第7話 聖女モノ
「「「改めて、お二人にお願い申し上げます。我々メドベーフィア王国は貴方がたを『聖女』として招聘いたします。どうか、共に世界の危機を救って下さいませ」」」
「はい! 分かりました! 私にできることがあるなら、喜んで協力します!」
見城さんは相変わらずである。すぐさま司祭様が見城さんを褒め称えている。ついには跪きはじめた。
司祭選手、見事な誉め殺し! 見城選手まんざらでもなさそうだ! 続いて現れたのは第1王子選手! 見城選手の腰に手がまわったぁー! 見城選手の顔が赤くなっているぞ! 効果はバツグンだぁ! おっとぉ!第2王子選手が第1王子選手から見城選手を奪い取ったぁ! そのまま…あっ! チューしました! 第2王子選手が見城選手の手の甲にチューしました!! 見城選手、デレデレでノックアウトだぁー!カンカンカーン! 勝負アリ! 王国軍の勝利〜!
……なんて脳内でつい実況してしまうほど、彼らはあからさまに見城さんをその気にさせようとしている。私の危機察知センサーが、警告アラームを鳴らしている。この人たちは本当に信じられるのだろうか? 向こうがお願いしてくる立場なら、最低限の衣食住は保証させるよう契約(できるのかな?)させた方がいいのではないか? そもそも、聖女って何をするんだ?
「あの、私はもう少し考えさせてください……あと、見城さんと2人でお話しさせてください。あの、2人きりで!」
見城さんを含め全員に少し嫌そうな顔をされたが、気にしていられなかった。「不安なんです」「2人きりで相談したいです」「同じ世界の者同士でしか分からない話です」このワードを手を替え品を替え延々と繰り返した。理不尽な機嫌屋クソ上司を説得するのに比べれば、楽勝だった。
せっかくの説得を反故されないように、私はそのまま強引にお開きにさせた。外にいた護衛の人を捕まえて、マリーとサリーのいる部屋へさっさと案内してもらう。逃げるが勝ちだ。はじめは嫌そうな顔をしていた見城さんだったが、大人しく着いてきてくれていた。
「「おかえりなさいませ。千春様」」
「ただいま戻りました。マリーさん、サリーさん。早速で申し訳ないんですけど、見城さんと2人で話したいことがあって……」
「かしこまりましたわ」
「お茶のご用意をしてから退出いたしますわ」
「お隣の見城様のお部屋で、キャリーとハイリーと待たせて頂きますわ」
マリーとサリーによって、手際よくティーポッドやカップ、お菓子、軽食が机に並んでいくのを、私は黙って見ていた。向かいに座った見城さんを盗み見るが、薄く微笑んだままお菓子を眺める彼女は、何を考えているのかよくわからなかった。マリーとサリーはお茶の準備を済ませ、何か御用があれば鳴らしてくださいまし、とベルを置いてさっさと行ってしまった。2人の出て行った扉がゆっくりと閉まっていく。
ぱたん
「あの、けんじょ「おねーさん!おねーさん! 私たち異世界来ちゃいましたよぉー!! 聖女モノとか流行ってるやつじゃんーって感じでめっちゃテンション上がりますよねぇ! 2人だから追放モノかと思って一瞬ドキドキしましたけどぉ! それより! 王子様めちゃめちゃカッコよくありませんでしたぁー?? おねーさんどっち狙いですかぁ? 私まだ選べなくてぇ…でもなぁ…やっぱり金髪碧眼は王道だしなぁ……うん! 私決めました! 第1王子狙いにします! 被ってたら譲ってくださぁい!」
「……はい?」