸血鬼が製造される(第一話参照)。




吸血鬼達は「製造」した。




製造されたのは17歳くらいの容姿の女の子の吸血鬼だった。




「やった…!妹が出来たぞ…!」




皆、喜んだ。




ギゲルフは、




「俺が兄だ!妹よ…!」




と言う。




出来立ての女の子の吸血鬼は容姿が順子によく似ていた。50kg中13kgが順子の血液であるため仕方が無いのか。ただ目つきが鋭く、色黒だった。髪の毛は両耳の脇で二つ縛り。




「お兄ちゃん!なんで作ってくれたの?」




「会いたかったぞ!『ポニータ』!お前の名だ!」




「私、ポニータって言うの?変な名前!」




ポニータを可愛がる役目はギゲルフのものだが、ストラクチャ、シグネチャ、ギブネマチャ、イカナクチャも達成感に満足そうだった。




ゲームは円満に終わった。




それから来る日も来る日も、ギゲルフはポニータを可愛がった。




渉は、順子が死んだ翌日には旅に出ていた。自分自身への失望と無念さが凄まじかった。

ネオページで連載中の作品一覧


「MORE THAN BLOOD」

https://www.neopage.com/book/30874543123193800


「また君に会うための春が来て」

https://www.neopage.com/book/30065518320038800

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