第26話 オジ様
「板川様! お待ちしておりました」
「火の儀式にも招待して頂きありがとうございます。殿下のご配慮で、しっかり休むことができました」
「それは良かった。ところで……後ろのものは?」
「差し入れです。午後からの準備に参加できなかった分、軽食と冷たい飲み物を用意したのです。ご迷惑でなければ、どこかに置いて頂けますか?」
「お気遣い頂きありがとう。ぜひ皆で頂こう。グラント、食事スペースへ2人を案内してくれ。……しかし、この量だと準備が大変だったのでは? 本当にしっかり休めましたか?」
「ええ、専任料理人にお願いしたのです。全て彼らが用意してくれました。優秀な人達を選んで頂きありがとうございます」
「……板川様には何度も驚かされます。この世界に来たばかりなのにこんなにも馴染めているなんて」
特に驚かせるような事はしていないけどな。私の頭の上に疑問符が浮かぶ。王子の後ろで控えていた側近の人も、王子の言葉に続いてやたらと私を褒めだした。
「王や私だけでなく、騎士団の方々、それ以外の者達も、板川様に対して何の違和感もなく、自然と敬うべき聖女として接してしまうのです。それは誰にでも出来ることではありません」
急に褒められて、顔がどんどん熱くなる。嬉しいけど、嬉しいけど、どうして急に!? 手でぱたぱたと顔を扇いでいると、騎士の1人が近づいてきてこそっとクレイン王子に耳打ちした。するとすぐに、王子達一行は儀式の時にまたお会いしましょう、と言うと去って行ってしまった。一瞬で私は1人になってしまった。さて、どうしたものか。マリー達を探しに行こうと辺りを見回していると、後ろから声を掛けられる。
「何かお探しですか聖女様? 俺に何かできることはありますか?」
振り向くと、マントを羽織った髭のオジ様が胸に手を当てて立っていた。かっこいい。なんとなく、クレイン王子に雰囲気が似ている気がする。
「……あの、マリー達を探していて。差し入れの食事を置きに行ったので、食事をするスペースにいると思うんです……」
「マリーちゃん? 食事なら俺の隊の方だろう。ご案内しますよ」
「ありがとうございます!」
オジ様にさっと手を出されて微笑まれると、私の手はオジ様の手の上に吸い寄せられていた。ああ、デジャヴ。しかし、これは不可抗力だ。イケメンがエスコートしてくれるっていうのに、断る事ができようか。
しばらく歩くと、いい匂いが強くなってきた。スパイシーな匂いが食欲を刺激してくる。私は、差し入れを見た時からお腹が空いているのを我慢している。とても美味しそうだったが、当然見て運んだだけだ。
ぐーーきゅるる
だめ。お願いだから、今はやめて……! 宿主の思いも虚しく、私の腹の虫は自分の欲望に素直なやつだった。隣からくすくすと笑う声が聞こえる。恥ずかしい……。
「お腹空いてるの? かわいいなー。俺の隊が料理担当でね。今日は聖女様が来るっていうもんだから、いつもより張り切って作ったんだ。是非食べて頂きたいな」
今日のメニューはね……、と次々にオジ様がこだわった食材や調理の仕方、味付けについて教えてくれる。ああ、美味しそう。そして、楽しそうに話すオジ様が可愛い。たまらん。
「千春様!」
「まあ! カルロ様もご一緒ですの?」




