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独り

今回の回、最後まで読んだら作品を間違えたか思うかもしれませんが大丈夫です。今回の回は必要な回なので。それと、これも先に言っておきます。今回の回の伏線は一回しか回収しませんが、回収する回がとても重要になりますので、繰り返しますが今回の話は文学系の歴史作品というよりはホラーグロ系になりますが、物語の展開上必要ですので!!

それと、改めてグロ注意なので15歳未満の方はご注意下さい。

1501年(文亀元年) 8月下旬 楠城 楠木多聞丸





目の前にいる男は村田珠光という茶人だ。この男は僧であり、世間的には茶人として知られている。そして、室町の公儀の8代目大樹とも幾久しく茶の湯における師弟関係という噂もある爺だ。御歳79歳の割には元気なものだ。



「我は、京で流行っている文化や教養のひとつである茶の湯の作法について習いたいのだが、良いだろうか?」



「なんと、お呼ばれしたと思えばこれほど幼い方が……」



「貴様、殿を愚弄するか!」

そう言って、忠宗が腰に手を掛けて立ち上がった。



「止めよ。珠光殿が面妖に思うのも仕方がない事であろう?生活で色々と世話になっている商人の頼みが実は商人同士の伝手で行われたもので、それが小さな国人の次男坊に自ら創始した”侘茶”の指南をする事になるとは、誠に可笑しい事であろう?我とて、商人の伝手を経由して先ずこう会えたこと時代に驚いておるのだ」



「侘茶ですな…さればまず、茶器を集めて下され」



「どのような茶器を集めれば良いのだろうか?」



「そうですな、ではこちらに記したものをお集め下され。それが成った後に茶の湯を教えましょうぞ」



「では、揃った折に…配下の者にも教えさせてもらってもよろしいか?」



「良いですぞ」



「では、茶の湯の道具が揃うまで…暫し、城下の屋敷にてお寛ぎ下され」



_________________________________________________



「殿、お喜び下され!鷹司内府様が文で仰られていた、連歌に強い者を見つけましたぞ」



(ん?あの忠宗がここまで食い気味に言ってくるのは初めてだな。それにしても、あの忠宗にここまで言わしめる男とは…一体どのような男なんだろうか)



「それで、名は何と申す?」



「はっ、されば宗祇なる連歌師に御座いまする」



「それで、その男の何処が最適なのだ?」



「宗祇なる者は、連歌本来のあり方を追求し畿内を中心に多くの武家や公家層から支持されておりまする。そして、古今伝授を行った者の中には近衛様や姉小路様などの名家の当主もおりまする」



「なるほど、我に歌の才は残念ながらないが、配下の者に是非とも古今伝授をさせたいものだな。たとえば、公家出身の者共だな。それで、宗祇とやらは今何処に居るのだ?」



「恐らく、越後国に御座りまする。また、噂によれば次は美濃に向けて旅をするとか」



「越後か…。遠いな。近衛関白様に頼んでこちらに寄って頂く事は出来ぬかな?」



「やってみまするが、期待は少々薄う御座いまするな。ご教授は関白様にお頼みするのが確実かと」



「そうだな、宗祇とは会って話しだけでもしたいものだ」






1501年(文亀元年) 9月上旬 川俣内丸






「この辺で良いだろう。後は、精々自力で足掻いてみせよ」

そう言って黒い服を着た男が俺達を乱雑に地面に叩きつけた。



「くっ、待て!行っちまいやがったか…」



「内丸様、俺達どうしたら良いんでしょうか?」

そう不安そうに言うのは、俺の側仕えである野田四郎だ。



「馬鹿野郎、生き残るしかないだろう。楠十郎に復讐するためにも」



「何が何だか分からないうちに親父は殺されているし、何処か分からない場所まで連れて来られるている…。それに、俺達の見ぐるみ全て剥がされて刀の一本も持ってやいないではないですか」

そう弱音を吐いているのも俺の側仕えである河辺六郎だ。


「全ては、あの愚弟の仕業だ。あいつが居なければ……!」



「とにかく、ここ降りませぬか?内丸様」

そう言って、六郎が今すぐにでもその場を離れる事を促し、四郎もそれに同調するように激しく首を振った。


「っ!そうだな、もう日が落ち掛けている。山で野宿なんぞしていたら夜盗に襲われてしまうが、かと言って銭もない。どうすれば良いんだ?……これは、仕方がないな。ここは下山して村落のある場所まで行こう。そして、その近辺で伏せて夜になったら食料を調達する。それしかなかろう?」



「で、ですが…」

流石に、武士としての自尊心ゆえか夜盗の真似事は出来ないと四郎が遠回しに発言するも…。



「馬鹿野郎、生きるか死ぬかの時に選択肢があると思うな。とにかく、生きるんだ。生きて生きねば自らの父祖の弔い合戦一つ出来ぬぞ」



「そうですな。では、適当な長さと太さの棒切れを持って来ましたゆえ、これをお使い下され」

そう言って、六郎はl全員分の木の枝を渡した



「では、下山するとしようか。山肌には気をつけろよ。至る所に石が点在している。ここで転べば洒落にならぬ怪我をする事を覚悟しておけ」



_________________________________________________



「着いたか…ここが村落か?しかし、明かり一つないとは…まさか空き家か?取り敢えず、畑から食料を手に入れてから考えるとしよう」



「ははっ、承知致しました」「はっ」



「ここは何やら果実を育てているらしいですぞ。何のものかは知りませぬが…」

そう言って、四郎は木に生えている果実を取っては食べを繰り返していた。



「毒とかは入っておらぬだろうな?」

恐る恐るそう聞いた。



「某も食べておりますゆえ、大丈夫に御座りまするぞ!」

六郎も取って食べてを繰り返しながら四郎に同意した。



「なら、俺の食べる分を持って来い。俺は左手にある小屋に人が居らぬか調べてくる。貴様らも、取り終わり次第後に続け」



「ははっ、それにしても美味しいな」「そうだな」



(ったく、こんな時に良く食い意地があそこまで張れるな。俺は、緊張の余り全然腹が空かんぞ。全く、少しは奴らの図太さを見習うべきなのだろうか?それにしても、全くと言って良いほど人気が居らぬな。うむ、ここは寝床として最適かもしれぬな)



「どうしましたか、内丸様?」

そう言って、四郎は扉からひょっこり顔出してこちらを伺っていた。



「大丈夫そうだ。こっちに来い」



「おお、これは良い」「思ったより綺麗で御座いまするな」

俺の声で安全が確認されると、そう言って部屋の中を繁々と見回した。



「案外、こういうところに霊とか出るんだろうな」

そう言って、四郎が戯けて見せた。


「ふっ、そんな者居らぬに決まっておろう?第一、どうやって霊だと判断するのだ?まさか、雷が鳴ったとか山火事だとかくらいで霊のせいだ…とは言わぬだろうな?」

そう六郎が、四郎に向かって理詰めをしようとした。



(ふっ、こんな風に俺を心の底から迎え入れてくれたのはこいつらだけだったな。父も母も楠十郎、楠十郎と弟の事ばかり、俺の事など一向に見向きもせん。俺はただ唯一の家族に認められたかった。それだけであった。しかし、それももう叶わぬのだ。なんせ、楠十郎…貴様が俺からその希望を奪ったのだからな。貴様は何時もそうだった。俺が考えた事や、今している事全てを同じ時に始め出して…俺より良い結果を出す。そして、やがては俺が思いつかぬ事をして俺という人間から価値を全て奪ったのだ。価値が奪われた俺に居場所など無かった。少なくとも、家族の中ではな。母は弟に付きっきりで、父は弟の出来の良さを褒めて…俺の事になると話をよく変えようとする。まるで…いや、ほぼ絶対に俺の話が出来ないあるいはそのような状態にあった。それは、弟の出来が良いからだ)



(俺は特段、最初はお前に嫉妬していなかった。何故なら、俺という存在の価値が認められていたからだ。それがどうだ、お前が喋り出す頃には神童だ当家で最も良い武将になるだの言って、決まってもない。知りもしない、もしもの結果に釣られて皆、弟を賞賛しいつしか弟が家の基準となっていった。そして、それが出来ない俺は腫れ物のように扱われるようになっていった。全てはあいつが、生まれてからだ。あいつが生まれなければ俺がこんなに惨めな境遇に置かれるはずがなかろう)



「やはり……」

心の中で幾ら一人語りしても、その傷は癒えない。最早、内丸のソレはその域にまで達していた。



_________________________________________________



「殿…腹が……!」「そ、某も……!」

心の中での独白が無意味に思えて、夜空をぼんやりと眺めているとどこからともなくそんな間の抜けた声が聞こえてきた。どうやら、畑で食べた果実にあたったらしい。


「だから、あれほど聞いたであろう?全く、主人の言い付けを守らぬからそうなるのだぞ」



「面目ない…」「も、申し開きするお言葉が御座いませぬ」



「全く、横になっておれ……。ん?なんだ、音が聞こえる」



ザッ、ザッ…。四方からこの小屋を取り囲むように足音が近付いて来る。それも、複数人。



「おい、起きろ。誰かが近いて_________」



バコン!バキン!バキン!

壁の機能を果たしていた木の板が縦の線を描くように裂ける。その割れ目からは銀色の光の筋が見えた。



(あれは……斧!?)



「ひぃ…!」

四郎と六郎が怯えた様子で後退したが……。



バキン!バコン!バキャ、バキバキバキバキ!

四方の木の壁が脆く崩れ、代わりに高い違いの壁が出現した。



「見いつけた」

そう言って、内丸の目の前にいるソレが三日月のような形に口を歪めて言い放った。ソレの目には、明らかに殺意が宿っていた。



刹那、内丸はソレに殺される事を察知して、近くにあった木の棒を投げつけて正面突破を図った。それはまさに本能的な駆け引きで一瞬の出来事であった。木の棒が一直線でソレの目に刺さったと同時に火事場の馬鹿力で目の前のソレに突っ込んで倒す。そこで、初めてソレの正体が人間である事を悟った。



「うぁぁぁぁぁぁぁ!!!」

突然の来訪者に驚きつつも、脱兎の如くその場の恐怖から逃げた。唯一の仲間を置いて。



「い、嫌だぁぁぁ!!」「助けて、内丸様ぁぁぁあ!!」

バキ、ゴキ、バキバキ



絶叫と共に鈍い音が暗闇に響いた。その日男は信頼という言葉を失った。



_________________________________________________



「ああ、それは身売りを主に行う夜盗じゃよ。夜は気を付けねばならん。食い扶持を失った者が物乞いしているのはまだ良い方じゃ。物乞いすら厳しくなると夜盗になる。そして、夜盗すら食い扶持にならなくなった者が、夜な夜な旅人なんぞを探して売るんじゃよ。まぁ、中には腹が空く余り四肢を斬って食う輩もおるらしいな。噂じゃがな」



「そうなのですか」



「それで、お前さんは見たところいい身なりじゃが…そんなに泥に塗れてどうしたんじゃ?」

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@Akitusima_1547

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