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けものみち  作者: rival
アイヌモシリ
8/38


コタンコロクルを筆頭に、カンナ、ウタリテ、イヨノ、そして見守り隊(シコッペッコタンの仲間達)がけもの道を歩く。


コタンから御神木まではそう遠くなかった。



「コイツか…」


コタンコロクルに言われる間も無く、この木が御神木だとすぐに分かった。

ウタリテが声を漏らす。



他の木々よりも大きくて幹であろう部分は太く、葉は生い茂って生命力に満ち溢れているのが分かるが、その全てを黒蛇が覆い尽くしてしまっていた。


蠢く黒蛇に、皆んなが恐れおののいた。

その中で1人闘志を燃やす人物が居た。



「俺がイペタムを扱えたら、八つ裂きにしてやるのに…!取り敢えずカンナ。俺はアマッポロカほど上手くは無いがお前に触れさせない様に撃つ」


「俺も。これでも一応、狩人だ。コタンを守るために。いや、コタンを守るアンタを守るために力を貸す」


ウタリテは、黒蛇に怒りを滲ませながらカンナの肩に手を置いた後に力いっぱい弓を引いた。

イヨノも同じく弓を引いた。




二人に小さく頷いた後に、カンナは力いっぱい刀を握りしめる。

すると、バチバチバチっと大きく破裂音が鳴り出した。



発雷ハツライ



頭の中に浮かぶ言葉と共に、刀からは雷にも似た電流が放たれて無数の黒蛇を捕らえる。


黒蛇は刃に触れれば斬られて消失し

電流に当たると、体が硬化して苦しんでいた。


しかし、電流は全ての黒蛇には当たらず、逃れた黒蛇がカンナに襲いかかってくる。



「任せろっ!」

口を大きく開いて襲いかかってくる黒蛇目掛けてウタリテが矢を放つ。

放った矢は口を射抜き、そのまま黒蛇が蠢く御神木の幹へと突き刺さって動きを止めた。


どうだ!と言わんばかりに、ウタリテは得意げにイヨノを見ると…


イヨノは無言でニ本づつ矢を放っていた。

それも、しっかり黒蛇を捉えている。



ウタリテは更に闘志を燃やしながら、サポートに徹していた。



電流による硬化に苦しむ蛇がコタンの仲間の元へと近づくが、その直前で動かなくなった。

絶命したのかを確認するため、そっと木の棒でつつこうとする仲間を見て


「触れるでないぞ」


コタンコロクルは、いくら蛇が死んだとは言え、この厄災に触れるとどうなるか分からないので注意を促した。



御神木の幹に刺さる矢に雷が当たると矢は焼失するが電流が流れるのでその数を一気に減らしていった。



無数の蛇たちは焼け、幹に絡みついていたものも力尽きてボタボタと地面に落ちていく。


その電流の中でも御神木は無傷で姿を徐々に見せ始めた。





完全に御神木の姿が見えた時、蛇の焼けた灰を一蹴する様に清々しい風が吹いた。




御神木はまるでお礼を言うかの様に、そよそよと葉を揺らした。




「終わった…のか」

ウタリテとイヨノは矢を放つのに力を使い果たし、息を切らして疲れを見せた。



「…!」

御神木の木の根元から、ゴソゴソと動くモノ。

各々が身構える中で、現れたのは真っ白な一匹の蛇だった。


「…黒蛇じゃない」

「神の使いか…?」


黒蛇と違って好戦的ではないのか、こちらをじっと見据える白蛇を見て、カンナは跪きスッと手を延べた。


白蛇はカンナの手に絡まりながら乗ると、再び、じっと人間たちを見た。

そしてカンナに何か伝えようと目を合わせた。



【カエシテ。


ワタシの住むトコロにアナタタチは押し入った。

岩穴で火を焚き荒らシタママ去ってイッタ。

ワタシは静かに過ごしたイダケナノニ。

コノ木からも追わレル。


カエシテ。】


白蛇から伝わってきた想い。

あまりの驚きにバッと顔をあげてウタリテを見た。


「ウタリテ、聞こえたか…?」

「は?何が?」


ウタリテには伝わっていない様で、不思議そうな顔をしていた。


「白蛇の棲家にしていた岩穴を誰かが荒らしてしまったらしい。棲家を追われ、この御神木にたどり着いた…。そして、この場所からも追われてしまう事を嘆いているんだ。返して欲しいーーと。」


周囲の人は驚いた。


「白蛇の言葉が分かるのか…?」

イヨノが投げかけた言葉に、カンナは小さく頷いた。



カンナの話を聞いて、見守り隊の中の数人は罰が悪そうに視線を落とした。

そのうちの一人が徐に口を開いた。


「ま…まさか、あの場所に白蛇が住んでいるなんて思いもしなかったの…」




仲間の一人が身震いしながら話し始めた。


《山菜取りに行ったあの日…》


「これだけ獲れたら十分よ。そろそろコタンに…」


出発した時は雲一つ見当たらないとても良い天気だったのに

急に天候は一変した。


「この場所で雨宿りをして、少し落ち着いたら戻りましょう」


「ねぇ、これ!」

「…何かしら…?」


仲間の一人が、岩穴のところには物珍しい籠状に加工された何かがあった。その素材は木でも石でもない何か。

籠の中には少し焦げた薪が入っている。

また、その周辺には魚などを食い散らかした跡もあった。


「コレって熊じゃないわよね」

「熊が焚き火なんてしないでしょ」

「コタンの人間がこんな罰当たりなことしないし。人だとしたら…賊とか?」

「ま…まさかぁ〜」


賊と言う言葉と、見たこともない物を見やっては背筋がゾワゾワっとした。

岩穴からはゴゴゴゴっと風の通る音が聞こえ更に恐ろしさが増す。


一人が岩穴の奥を見て何を見たのか硬直した。

仲間の服の裾を小さく引っ張って知らせると…



《いやぁあぁああぁーーー!》



彼女たちは悲鳴を上げて持ってきた荷物をその場に置いて逃げ出してしまったと言う。




「ん?待て待て。それって…」


話を聞き終えて、その場に居たほとんどの人が疑問に思った。

その疑問を口に出せたのはウタリテだった。


「先に岩穴を荒らしてたヤツが明らかに悪いだろ」


彼女たちは忘れ物こそしたが、原因となる事はしていない。



「岩穴の奥に私たちを睨む目が見えたの。何かは分からないけど…」

「私も!…見た気が…する…?」


目が合ったのはこの白蛇なのだろうか。中には悲鳴に驚いて慌てて一緒に逃げて来た者も居たようだ。

ともあれ、彼女たちは岩場が荒らされたその場に居合わせてしまっただけ。


「一体誰が…?」


カンナも頭を悩ませた。


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