論
検証しようではないか。とある兄弟が起こした奇跡は、果たして必然の出来事だったのか。後世の人間なら何とでも言えよう。だからこそ、この現在に平行世界で生きる者が書き記さねばならない。いや、書いても、読まれなくては死んだも同然である。一人でも多くの目に触れるよう、小説投稿サイトに残そうではないか。
これは、ある異世界の話である。しかし、現実世界に少しの関係が無いものではない。我々人間は常に現実と空想とを行き来し、アイデンティティが保たれている方へと逃避するのだ。空想から逃れられなくとも、そこにはやはり人類のドラマが待っている。
私は、肥沃な国土を持つユーデンライト国の、とある公爵家に招かれた。執事として長年勤めることになった私は、初めてこの地へ降り立ったときに表現のしようがないほどに有頂天であった。
公爵の名はローゼン・ボイジャー。彼には三人の子がおり、男児が一人、女児が二人であった。長男のザーグは何をさせても出来が良く、とりわけ魔法の扱いに長けていた。しかし、ザーグは激しい劣等感を持っていた。それは二女のミリューに対してである。真ん中の子サリィナは生まれつき目が見えなかった。二女のミリューは物静かで、それでいてザーグよりも良くできた。幼少期から高等教育が終了するまで、知力、魔力ともにザーグを上回り、体力も少し上にくるくらいであった。
ローゼンは妻に断らず、ミリューを王の元へと推薦した。若き王子はたいそう気に入り、彼の剣となるよう、国軍の司令官の座を与えた。一方、ザーグは地方都市に住む王族の元へと派遣され、失意の生活を送るのであった。