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第12話 授業

「そのまさかでございます。今から聖女についての授業を行います」



 イズラエル司祭様の授業はとても分かりやすかった。聖女の役割は主に4つあるらしい。

 

 まず1つ目は、聖霊の数を増やすことだ。そもそも聖霊というのは、自然と共に勝手に増えていくものだという。花が咲けば花の聖霊が、川の近くには水の聖霊が生まれるというように。特に、人間の手が入らない自然豊かな場所に多いらしい。そして、聖女はメドベーフィア王国の各地にある祭壇で祈ることで、その地域一帯の聖霊を活性化することができるという。お城の中庭にある祭壇もそのうちの1つらしい。聖霊が増えることで、魔法を使うときに威力が増えるという効果があるようだ。


 2つ目は、魔法の補助をすることだ。1つ目と同じように思えるが、聖女の力に慣れてくると、その場にいない聖霊を呼び寄せることができるようになるらしい。例えば、その場に水がなくても水の聖霊を呼び、水の魔法を使うことができるようだ。


 3つ目は、魔物の発生源を浄化することだ。魔物も聖霊と同じように自然発生するが、魔物は人間の負の感情が溜まってできる埃のようなモノらしい。放っておくと、どんどん魔物を発生させる魔木が育ってしまうようだ。魔物は、騎士でも退治することはできるが、魔木は聖女の祈りでないと浄化できないらしい。浄化のためには、その場に行って祝詞をあげなければならない。イズラエル司祭様が祝詞の一節を読み上げてくれたが、えらい長さだった。私はカンペはもちろん用意できますよね? と確認するも、浄化用の道具があるらしく、手が塞がるため祝詞の暗記は必須らしい。不安だ。


 4つめは、2人のテンションが最高潮になる内容だった。聖女自身も魔法を使えるということだ。勇者の血筋でないと魔法は使えないのではないかと聞いたが、聖女は問題なく使えるようだ。ただし、魔法学校に通って免許を取る必要があるらしい。そんなの、むしろウェルカム!! とメイちゃんが悶絶している。私もホグワー○みたいだと嬉しくなった。イズラエル司祭様に食い気味に、いつから魔法学校に通えるのかメイちゃんが突進する勢いで問いかけるが、どうやら王様の許可が必要らしい。



「とりあえず、聖女についての説明は以上でしょうか……。お二人は聖女を引き受けてくださいますか?」

「私、聖女頑張りますぅ」

「メイちゃん! またすぐ返事して! ーー私、まだ聞きたいことがたくさんあります。聖女の仕事はよく分かりました。でも……具体的に何をしなきゃいけないのか、いつまでに仕事をこなせるようにならないといけないのか、世界の危機に対して今行われている活動状況とか、まだ聞いていません」



 私の言葉を聞いたイズラエル司祭様は、板川様はとても慎重な方なのですね、と言うとふぅと息を吐いた。本日はもう遅いですから、とそのまま今日の授業はおしまいとなった。窓が無くて気が付かなかったが、もう夕方のようだ。帰り道のことを考えると、確かにそろそろ帰った方が良さそうだ。歩きながら伸びをするメイちゃんに続いて廊下を進んでいると、後ろから声がかかった。



「板川様。王の秘書に、最後のご質問について説明して頂けるよう頼んでみますね」

「あ……。わがまま言ってすみません。ありがとうございます」

「いいえ。お二人には納得して、長く聖女を続けて頂きたいですからーー」



 聖女って途中でやめたりできるのかな? と思ったけど、わざわざ時間を割いて授業をしてくれたイズラエル司祭様に、今それを聞くのは気が引けた。私はにへらと笑ってその場をやり過ごし、前にいるメイちゃんを追いかけた。



「今度こそ、教会が聖女を失うわけにはいかないのです……」



イズラエル司祭のつぶやきは、私には届かなかった。



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