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第16話 ご挨拶

「見違えたね、聖女様。さぁ、顔を上げて下さい。僕に成果を見せて下さるのでしょう?」



 ゆっくり、少しでも優雅に見えるように、いつもより時間をかけて顔を上げる。にっこりと笑うクレイン王子と目が合う。私も彼に倣って少し微笑む。両手を腹の前まで下ろして膝を少し折る。



「先日ぶりでございます。板川 千春でございます。このような素敵な場所でお会いできたこと、大変嬉しく思います」

「僕も板川様に会えて嬉く存じます。城での生活には慣れましたか?」

「殿下のお気遣い感謝致します。快適に過ごせております」

「それは良かった。あぁ、昨日は教会へ訪問なさったそうですね。板川様の説得はなかなかに難しいと司祭が嘆いていました」

「はい。すぐに返事ができなくてごめんなさい。王様の秘書の方に、世界の危機についての授業をして頂けることになったので、その後にお返事しようと思います。……あの、私、聖女のことも、この世界のことも、もっとたくさん知りたいと思っています。殿下にお願いがあるのですが、聞いて頂けないでしょうか?」

「ええ、なんでもおっしゃって下さい」

「ありがとうございます。あの、殿下と騎士団の皆様が今から行う儀式を見学させて頂きたいのです。邪魔にはならないように致します。お願いします!」

「なんだ。そんなことですか。全く構いませんよ」

「ありがとうございます。騎士団の皆様にも、ご挨拶させて頂いてもよろしいでしょうか?」



 なんとかクレイン王子に挨拶して、儀式の見学許可も取れた。無事にひと段落ついたと思い、私は少し落ち着くことができると思った。しかし、クレイン王子はすっと側まで寄って来ると、自然に私の手を取って耳元に顔を寄せた。



「素晴らしい。まだ足りないところはあるけれど、十分に及第点だ。君が私たちに歩み寄ってくれること、本当に嬉しい。さぁ、こっちに。騎士達に紹介しよう」



 イケメンのドアップは心臓に悪い……。驚きすぎたのか、心臓がバクバクと脈打って痛いぐらいだ。いつの間にか騎士団は整列しており、私はクレイン王子にエスコートされて列の前までやってきた。目の前にぎっしりと並ぶ屈強な男達に威圧され怖かったが、側に居てくれる人がいる分いくらかマシに感じた。



「騎士団の諸君! 喜びたまえ、今日はゲストが来て下さったぞ! 聖女候補の1人、板川 千春様だ。儀式の見学をしに来られた。いつもより気合いを入れてかかれよ!」



 クレイン王子が急に大声で私のことを紹介した。呼応して騎士団が歓声を上げた。あまりに大きすぎる声量に、地面がびりびりと揺れている。あまりにも盛り上がっているため、なんだか気恥ずかしくなる。私、そんなに歓迎してもらえるような人間じゃないですよ……。それでも、騎士団の人達は私に向かって手を振ってくれたり、千春様ー!千春ちゃーん! と声援を送ってくれたり、手を振りかえすとさらに盛り上がってくれたりと、とんでもなく歓迎してくれていた。後ろの人にも聞こえるように、出来るだけ声を張り上げる。こんなに大きい声を出すのは大学の部活以来だ。私が喋り始めると、騎士団の人達はさっきまでの盛り上がりが嘘のように静かにしてくれた。


「あの! 初めまして! 聖女候補の板川 千春です! 今は聖女について勉強中です! 儀式の見学を許して頂きありがとうございます! この世界に来たばかりなので、いろいろ教えていただけると嬉しいです! よろしくお願いします!!」



 私が話し終えると、堰を切ったようにわっと拍手と歓声が上がる。騎士団の皆さんはいい人達ばかりすぎる。こんなにも受け入れてもらえると、嬉しくて顔がにやけてくる。まるでアイドルにでもなった気分だ。


 クレイン王子が手を上げると、急に静かになる。儀式の準備を始めるようだ。王子がそれぞれに指示を出し始める。100人位が機敏に動く様子は壮観だった。端で見ていたマリーとサリーが嬉しそうに寄って来てくれ、再び後ろに控えてくれた。2人ともこっそりと指で良かったことを伝えてくれた。



「板川様、お待たせしました。折角ですから、皆のところに行って、それぞれが何をしているのかご説明致しましょう。どうやら皆、板川様が来るのを待っているようで……お付き合い願えますか?」



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