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0-1 星空の下で

 星に願いを、大地に契りを


 間に合った!ぎりぎりセーーフ!


 オンライン飲み会してたら遅れました。ごめんなさい!

 明日も飲み会するから投稿は難しいかも……ゴメンね!今日の投稿で二日分で……良いかな?


 ──────結界表面部に異常あり。

 ──────質量・魔力を感知。

 ──────生命反応を感知。

 ──────使い魔の可能性あり。外部との情報遮断、および離脱への対策として対抗策『投網・不可視の(ケージ)』を実行します。


 †


 カタンカタンと定期的な音が聞こえる。

 車輪がレールの切れ目を通る際の独特な振動音。


 この音と振動は好きだ。

 前世でも列車は好きだった。この世界でも列車に乗れる事は幸福だろう。……しかし、ここまで豪華な部屋は趣味に合わない。いくら富と名声を手に入れても貧乏性は治らない。


「……いーったた」


 変な体勢で寝ていたからか体の節々が痛い。

 ぐあー、と変な声を出しながら大きく伸び。続いて首、肩と順番に体を解していく。


 困ったことに回復系の神秘でもコリは治せない。

 体温の上昇や血行を良くすることは出来るが、前世でも出来た事だ。

 この世界に転生してから50年余り。前世の記憶は曖昧だが、合計で120年くらいは生きているんじゃないだろうか。それだけ生きてても肩こりに悩まされる。いっそのことマッサージ魔法でも開発すべきか?と考えてしまう。健康的な生活を送る事を考えないあたり、人間、何年生きていても大して進歩していないらしい。


 魔術に奇跡、そしてアイテム。この世界には通常の物理現象から乖離した現象を起こす仕組みが幾つかある。

 むしろ、そのような仕組みがある、と言う事がこの世界の常識──────『理』である。

 全ての人はステータスを持つ。レベルが上がる事で様々な恩恵があり、主に身体性能の上昇として現れる。モンスターを殴り殺したら足が速くなる──────こんな風に書くと、おかしな話だ。走り方が変わったりするワケでもないのに早くなる。レベルが上がっても上昇しないステータスも多いので注意しなくてはならない。例えば、物理で殴ってるのに頭が良くなるわけないし、運が良くなるワケでもない。基準が曖昧だが、ルールに───『理』に───文句を言っても始まらない。

 この世界では戦い続ける限り無限に成長することが出来る。老化に抗う神秘もある。寿命を克服した存在だっている。例えば静止衛星軌道にいるわけでもなく自在に空中を浮遊・移動する運上庭園に座す龍族。例えば神から特別な加護を受けることで老化しなくなることもある。それ以外にもステータスを持つ人間以外の生命体である上位の魔獣や聖獣、竜種には寿命が存在しないとされる。


 こんな世界で俺は、俺たちは生きている。

 巨大帝国を支配する皇帝や貴族、元の世界には無かった宗教、無法者たる冒険者。それぞれが生きている──────必死に生きている。

 生まれて生きて、そして死ぬ。

 だが、冥府神に見入られ、女神に逆らって正しい時間の流れに嫌われた自分は、死ぬことも老いることも出来ずに半永久的にこのままなのだろう。


「──────やはり、惜しい事をした」


 未練がましいとは自覚している。

 だから今更あんな夢を見たのだ。


 ウラジミール大公女オリガ。

 あのお姫様ならば、俺の事を──────


 ──────ふと、雪のような白銀の髪が視界の端に移った気がした。


 いや、どんだけ気にしてんだ。

 落ち着け俺。感傷的になり過ぎだ。センチメンタルは似合わんぞ。


 なんとなく空を見上げる。

 ガラス張りの天窓の向こうには月のない夜。満天の星空──────そして、風に舞う襤褸切れ。


 ──────は?


 結界の記録(ログ)を確認。

 曰く──────微弱な生命反応。使い魔と思われる何らかの生命体。


 そして、その襤褸切れは少しづつ移動、前進している。

 四つん這いになり、震える小さな手を伸ばして──────汚れた白銀の髪の毛が視界に入る。


 まさか人間──────しかも子供か!?


 驚いている間にも、子供は手を伸ばし肘をついて、体全体を引きずって前に進む。

 澄んだ青の瞳と目が合う──────


 ──────余計な考えが浮かぶ前に体が動いた。


 空間歪曲の魔術を使って天窓に穴を開ける。

 その下で子供を──────少女を受け止める。


「大丈夫、大丈夫だ。もう震えなくて良い」


 ぽんぽんと腕の中で震える少女の背中を叩く。

 年齢は分からないが、少なくとも10歳より上で15歳より下。大雑把に12,3歳と考えても、その年にしてはかなり軽い。ぱっと見では怪我をしているようには見えないが心配になる。


 ──────精査。

 ほとんど無意識に魔術を発動させていた。

 結果は異常あり。

 魂魄(たましい)に根を張った強力な呪い。しかも複数。解呪は困難。不可能ではないが時間がかかる。

 その起点の内、ほとんどは探れないが、一つだけ場所が明らかなモノがある。これは──────首輪?


「──────ぇ、ぅあ」

「どうした?何か伝えたいのか?」


 力のない掠れた声。

 何かを伝えたいのかもしれないが、言葉にならない。

 とりあえず何か食べさせてあげるべきだろうが、その前に──────


「取り敢えず風呂だな」


 †


 特等席のやたら豪華な浴室。


 汚れたお湯を呑まないように気を付けて、襤褸切れを纏ったままの少女を洗っていく。

 椅子に座らせ、長い白銀の髪と可愛らしい花の(かんばせ)を洗い終わったところで一旦休憩。換気をしたのち、《収納》から取り出したスープを温め、少しずつ食べさせてやる。


「……はぅ」

「少しは落ち着いたか」


 コクコクと小さく頷く少女。

 とにかく消耗が激しい。回復を待つべきだな。


「さて、次は体だな。ほーら、万歳してー」


 少女の体がビクリと震える。


「ぃゃ……やー、です」

「こーら、暴れないの」


 襤褸切れを引っぺがす。

 やせ細った貧相な肢体。

 そして、首につけられた特徴的なデザインの首輪。


「ぁ……ぁあ、ぁ──────」


 顔を真っ赤にして小刻みに震える少女。

 その反応を無視して体を洗っていく。

 悪いが、その手の趣味はない。ワンナイトラブするならば巨乳のねーちゃんが良い。あ、でも銀髪青目は勘弁な。その特徴を持つ女性は汚せない。


「名前を聞いてもいいか?」


 シャワーを止める。

 大人しい少女の体を拭きながら質問をする。


「───」少女は震えながら口を開ける。恐らく名前の頭はオの段。そこまで分かったが直後「───ッ!」凄まじい勢いで口が閉じる。


「言えないか?」


 少女は震える声で「はい」と答える。


「言えない、です。そもそも、分かんないです」

「呪いか?それなら、ちょっと失礼──────」


 少女の首に──────首輪に手を伸ばす。


 呪いの元凶。その一つ。

 名前を、真名(まな)を奪う。ソレは最も効果的な束縛だ。


 真名を奪う事で相手を支配する。

 それは『元の世界』でも信じられている事。

 更に『こちらの世界』ではステータスという概念が存在する。真名を奪われるとステータスが正常に作用しなくなる。真名を奪う事で魂魄の象徴であるステータスを封じることが出来るのだ。


「え───な、何を」


 驚く少女を無視して魔力(MP)を籠める。

 そして意味のある言葉──────神に捧げる祝詞を唱える。


「プルートーン、ハデス。アスクレピオス、ゼウス、ケラウノス。アポロン、キュプクロス。ハーデス、ケラウノス──────今ここにプルートーンの寵児が奉る。

 冥府神ハーデスの権能を此処に。全てのモノには終わりがある。万物の終わりよ、我が手の中にあれ」


 バキン、とナニカが致命的に破綻する音がして首輪にヒビが入る。

 ヒビは加速度的に広がっていき、ある一線を越えると一気に風化していく。


「取り敢えず、呪いの一つは解除した。──────どうだ?」

「分からない、です」

「そうか……」

「分からない……分からないんです」


 同じ事を繰り返す。

 幽鬼のような空っぽの表情で、心の破片を零しながら呟く。


「どうした?」

「分からない。分からないんです。──────何も、何も分からないんです。お父さんもお母さんもお兄さんもお姉さんも、名前も顔も分からないです。でも、大切です。大切なんです。それなのに何も、何も分からないんです」


 涙が枯れた表情。

 全てを諦めた顔。誰にも、特に子供にはその表情はさせたくない。


「──────ステラ」


 とっさに、そんな単語が出た。

 何かを与えたかった。少女の空白を少しでも埋める何かを──────


「ステラ──────お星さまですか?」

「そう、星だ。綺麗だろ。希望とか願いとか目標とか、そういった意味を持つ。だから──────」



「だから──────だから君の名だ。

 ステラ。星を見失った迷子の少女。どうか君がかけがえのない星を見つけられますように。そして、君も誰かの星になりますように」



「ステラ、ステラ──────ステラ」


 自分に言い聞かせるように呟く少女。


「誰かに名前を付けるのは初めてでね……気に入ってくれるなら嬉しいけど、どうだろうか?」

「はい」頬を緩めて「ありがとう。ありがとう、ございます」


 よし、良い顔だ。

 誰かの笑顔を見るためにこれまで生きてきたのだから。


 †


 奪われた真名の代わりとなる新しい名前。

 とっさの事だっとはいえ、心を籠めて名付けられた名前ならば、キチンと作用するはずだ。


 誰かに名前を付ける。その事がこんなに誇らしい事だとは思わなかった。

 本来、誰もが当たり前に与えられるハズの生まれて初めて与えられる宝物。

 どうか幸せであってほしい。こんな風に育ってほしい。これから未知の世界を歩くのだから、今まで経験した中で最も美しい風景を送りたい。そんな風に与えられる無償の愛そのものである至宝の祝福。


 ああ、その祝福を誰かにあげたかったんだ。

 初めの祝福をもらえなかった者からのせめてもの選別として。ただひたすらに幸せであれと願う。


 †


 ──────《収納》。

 闇属性と光属性にそれぞれ存在する神秘。

 物理空間を無視して、文字通り様々な物品を収納することが出来る。


 使わない物でも片っ端から《収納》に突っ込む悪い癖がある俺でも、少女に着せる服は持っていない。

 だからと言って、襤褸切れを着せるわけにはいかないので、適当な布を加工して簡単な貫頭衣を作って着せている。


 髪の毛を乾かし終わった少女──────ステラは俺の膝の上でサンドイッチを食べている。

 サンドイッチを小さくちぎり、少女の口に運ぶ。そうしてやると小鳥のような小さな口を精一杯に開けて頬張ろうとする。とても可愛らしい。


 そんな最中、ポーン、と突然聞こえるコール音。


『──────失礼します。本列車の車掌でございます』


 ステラの肩が大きく震える。

 耳に口を寄せて「大丈夫だ」と囁く。


「──────なんだ?」

『少々、お尋ねしたい事がありますので、入ってもよろしいでしょうか』

「構わない。入ってくれ」


 パシュッ、と空気圧が抜ける音がして扉が開く。

 特等室に入ってくる男。

 彼らが、俺の膝の上に座っているステラを認識する。


「失礼します。本日、無賃乗車をした者がいた、との事で捜索をしているのですが──────」

「──────いくらだ?」

「──────は?」

「少女1人を特等席に乗せるのに必要な代金はいくらだ、と聞いている」


 幸いなことに、貴族にして出資者にして技術提供者の長。

 単なる無賃乗車なら乗車賃と僅かな手間賃さえ払えば円満に収まる。

 列車内の事ならば、影響力で何とでもなるだが、ステラは首輪をしていた。

 先ほど壊した首輪は奴隷契約に関する首輪だ。列車外の利権・法令に関わる以上、一筋縄ではいかないだろう。

 交渉の腕の見せ所だ。まぁ、交渉と言っても危害さえ加えなければ何をしても良いワケだが。


「ですが、探している少女を連れてこい、との通達でして」

「こんな少女をか?」ステラの頭を撫でる「誰が探しているんだ?」

「いや、匿名との事でして──────」

「そうか。例え、探しているのが親であっても、こんなに必死になるまで逃げるような環境にいたんだったら保護者失格だろう」

「で、ですが──────」

「血は水より濃いと言うが、本来当たり前のはずの台詞をわざわざ使う時は大抵、皿一杯のスープよりは薄い──────なんてな」


 口を噤む車掌。

 改めてだが、列車に関する利権はプルートーン財団が所有している。

 この場では全く関係ないけどね。やろうと思ったら強硬手段に出る事も出来るのだから。

 まぁ、やったらどうなるか分からないが。


「それに、奴隷契約でもされていない限り、個人の意思によって所属は決められるハズだが?」

「そ……そうですね」

「だろ?しかも、奴隷には奴隷契約の首輪が必ずつけられている。でも、この少女は首輪なんてしていないだろう?」


 ステラの首を見せる。

 そこにあるのは白い柔肌のみ。首輪は影も形もない。


「ほら、ないだろ。奴隷契約の首輪を壊すのは帝国憲法違反だし、仮に壊したら呪われるからなぁ……そんなことをする奴はいないだろう──────なぁ」


 同意を促す。

 まさかいないよねー、そうだよねー。

 さっきのは俺が触ったら、偶然、耐久年数が限界に達したから勝手に壊れたんだよ。他意はないよ。

 ガクガクとひたすら首を上下させる車掌。


「というワケで、この少女は俺に任せてくれ。いいだろ?」

「は、はい。それで、構いません」

「まぁ、プルートーン財団の保護下兼、プルートーン男爵の客人だから、邪魔するなら覚悟してよね」

「ま、まさか……テラ様に逆らおうなどと」

「それなら良かった。向こうには見つからないって言っといて。もし追及されたら俺に脅迫されたって言えば良いから」

「お気遣い、感謝します」


 よし、言質取った。


「悪いね──────俺としても心苦しいんだけど、依頼主を守るのは冒険者の義務だからさ」

「依頼、ですか」

「そう依頼、この子の願いを叶えたい」


 戸惑ったように俺とステラを交互に見る車掌。

 ステラも驚いている。これは勝手な判断だ。口約束ですらない。


「その少女が依頼、ですか」

「そう、依頼だ。しかも報酬は既にもらっている」


 目を剥いて驚く車掌。

 まぁ、身なりを考えれば妥当な反応だろう。

 ステラは可哀そうな程混乱している。


「報酬は──────少女の笑顔だ」


 固まる車内。

 今の自分は最高にイイ顔をしている事だろう。


 車掌が噴き出すまで10秒ほど。


「オイオイ笑うなよ。いいだろ、こんな報酬があっても。別に金に困ってないんだから」

「そうですな。一生に一度くらいは言ってみたいですな。しかし、少女の笑顔……」

「だから笑うなよな」


 男二人で笑いあう。


「えっと、テラ──────お兄さん」

「オジサンで良いよ。いっその事、くそジジイでも良いよ」

「いえ、えっと……その。良いんですか?」

「何が?」

「だから、私の事を助けてくれるって」

「おいおい、しっかりしてくれよ。()()()()()()()()()()()()()()()って約束しただろ?」


 そうだろ、と問う。

 ステラは信じられない、という風に俺と車掌の顔を交互に見る。

 正面の車掌は優しい表情をしている。

 ステラを抱きかかえている俺は──────どんな表情をしているのだろうか?

 ただ、ステラの目に涙が溜まっていく。


「良いんですか?」

「いいに決まってる。そもそも、俺から言い出したんだろう?」

「本当に……本当に、良いん…です、か」


 嗚咽が混ざり、詰まりながら何度も何度も聞いてくるステラ。

 ステラを抱きしめ、頭を優しく撫でる。綺麗な髪の毛。良い撫で心地だ。


「早めに泣き止めよ」

「はい──────泣きません」


 無理に泣くのを止めたしかめっ面。

 涙を拭い、呼吸を整える。


「ステラ?」

「私は泣きません──────だって」



「だって──────私が泣かないで頑張れば、泣くはずだった誰かが泣かないですみますから」



「そうじゃねぇよバカヤロウ」

「──────ふぇ?」


 強く、強く抱きしめる。


「俺が言ったのは泣くのを我慢しろって意味じゃねぇ、さんざん泣いてスッキリしろって意味だ。泣くのを我慢して後に引きずるなって事だよ。

 それに、泣かないで頑張る、じゃねぇよ。そうなる前に誰かに頼れ。まずはそこからだろうが。一人で抱え込んで我慢するのが一番良くない」


 この子は、ステラはどんな経験をしてきたんだ。


「だから、ワンワンビービーギャンギャン泣いて、スッキリしたら泣き止んで、飛びっきりの笑顔を見せてくれ。

 雨の後の花とか虹みたいな飛びっきりのヤツを見せてくれ。

 その為ならば、雨を受け止める地面にだって、雨を輝かせる太陽にだってなってやる」


 子供を泣かせたいわけじゃない。でも、泣くのを我慢させるのはもっと悪い。

 勝手な考えではあるんだが、子供には子供らしくして欲しいと思う。

 押し付けるべきではない事は分かっている。でも、こんな歳の少女があんな理由で泣くのを我慢するのは間違っていると思う。


 それに、泣いている少女を笑顔にする以上のカッコイイ事はあるまい。

 冒険者たるもの、常にカッコ良くなくてはいけない。

 女の子を泣かせて良いのは別れの時だけだ。

 ましてや英雄テラ=プルートーンは自他共に認める最高の冒険者だ。

 その看板を背負う者が保身に走りみっともない姿を見せたらどうなるのか。

 なに、衣食住に困るような稼ぎはしていないし、稼がなくても貯蓄だけで遊んで暮らせる。いざとなったら亡命しても良い。

 そんな気楽な身の上。しかも公権力に逆らってナンボの身分。命よりも名声を望むように生きることに何の戸惑いがあろうか。


「良いんですか?」

「良いんだよ。我慢するな。むしろ、もっと欲張っちまえよ」

「でも、でも……だって」


 ステラがせき止めていた感情があふれ出す。

 流れ星のような涙の一粒は、いつしか天の川のように。


「オジサンに任せてくれ。君が奪われたモノの全てを奪い返す」

「はい……はい!お願いです。私は、私は……」

「むしろ、もっと欲張ってしまおう。呪いをかけた連中を全員引き釣り出して『呪いをかけてくれてありがとう』って言えるくらいの大切なモノを作ってやろう。それで、君の家族に再開したら、その思い出を笑顔で話すんだ。素敵だろう?」


 声は返ってこない。

 伝えたい事がある、でもしゃくりあげてしまい声にならない。


 言葉が出ない時は無理に言葉にしなくても良い。

 抱きしめたまま、ポンポンとあやすように頭を叩く。



「だからさ、ステラ──────一緒に旅をしよう。見た事のないような、素敵なモノを一緒に見に行こう」



 弾かれたようにコチラをみるステラ。

「はい──────」と、笑う。泣きながら笑う。


「おお、不細工な笑顔だな」


 ワシワシと髪の毛をやや乱暴に撫でる。


「不細工だけど、さっきのしかめっ面より何百倍も美人さんだ」


 †


「それではテラ様、失礼いたします」

「あれ、運賃は?」

「さきほど頂きましたよ。私も素晴らしいモノを見れたので」

「おお、カッコイイな」

「貴方ほどでは──────ああそうだ、誠実な冒険者殿。どうやら依頼主の護衛に必要な物を持っていないようですな。それでは困る事でしょう。よろしければ、乗客の中から服飾系の乗客がいないか探してまいりましょうか?」

「ありがとう。正直助かる」

「それでは──────」



「──────良い旅を」


 二話『星空の下で』でした。

 引越しをしました。夜空がきれいになりました。

 文化レベルは一部例外を除き、中世ヨーロッパの『異世界』。星空はきれいなんだろうなぁ。

 ──────星に願いを、大地に契りを。


 ここまで読んでいただき、誠にありがとうございます。


 折角なので用語解説。

神秘の属性について。

 光属性と闇属性以外には6つの属性があります。

 熱(赤)氷(紫)水(青)土(緑)炎(橙)。

 上の6つは色と関係しており、その属性の神秘を行使するときは属性の色の魔力となります。

 また、個人的な使いやすさとも関係しています。何らかの要因で特定の属性に偏った場合、正六角形を作った時に近いものほど習熟度が上がりやすくなります。

 また、闇属性(黒)には土属性が最も近く、光属性(白)には熱属性が最も近いです。

 属性ごとのイメージなどもありますが、ここでは割愛します。


 これからもよろしくお願いいたします。

 感想・評価・お気に入り登録など、お待ちしています。

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