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けものみち  作者: rival
アイヌモシリ
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〜けものの小道《名前》〜



コタンコロクルの好意で馬を借りることになった。


平原にも草分けされた けもの道が見える。

馬での旅はとても快適だった。


「馬で思い出した。どうしてウンマシは自分の名前が嫌いなんだ?」


「あー。話せば長くなるんだけども。。」


そう呟くと、話を始めた。



ウンマシは元々、馬が好きだった。

習わしによって汚い名前を付けなければならなかったため、仕方なく【馬の糞】にした。


当の本人は、馬と同じ名前だとすごく気に入っていた。



ところがある日

ルテルケが、馬が糞をする所を見てウンマシを呼び出した。


そして

馬の糞を指差しながらウンマシの名前の意味を伝えてしまい

ウンマシはショックのあまり泣き出してしまった。


「それでシタクタクに…。それも嫌だろうに」


「ところがだ。ウンマシはその語呂が気に入ったんだな。自分はシタクタクだ!と言って聞かなくなった。」

苦笑いを浮かべながらウタリテは話した。


つられて微笑みながら聞いていたが、カンナはふと気になった。

「この習わしにも何か由縁があるのか?」



「あぁ、もちろんだ。」



昔、とあるコタンに美しい娘が生まれた。

容姿に合う様にと名前も美しい神様から取って名付け、とても美しく育っていった。



娘があまりにも美しいから、神はその娘が欲しくなり、娘にとある贈り物をした。


【アザと腫れ物】


娘の顔が醜くなると、コタンの仲間は距離を置いた。

家族は娘を見ない様になった。


娘は不思議に思い、ある時、水に映る自分の顔を見て衝撃を受けた。

それからというもの、娘はチセから一歩も出なくなった。


ある日、家族が狩りや山菜採りから帰ると

そこには娘の姿は無かった。

自分の姿に悲観し居なくなったのだと思い、誰も娘を探すことはなかった。




湖のほとりで悲しむ娘に近づいた神は

言葉巧みに、娘を神の世界へと連れて行ってしまったのだ。


その際、湖の水で涙を拭うと言って顔を洗わせると

元の美しい娘の姿になっていたと言う。




全ては神の仕組んだ事だった。




「その事があってから、幼少期には汚い名前をつける様になったんだ。この話では“神が惚れた”の部分はシシリムカ流域では“神の嫉妬”って違いはあるんだけどな。口伝えの昔話だ。所々変わるのは無理もないさ。」


伝承は各地方によって変わる部分もある様だ。

それでも一つの教えとして、山を越え、谷を越え、各コタンに伝わっているのはすごい事だと感じた。



……ちなみに、ウタリテの幼少名を聞いてみたが教えてはくれなかった。



「その話に出てきた濁った泉は実在していてな、傷や腫れ物を洗うと、綺麗に治ると言われてる。これから向かう所から少し先にあるヌプルペッ流域にあるらしい。」


そんな魔法の様な泉は、本当にあるのだろうか?

ウタリテの言う事だから、その部分に関しては半信半疑で話を聞いていた。

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