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第17話 マルタ副団長

「板川様、お待たせしました。折角ですから、皆のところに行って、実際に何をしているのかご説明致しましょう。どうやら皆、板川様が来るのを待っているようで……お付き合い願えますか?」



 クレイン王子は騎士団にひと通りの指示を出し終えたようで、わざわざ説明役を買ってでてくれた。なんて贅沢な……。王子様にそんな事させられないですよ、遠くから眺めさせてもらうだけで良いんです……。私の口はそういった意味の言葉を発したはずだが、眩しい笑顔の王子に手を差し出されると、私の手は無意識のうちに王子の手の上に乗っていた。クレイン王子にはいつも、いつのまにかエスコートされている。本物の王子様ってすごい。



「説明すると言いましたが、僕は王族業務にも追われて騎士団に不在なことが多くて。僕の部隊には100名ほど所属していますが、普段彼らの指揮を任せているのは3人いる隊長達なんです。僕よりも彼らの方が儀式について詳しいですから、板川様を独占できないのは悔しいですが、彼らにも手伝ってもらいますね。まずは、副団長でもあるマルタの隊に向かいましょう」



 さっきまではあんなに自信たっぷりだったのに、急に自信なさげな様子になるのが、振り幅が大きくておかしかった。先程も感じたが、ずいぶんと茶目っ気のある人のようだ。楽しく話をしていると、噴水の近くまで来た。集団の中で1人だけマントを羽織った人がいる。クレイン王子は、ちょうどその人に向かって声をかけた。



「おーいマルタ副団長。こっちに来てくれないか。板川様に隊の仕事ぶりを説明して欲しい」

「かしこまりました。初めまして、板川様。マルタ・カザルスと申します。私の隊は主に水と風を使っています。」



 マルタ副団長はとても丁寧に説明してくれた。今は水の聖霊をたくさん呼ぶために、噴水の周りで祈りを捧げられるよう祭壇の準備をしているようだ。儀式である程度の水の聖霊が集まったら、マルタ副団長が隊員の使う武器である銃身の長いライフルに、水の聖霊を宿していくらしい。



「ライフルで魔物を倒すんですか?」

「いっいいえ。魔物はライフルでは火力が足りず倒せません。なので、水の聖霊に協力してもらい、ライフルを使って遠距離から魔物に薬を散布して動けなくするのです」



 マルタ副団長の隊は主に魔物の捕縛を行なっているようだ。魔物ごとにそれぞれ痺れさせたりダメージを与える薬があるらしい。それを水の聖霊に渡してライフルの弾に乗ってもらい、遠くから敵を狙撃して動きを止めるらしい。魔物ってライフルで倒せないんだ……。



「マルタ副団長は薬に精通しているんだ」

「そうなんですね。すごいです!」

「いえ、そんな…」



 マルタ副団長は急にしどろもどろになった。心なしか耳が赤くなっているような気がする。褒められたのが嬉しかったのかな。大人の男性に失礼だが、可愛らしい人だと思った。私が風の聖霊について聞くと、調子を取り戻して再び説明してくれた。



「えーっと。風の聖霊には、魔物に使った薬がこちら側に拡散しないように風の防護壁を作ってもらうのです。風の聖霊は儀式が大変で……」



 儀式が大変? 私が聞き返すと、クレイン王子とマルタ副団長はお互いに顔を見合わせて苦笑した。



「風の聖霊の儀式では祈りの舞いを行うのです。ただ、飽きっぽい子達が多くて……」

「つまり、今晩は寝ずに踊り通すってことさ」



 ずっとですか!? と思わず聞き返してしまう。ここの隊が1番大変なのではないか。それにしても、聖霊に性格があるなんて知らなかった。大変そうな中で申し訳ないが、私ははやく聖霊に会ってみたいという気持ちが大きくなった。



「ぜひ隊員達に声をかけてやって下さい。板川様に応援されれば、寝ずの舞いも頑張れる事でしょう。な、マルタ副団長」

「ええ。皆喜びます!ぜひ!」



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