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四十九小節のカノン  作者: 雪白鴉
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2日目 花より団子

「なに?今日も来てるの・・・。」

「だめ?」


昨日、突然放課後に音楽室にやって来て、僕の名前を聞いてきた宮西奏という女子生徒だが、なんと今日もやってきていた。

 

 何がしたくてやってきているのかも良くわからないが、彼女はどうしてか僕のピアノを聞きにくる。

別に聞きに来るような演奏でもないのに、何が良くて彼女が来ているのかは良くわからない。


「ねぇねぇ、今日は何弾いてるの?」


彼女が譜面立てに立てられている楽譜を覗いた。


「ただの合唱曲だよ。簡単なね。」

「へぇ〜。」


彼女はざっと楽譜を見た。

そして、無理やり僕の右側に座ると、右手を出した。


「歌のところだけならすぐ弾けるよ。ねね、一緒に弾こうよ!」

「え・・・。」


何をやるかと思えば、僕と一緒にこの合唱曲を弾こうとした。


「でも伴奏の右が歌のところに鍵盤がかぶるよ。」

「だったら1オクターブ上がるね。」


どうしても弾きたいらしい。

彼女の期待に満ちたキラキラとした目の前では僕は折れるしかなかった。


「譜めくりは頼んだからね。」

「はぁーい!!」


まだ初見で弾くのは彼女だけではない。

僕だって昨日貰った楽譜だ。ざっと見たけど覚えられるはずもない。


 僕は伴奏で両手が塞がるから譜めくりが出来ない。だから左手の空いている彼女に譜めくりを任せた。



 僕らは演奏を始めた。


思ったより演奏は形になった。彼女も少しはミスるものの、初見にしてはなかなかのものだった。


「上手だね。」

「でしょ!!」


褒められて嬉しかったのか、隣に座る彼女が笑顔を見せた。


「でも、君ほどじゃあないよ。唯月くんは本当にピアノが上手だね。刃が立たないよ。」

「どうも。」


良く言われる。

といっても人前で演奏することが少なくなった僕にとっては昔と変わらないということだ。

別に下手になったわけじゃないからいいけど、上手、上手と言われてもそこまで嬉しくはない。

自分のピアノを弾く姿の存在意義が自分でも良くわかっていない。


「君はピアノが好きなの?」

「・・・まぁ、花よりも団子よりも好きだね。」

「花よりピアノかぁ、君は。」


世界一好きなわけじゃないけど、気分転換に選ぶくらい好きではある。


「君はどうなの?」


なんだかずっと僕の話しかしていない気がしていたから彼女にも話を振った。


「ピアノが好きというより、音楽が好きだよ。」

「どんな音楽が好きなの?」

「クラシックが好きかなぁ。」

「そうなんだ・・・。」


失礼ではあるが彼女の口からクラシックが出てくるとは思えなかった。


「ねね、明日はクラシック、弾いてよ!」

「明日も来る前提なんだ・・・。」

「あったりまえでしょ!!」


僕は明日、彼女のリクエストでクラシックを弾くことになった。

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