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四十九小節のカノン  作者: 雪白鴉
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4日目 九番目のワルツ

ものすごく遅くなった気がします・・・。


ゴメンナサイ。



 一応、いくつかワルツは見つけられた。その中から良さげなものを一曲、持ってきた。


 あまり弾き慣れた曲じゃないので上手に弾けるかはわからない。彼女が、宮西奏が来る前に音楽室で練習をすることにした。


 終礼が終わり、ダッシュで音楽室へ向かった。


(よし。まだ来てないな。)


奏が来ていないことを確認し、ピアノを開いた。

譜面立てに楽譜を立て、さぁ、いざ、練習だ。


「あぁ〜。ワルツだぁ〜。」


いつでもそうだ。彼女は突然やって来る。


「・・・来るの早くない・・・?」

「君こそ。」


せっかく練習しようと思ったのに。

さすがにこのグダグダさで聞かすわけにもいかない。


「練習でもしようと思ってたの?」

「・・・お察しの通りで。」


なぜドヤ顔なのだろう。


しかし、彼女がやって来て練習しないということは駄目だろう。演奏家として、下手くそな演奏を聴かすわけにはいかない。


練習して良いかと聞いてみると、彼女はあっさりOKしてくれた。



ショパン第九番変イ長調「別れのワルツ」。

適当に選んだわけじゃないけど、真剣に選んだわけでもない。なんとなく、この曲は彼女に聞いて欲しい、そう思った。


「練習、必要?」

「必要だよ。」


多分、五分の四くらいは出来てる。それでも、こだわりというものがある。完璧にしたい。僕はそういう人間だ。


「あ〜、良いよね〜。この不可解を漂わせるメロディと和音。自然と涙が出てくるよ〜。」

「なに言ってんの。」


ただの練習だというのにいつもいつも気持ちよさそうに聴いてくれる。僕はこれがたまらなく嬉しい。


客、大人数にテキトーに聞かれるより、こうやって音楽をわかってくれる人が一人、聴いてくれることが嬉しい。気持ちが良い。


彼女が、奏が、このピアノを聴きに来なくなるまで、僕は弾き続けることだろう。



フレデリック・ショパン作曲のワルツは全部で十九曲あるそうです。そして、今回出した「ワルツ九番目」の別名は「別れのワルツ」です。

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