第21話 王子の昼食会
「よかったです……追い出されるかもって、先走っちゃいました」
あー良かったー!! 私は大きな声を出しながらしゃがみ込んだ。目が潤んだのを誤魔化したくて、わざと大袈裟に振る舞ってしまった。思っていたよりも、私はビビっていたらしい。しゃがんで俯いた瞬間にさっと涙を拭うと、笑顔で立ち上がった。
「次は何を見せて頂けますか?」
「うーん、マルタの隊は今から風の舞いに向けての仮眠を取りますから……。ちょうど12時ですし、他の隊については昼食の後にご案内致します。マリー、板川様の昼食の準備は?」
「今から厨房に準備するよう連絡するつもりですわ」
「それならちょうど良かった。ランチは僕が用意しよう。板川様、先程驚かせてしまったお詫びをさせて下さい」
王子様と一緒に食事なんて、マナーに不安がありすぎる。それにお詫びだなんて、私が勝手に勘違いした事だ。大したことないですからお詫びなんて結構です。そう言って私は断ろうとした。しかし、サリーによって遮られた。
「殿下、もちろん私達の分の昼食もご用意して下さりますわよね? 内々の場を設けて下さいまし。ねえ、マリー」
「妙案ね、サリー。ご一緒できるなんて嬉しいですわ、千春様!」
マリーとサリーの手腕によって、一瞬でクレイン王子とランチを取る流れになった。マリーとサリーが付いてくれるなら、私も安心だ。それにしても、マリーもサリーも、王子に対して全く遠慮がない。私室を空けてくださいまし、パストラミのサンドウィッチが食べたいですわ、と言いたい放題だ。さらに、クレイン王子も全く2人の態度を気にする様子もない。王子様ってこんなにフランクに話して良いの? どういう関係か気になりすぎる。
「え? 私達と王子の関係ですって? 幼馴染ですわ」
「私達のお母様がクレイン王子の乳母なのです。王子は大概、兄と私達とまとめて面倒をみられていましたから」
「彼女達は妹も同然です。女児が少ないから、王子の僕より大事に育てられてわがまま放題ですよ」
3人から幼少期のエピソードを聞きながら、和気あいあいとランチを取った。砕けた雰囲気でとても楽しく、私もくつろいで過ごすことができた。3人の気遣いに感謝だ。食後に、クレイン王子は騎士団の午後からの予定を説明してくれた。
午後からは、夜の宴会準備、掃除と植物の手入れ、中庭で一夜過ごすためのテントの準備を行う予定らしい。
夕食は、騎士団全員でキャンプファイヤーを囲んで行うようだ。火の聖霊の儀式は、キャンプファイヤーに点火するときに行う。しかし、点火での儀式よりも、その後の宴会がとても重要なのだという。なぜなら、火の聖霊は楽しく騒がしいことを好むかららしい。宴会が盛り上がれば盛り上がるほど、聖霊の集まりが良くなるようだ。
風の聖霊の儀式は宴会後から開始され、植物の聖霊達の儀式は翌朝の早朝に行うようだ。そして、全ての聖霊を呼び出した後、ようやく聖霊を武器に宿す儀式が行われる。
「板川様は何か見たいものはありますか?」




