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0-0 ユメが交わるまで

 霊峰の処女雪。その白銀。

 最下層の泥濘。その漆黒。


 お久しぶり。または初めまして。


 新社会人になると同時に一人暮らしが始まりました。

 いろいろ厳しいですが頑張ろうと思います。


 ゴールデンウイーク中は連日投稿したいです。


 よろしくお願いいたします。


 この世界で列車が誕生してから10年と経っていない。

 新しい技術を嫌う人も多いが、積極的に受け入れる人々の手で次々と敷設されていき、今では列車で『帝国』を横断できるようになった。


 新月の夜。星明りの下──────。

 今夜も列車は闇を裂いて、無人の荒野を進む。


 長距離移動列車の最後尾。

 車両を一つ使った豪奢な特等室。

 もちろん代金は高い。そのため金銭的に余裕があり、新しいモノに抵抗のない"物好きな貴族"

や勢いのある大商人が商談のために使ったりする。ちなみに、使われない時は連結を外して車庫に停めておくらしい。

 今この部屋を使っている男にとっては、生活に必要な要素を機能的に詰め込んだ一等室の方が好みではあるのだが、外国での長旅の疲れの癒えぬまま緊急帰国した彼を心配してくれた友人たちの好意を断れなかった。

 豪華な風呂やトイレが備え付けてあるが、別に共用で構わないだろう。湿気や臭いの処理が大変そうだ。天蓋付きのベッドは掃除の手間がかかりそうだし、ガラス張りの天井は日中は暑いし夜は寒いだろう。それぞれ対策は立てられているが、身分や金銭に纏わる厚遇を嫌い、気ままな一人旅を好む男は身の回りには必要最低限のモノしか置きたがらない性質だった。


 部屋を使っているのは一人の男。

 ソファーにだらしなく体を預け、瞳を閉じている。

 外見は30代半ばほど。もしかしたら20代かも知れない。

 黒の髪は少し長め。肌の色はかなり薄い。光源が星明りのみの部屋のせいか、それとも長旅の疲れのせいか、病的と言えるほどに青白く見える。痩せた長身と相成って、まるで墓場から蘇ったかのような独特な不気味さがある。正体は吸血鬼だ、と言ったら信じる人の方が多そうだ。


 ソファーの前の机には万年筆とインク壺、纏められた書類の束。

 コーヒーメイカーの中身は空。カップには冷えたコーヒーが僅かに残っている。

 先ほどまで書類に目を通し必要な指示を送っていた男は、ガラス張りの天井越しに月のない満天の星空を眺めていた。


 男はユメを見る。

 三年前の冬。後悔の過去(ユメ)を──────


 †


「──────俺は反対する」


 静まり返る会議室。

 十数人が座っている長机の最も下座で立ち上がる自分。

 贅を凝らした会議室は『帝国』の運営を担う十数人の上位貴族とそれぞれの従者が入っても十分以上なスペースがあるだけに静寂が痛い。


 静寂に耐えかねたのか、小声で話し始める上座の貴族連中。

 曰く──────成り上がり、平民風情、冒険者気質が抜けない反乱分子。

 思わず頬が吊り上がる。


 左後ろに控えているシャーロン───伝説のエルフを思わせる金髪碧眼の女性───が足を踏み出す気配を感じたので僅かに振り向き、左手で制する。

 シャーロンは出鼻をくじかれ鼻白み──────俺の頬が歪んでいることに気が付いた。

 彼女は一瞬、呆気にとられた後、俺の真意を掴み、微笑んだ。


 ──────だって、可笑しくて堪らないのだから。


 賛辞をありがとう無能貴族たち。

 自分が最低位の爵位を得るのに、冒険者となってからの5年を費やした。

 貴族と認められる爵位を手にするまで更に5年。そして、そこから更に5年で重大な会議に呼ばれるように成り上がった。その15年でアンタらは何をしていたんだ?


「──────静粛に」


 鶴の一声。

 長机の上座に座っていた、この部屋における権力者の内、唯一の女性が雑言を制す。

 その少女は帝国において唯一の女性権力者であり、同等の以上の権力者の中で最も若い。

 従者を連れていなかったのは彼女だけ。無駄を省く性質なのか、服装は材質を考慮しなければ自分以上にシンプルだ。


「無礼をお許しくださいプルートーン卿」

「いや、こちらこそ。先に礼を失したのはこちらだ。貴女がわざわざ謝罪する必要はない」



 ──────現軍務卿、ウラジミール大公女オリガ。


 オリガ=アルヴァノティック=ルクス=ウラジーミル。

 才女。女傑。女軍務卿。鉄の女。または、氷の女。未来の女宰相。

 ウラジミール大公の第二子にして長女。皇太子テレイオスの婚約者タチアナの姉。

 現在21歳。17歳の時、妹が皇太子の婚約者となり宮殿入りした際に、妹の世話と補佐をする、という理由で共に宮殿入り。その後は本人の実力で19歳という異様な若さで軍務卿に任命されるなど多くの地位を得た。


 軍務卿を担うだけあり、体はしっかりとしている。

 女性にしては恵まれた長身に、細身だが女性的な魅力の下には鍛えられた筋肉が撃鉄の瞬間を待っている。

 噂だが、軍の中で単体戦闘能力が最も高いらしく、任命当初に女だからと舐めてかかる連中を神秘───()()()()()()()()()の総称。超常の力───なしの力ずくで屈服させて従わせたとか。


 軍を担うというイメージに反し、その容姿はとても美しい。

 処女雪のような肌と月光を閉じ込めたような銀の長髪、蒼穹を思い起こさせる青の瞳をしている。

 その容姿は皇太子を射止めた妹のタチアナと似ているが、タチアナの方が愛嬌があり宮殿内での評価は高い。

 表情をあまり見せない冷たい美貌に、強大な()()に由来する女神を思わせるような超越的な王質(カリスマ)が合わさり、人を寄せ付けない類の美しさとなっている。


 他人を寄せ付けないような性質に反し、身内や部下からは非常に慕われている。

 彼女に心酔する部下曰く───演習結果を聞いて誇らしげに、そして嬉しそうに微笑む彼女の姿は美しかった。戦女神、あるいは勝利の女神と言うのだろうか───とのこと。

 家柄、才覚、容姿、王質(カリスマ)、加護──────生まれながらに多くの素質を持つ存在。

 ──────()()()()()()()()()()()()()()という特例以外の何も持たなかった自分と正反対の存在だ。



「オリガ様、俺が───失礼、私が反対をする理由を説明する前に、質問することをお許しいただきたい」

「構いません。それと、私ではなく俺で構いません。プルートーン卿───いえ、テラ様。貴方は無理に取り繕わない方が貴方らしい」

「ありがとう、()()()。それじゃぁ質問だ──────」


 喚く外野を無視。

 何もしない、そもそも何も出来ないメンツだ。


 本来、この場にいるのは俺と正反対の存在。

 始めから多くを持っている連中ばかり。

 だからこそ、問わなくてはならない──────


「俺に──────いや、俺たちに何をさせたい?」


 †


()()()に何をさせたい?」


 黒衣の青年と対峙する。

 肌の色が極端に薄い痩身の男。

 外見は20台後半。正確な年齢は不明だが少なくとも45歳以上である事は確かだ。


 『俺』ではなく『俺たち』としている時点で『目的を知っている』と白状している。

 この場でハッキリとさせたい、ということか。



 プルートーン財団創設者テラ。

 テラ=デフェクトス=プルートーン。

 英雄。平民貴族。冒険男爵。冒険者の王。冒険者の身分から貴族になった男。

 この男が冒険者になったのが15年前。そして僅か2年で最高位である10階梯に上り詰めた。

 匿名の上位貴族からの推薦と承認を得て、世襲できない最下位の爵位である準騎士を購入したのが10年前。この頃、プルートーン財団を発足した。


 プルートーン財団──────冒険者と()()()を集めた組織。

 目的は冒険者と来訪者の支援。そして食料の大量生産や孤児院の運営などの慈善事業。

 ()()()が高くなる傾向のある引退した冒険者と異世界の知識を持つ来訪者。それに加えて冒険者としての名声と膨大な資金。それら全てを総動員した組織。


 治める領地は迷宮都市プルートーンと呼ばれている都市一つ。

 本来ならば、騎士や準騎士が領主となって治める規模である。

 それにもかかわらず男爵の地位を得ているのは、寂れた町を彼が重要拠点に育て上げた事もあるが、彼が男爵の地位にふさわしい影響力を持つからだ。


 経済制裁のみで公爵すら没落させる経済力。

 武装カルト教団を正面から鎮圧する軍事力。

 冒険者ギルドとの協力関係による動員人数。

 ()()()()()()を元に培った群を抜く技術力。

 ──────これがプルートーン財団。まぁ、これだけではないのだろうが。



 ちらり、と彼の右後ろに立つ女性を見る。


 テラの隣にいる女性──────シャーロン。

 白磁の肌と新緑の瞳、黄金を溶かした長髪。

 その正体は伝承上の存在エルフ──────そう言ったら信じる人が多そうだ。


 プルートーン財団の全権代理人が彼女だ。

 テラから財団の長に任命されたのが5年前。その立場から注目を集めたが、出自を洗ってみても全く出てこない。

 そして、政治的圧力には一切屈しない。

 私は預かっただけですから、と()()()()()()()()取引には一切に応じなかった。

 それを面白く思わなかった権力者たちが暗殺計画を幾つも立て、その内いくつかが決行されたが、全て返り討ちにし、素性を洗い出して表に出した。

 まぁ、彼らが失脚したおかげで私が簡単に上に登れたのだが。


 彼女と個人的に会う事は簡単だし、お茶に誘えば世間話くらいは出来る。

 放していて退屈はしない。彼女が知っている事は私たちの知らない事だ。反対に、彼女は私たちが知っている事を知らなかったりする。


 後は、金属が嫌いな事。

 草木や石、革などの自然のモノが好きな事。中でも植物の事にはとても詳しく、精神を整えるハーブや解毒に使える薬草などを教えてくれた。

 手先が器用で、黒曜石のナイフで木片を削って瞬く間にペンダントを作ってくれた。弓の技量が群を抜いているが、魔術も得意な事。特に光属性と土属性に非常に長けている。樹木を自在に制御する事さえできる。それから──────おっと、話がそれた。



 おそらく、彼女はこの世界の人間ではないのだろう。

 そして、彼女のような存在がプルートーン財団には大勢いるのだろう。

 彼らが帝国に対して刃を剥けるようなことが起きたらどうなるのだろうか──────


 彼女から目線を逸らす。


 周りの貴族は沈黙する私たちの挙動を我関せずとばかりに傍観している。

 私に押し付けたいのだろう。


 この会議の結論は予め決まっている。

 それはプルートーン財団に強権を強いるものだ。

 彼らからの反発は全て私が背負わなくてはならない。


 ──────この部屋に味方はいない。


 瞑目し色々な事を諦める。

 そして、正面に向き直り──────


 ──────あ。


 正面に味方がいた。


 絶望の光を打ち砕く闇。

 眠れぬ夜をかき消す安寧の夜。


 彼は──────英雄テラ=プルートーンは何時かの思い出のまま、目の前にいた。


 しっかりしろよ、そんな風に励まされた──────ような気がした。


 息を吸い込む。

 体に力を入れる。

 立ち向かえ──────あの日の英雄に立ち向かえ。


 あの日の私のままではない事を、彼に示さなくてはならない。



「テラ様、貴方には──────あなた方プルートーン財団には、今春に()()()()()()()()()()方の生活の支援をしていただきたいのです」


 ──────勇者召喚の儀。

 予言に従い、我らが『帝国』で定期的に行われる──────という名目の皇太子の拍付け。


 この世界には来訪者と呼ばれる人物がいる。

 彼らは、無数に存在する平行世界の内、ニホンと呼ばれる国家から招かれるらしい。

 来訪者には種類があり、こちらの世界にやってくる方法で転生者(リバース)被召喚者(アンサモナー)。そして漂流者(ドリフター)と三種類に分けられる。


 転生者(リバース)はニホンで死亡したニホン人が、この世界に再び生を受ける形で『来訪』する場合を指す。

 この場合、記憶がどれくらい残っているかについては個人差があるとされ、自身が転生者(リバース)だと自覚がないままに生を終える場合もある、とされる。


 被召喚者(サモンド)漂流者(ドリフター)はニホンで生活している人物が、生きている間に『来訪』しててくる場合だ。

 被召喚者(サモンド)漂流者(ドリフター)の違いは、『来訪』が意図的か意図的ではないか、の違いがある。


 意図的に『来訪』させる被召喚者(サモンド)は、召喚する際、いくつかの『恩恵』を持った状態で召喚させる。

 半ば自動的に言語を翻訳する()()()。恵まれた()()()()()と平行世界で信仰されている(もしくは信仰されていた)神の加護。


 反して、何かの偶然で突発的に『来訪』してしまう場合もある。

 これが漂流者(ドリフター)。このケースに該当する場合は、言葉が通じない状態で、特別な力もなく孤独な世界に一人で放り出されることになる。


 そして、勇者召喚の儀で呼び出す勇者は被召喚者(サモンド)に該当する。

 平行世界の知啓に加え、強大な加護とステータスを持つ存在。

 彼らを戦略として活用することで『帝国』は統一を成し遂げた。


 今までの慣習では一度に召喚する勇者の数は多くても5人。

 だが、今回は数十人の勇者を召喚する手筈となっている。


 普段よりも多くの勇者を召喚するに当たり、宮殿内で勇者が生活する際の問題点が浮き彫りになったのだ。

 そこで、多くの来訪者を抱えるプルートーン財団に白羽の矢が立った。

 また財団創設者であるテラ自身も転生者である、という報告が上がっている。

 ここで、彼からの協力を得ることが出来れば、何の憂いもなく勇者召喚が出来る。


「──────貴族(お前ら)でやれ」


 即答だった。

 ごく当たり前で、かつ分かり切った答えだった。


 プルートーン財団が保護・援助するのは弱者。

 優れたステータスと加護を持つ勇者は、彼が──────彼らが救うべき弱者ではない。


「なんだと気様!」「勇者に謁見するという栄誉を拒むというのか!」「そうだ!貧民街の痩せ犬風情が!」「お前たちは素直に尾を振り、首を垂れていればいいのだ!」


 壮絶な笑み。

 騒ぎ立てる彼らには見えないのだろうか。


「まぁまぁ、そう慌てずに──────」


 そんな中、一人の中年男性───この部屋の人物の中では比較的若手───が制止する。

 彼は宰相アウトリュコスの派閥に属する高官。

 先代が亡くなったばかりなので、この会議に参加するようになって日が浅い。

 それ故に気付いたのかもしれない。この会議の構図に。

 もうすでに、我々がテラ=プルートーンを抑えきれないことを。


「──────きっと彼は言い間違えただけでしょう。会議の場に慣れていなくて口が回らなかったのでしょう。さぁ、もう一度回答の機会を上げましょう。──────泥炭に塗れた罪人窟の長よ」


 会議室に思わず、といった失笑がもれる。

 笑い声をもらす数人以外からは諦めの気配。

 彼の派閥の長、宰相アウトリュコスの顔が強ばっている。これ以降、彼の活躍の目はないだろう。

 まぁ、命運すら尽きようとしているのだが。


 彼は虎の尾を踏んだ。

 進んで泥を被った訳ではないだろう。手柄を焦ったのだ。印象付けしたかったのだ。

 そうでなければ──────きっと会議の場に慣れていなくて口が回らなかったのだろう。


「──────少し、黙れ」


 漆黒の颶風。

 吹き荒れる闇属性の魔力。

 その圧力に押され、この場に集まった人が一斉に口を噤む


「プライドで飯は食えない、と言うが毒の入った飯を食う奴はいない」


 魔力投射。

 読んで字のごとく、魔力(MP)を放出する。

 神秘を全く含んでいないが、強い感情を乗せることで精神的なダメージを与えることが出来る。


「税金を集めるだけの無能には分からんだろうが、貧民街の痩せ犬にも、ちっぽけなプライドがある。泥に埋もれた死にかけの餓鬼にも一片の覚悟がある。その誇りと覚悟を捨てて得られるのが毒の入った飯。そんなのに誰が従うか」


 ここで込められているのは怒気。

 圧倒的なステータスから放たれる魔力投射に精神(MND)の値が低い者から気を失っていく。

 強い害意を以て当てられる闇属性の魔力には魂魄を侵し、物質・肉体方向に堕落させる作用がある。

 本来ならば、ここまで急速に作用することはないのだが、使い手のレベルと技量が高すぎる。テラは使い手の少ない闇属性の専門家。最優の冒険者の名声高い彼以上の闇属性の神秘の使い手はいないだろう。


「──────テラ様」


 腰に佩いていたサーベルを抜刀し、金雷を帯びた純白の斬撃を放つ。

 闇を切り裂く光属性の魔力が、テラが放出している漆黒の颶風を切り裂く。


「テラ様、お気持ちは分かりますが、少し抑えていただけるとありがたい」

 

 同じく魔力投射。

 強い感情を込めた光属性の魔力は魂魄を癒し、精神・霊的に昇華させる。

 ヤジを飛ばしていた連中が倒れるのは自業自得だが、その従者にまで被害が及ぶのはいただけない。


「抑える、ねぇ……」


 呆れたような声。

 気が付けば、示方性なしに吹き荒れていた暴風は収まっていた。


 テラは部屋を見渡し「──────フン」長机を蹴り飛ばす。文字通り蹴って飛ばす。

 天井に刺さる机。先ほどまで机に突っ伏していた者は、上体を勢いよく跳ね上げられてひっくり返る。


 轟音と衝撃はすぐに収まり、破片や砂煙は二人には掛からない。

 静寂が支配する部屋の中、靴音を響かせて近づいてくる。


「姫さんも大変だな、こんな連中の後始末をさせられて」


 砕けた口調。

 先ほどのようなヤジはない。

 余計な事を言う連中は軒並み気を失っている。


「それが、私の役目ですから」


 私の返答に口の端を歪めるテラ。


「あの時のお姫様が、ずいぶん立派になったもんだ」

「貴方こそ、随分と感情を出すようになりましたね」


「結構、努力したんだよ」テラの表情が苦笑いに変わる「答え合わせしても良いか?」


 どうぞ、と促す。


「勇者を大勢喚ぶ事が出来れば、来訪者を大勢に抱えるプルートーン財団の強みを打ち消すことが出来る。ついでに勇者と揉め事の一つでも起こしてもらえれば万々歳──────違うか?」


「大正解です」

「清々しい顔すんなよな……」


 呆れた顔。

 そんな顔をされるのも仕方ない。

 だが、それでも──────


「そこまで理解していただいた上で、我々に協力していただけませんか」


 それでも、後に引くことは出来ない。


「そこまで理解して、か」深いため息「お姫さま、『帝国』が呼び出された勇者を使い潰してきた過去を知った上で協力を頼んでいるのか」


「ええ、そうです。私には守らなくてはならないものがある。その為に犠牲を強いる──────その覚悟は既に出来ています」


 視線を強く。真っすぐに見返す。


「本当に立派になったモンだ」


 眩しいモノを見るかのように目を細めるテラ。

 一瞬目を閉じ「だがな」と切り出す。


「水よりも血よりも濃い、ただ一杯のスープで繋がったのがプルートーン財団だ。

 俺たちは同胞を歓迎するが、同胞が増えることを望まない」


 誰かを切り捨てる覚悟がある私。

 切り捨てられた人を救いたい彼。


 立場は平行線。決して交わることはないだろう。


「悪いな姫さん。俺は貴族としての立場より、プルートーン財団の創設者としての立場を優先するよ」


 柔らかな口調だが、決定的な否定の言葉だった。


「そう、ですか。非常に残念です───」「まだ終わってないぞ」「───え」


 諦めようとしていた私を引き留める声。


「俺は貴族としての立場より、プルートーン財団の理念を守る」


 まるで歌うように。

 これがテラ=デフェクトス=プルートーンの誇り。


「だが──────()()()()?」


 問いかけ。

 私にしか分からない、在りし日の約束。


「貴方は──────」



 ──────俺は怪物だ。貴方に名乗れるような者ではない。

 ──────いいえ、貴方は──────



「貴方は──────英雄です」


 英雄テラ=プルートーン。

 人を憎み世界を滅ぼす悪龍を単身で滅殺した最強の英雄。

 安寧の夜と救済の死を守る。闇の底からやって来た不死身の英雄。

 絶望の未来を視て泣いてばかりだった私を救い出した、光を覆い奪う英雄。


「そうだ、俺は『英雄』だ」


 笑う。誇らしげに笑う。


「さて美しい姫君よ。英雄テラ=プルートーンに出来ることはありますかな?」


 そう言って跪き、上目遣いで私と目を合わせる。そして、手を伸ばされる。


 もし手を取れば、私の事を拐ってしまうのかもしれない。

 そして、彼は私に手をとって欲しがっている。


 ──────ずるい。

 そんな顔をしないでほしい。


 貴方と会いたかった。

 だからここまで頑張った。


 でも、だからこそ──────


「いいえ、英雄としての貴方の助けを必要とはしません」


 テラが口を大きく歪める。

 まるで、大地に突然開いた裂け目のように──────


 貴方と同じ世界を見たかった。

 だからこそ、英雄としての貴方に助けられているだけの『お姫様』でいるわけにはいかないのだ。


「そうかい。それじゃぁ、ここまでだな」

「ええ、仕方ありませんね」


 離別は決定的になった。

 だが、寂寥感はない。清々しさすらあった。


「貴方とは敵対したくなかったのですが、敵になってしまったからには全力でお相手しましょう」


 サーベルの切っ先を向ける。

 これは覚悟と決別──────そして宣戦布告だ。


 生まれながらの貴族と貴族を打ち滅ぼす平民の──────冒険者の王。

 私たちは共に成り上がり。されど守るべきモノが真逆な以上、決裂は免れない。


「折角なら、貴方と大一番の戦いをしたい」


 ワタシはアナタと違う。アナタはワタシと違う。

 ただ、それだけの事。ことさら悲しむ事ではない。


「私の軍刀(サーベル)で首を跳ねたい、弓矢で眉間を貫きたい」


 だからこそ、分かれの宣言は鮮烈に。

 戦うしか方法がないのならば、私の手で貴方を殺したい。そした、貴方の手で殺されたい。


「そして、貴方の持つ漆黒の二叉槍(バイデント)で私を穿ってはしいものです」


 悪龍を打ち滅ぼした二叉槍(バイデント)

 その武器で私を殺してほしい。私を変えた武器で終われるならば本望だ。


 男は立ち上がる。

 少し俯きがちで、少し長めの髪の陰に隠れて表情はいま一つ分からない。



「ん?黒くて立派な俺の槍で貫いてほしいって?」



 張り詰めた空気が雲散霧消する。

 何というか色々と台無しだった。


「そんな事は言っていませんよ」


 思わず弛んだ表情で応じる。


「悪いなお姫様、シリアスに耐えられなくてな」


 ──────ああ、こんな顔を出来るようになったのか。


 真剣な話の最中に軽口を挟む。

 下らない冗談を共に笑いあう。

 14年前、かつての私が欲しかったもの。あれから、無力だった自分を変えるために努力を続けてきた。その報酬ならば悪くない。


「ああ、良いよ。世界を二つに分けて、世界の行く末を掛けた大一番をしよう」


 そして、そのままの口調で宣言される。

 まるで明日の予定を相談するみたいだ。


 闇夜と目が合う。

 光を呑む安寧の暗闇。


 本来、未来は闇だ。見えないし分からない。

 未来を視る事は、無明の闇を閃光で照らすことを意味する。

 例え、未来に絶望しか待っていない事が分かっても否定する事など出来ないのだ。


 だが、英雄がいた。

 確定した未来という絶望の光を打ち砕く、闇の英雄が──────。


「さらばだ白雪と蒼窮の姫よ」

「ええ、さようなら闇の英雄」


 テラは名残惜しさを見せずに背を向け、会議室から立ち去っていく。

 側に控えていたシャーロンは、私に一礼し、テラに続いて退出する。


 立場。地位。責任。多くの枷を引きちぎり、英雄は去っていく。


 ──────これでいいのだ。


 過去との決別。

 彼には彼の物語がある。私だけの英雄ではないのだ。


 †


「──────そろそろ出て来てもいいのではありませんか?」

「おや、バレていたのかい?義姉上(あねうえ)殿」

「オリガで構いませんよテレイオス様。それとタチアナもです」

「姉さまごめんなさい」


 会議室の奥にある隠し部屋。

 皇太子テレイオスと婚約者タチアナ──────私の妹。


 未来への確約。

 私には私の物語がある。私が守るべきモノが待っているのだ。


 英雄の隣で、同じ世界を見たいと思った幼い私を置き去りにして、今の私は英雄と刃を向けあう事を選ぶ。


 決意を固めた瞬間、ソレが来た。


『──────大公女タチアナ、お前を国家反逆の罪で処断する!』

『──────ほう、殺すかね。ならば私がもらっていこう!時に失われる宝を集めるは竜王の務めならば!』


 ──────雑音。


『──────アイツの代わりが必要なのよ。明確な悪役ってヤツがね』

『──────私だけで満足してほしいものです』


 ──────幻視。


 ボロをまとった子供がいた。

 子供は吹き荒れる風の中、定期的に振動する床を四つん這いで進んでいた。

 一秒後の生すら危ぶまれる状況で、子供は必死に進んでいた。何が彼女を駆り立てるのかは分からない。


 ──────幻覚。


 風が強い。耳が切れるように痛い、寒くて堪らない。

 だが進む。とにかく進む。──────落ちる。

 突然、足元に穴が開いた。

 上下すら分からなくなる。


 ダレカに受け止められる。

 顔は分からない。でも安心する。

『──────。──────』

 穏やかな口調で『彼』が『私』に話しかける。


 だが、ダレカに受け止められた時から──────いや、『彼』を認識した時からノイズが激しくなる。

 本にシミが広がる様に、視ている『世界』ごと黒く侵食していく。不確定という闇に呑まれていく。

 瞬く間に床の大半が黒く染まり、決定的な破綻が起きる。


 落ちる。落ちていく。

 最後の時まで、私は彼にしがみついていた。


 ──────覚醒。


 全能感と無力感。耳鳴りと立ち眩み。

 励起した加護。強制的に消費される魔力(MP)


 ──────未来視。


 創世神話に登場する女神、雷光と幻視を司る瞬光神トキミヤミナズキ。

 光と時間を司る両天秤たる双子の光女神の内、瞬間的な光と未来を分担するとされる。


 瞬光神(トキミヤミナヅキ)の加護を受けて生まれた私は未来を垣間見る事がある。


 無意識に視る未来は大きく分けて2通りがある。

 数秒後の困難を垣間見る事で災いを避ける警告。

 遠い未来に起きる避けられぬ悲劇を伝える神託。


 さっきのは神託。

 決して避けられぬ悲劇。


 だが、備える事は出来る。

 悲劇そのものを変える事は出来なくとも、その結果や過程を変える事は出来る。


 そして何より──────。


「──────義姉上殿、大丈夫か?」

「姉さま。どうしたのですか?もしや──────」

「申し訳ありませんテレイオス様。大丈夫よタチアナ。私は貴女を、貴方たちを不幸にはしない」


 少女はユメを見た。

 闇の中を進むダレカの未来(ユメ)を──────。


 †


 男が従者を引き連れて宮殿を歩いていた。

 会議の日に女性の従者と共に宮殿を歩く男の貴族はまずいないだろう。


 彼への対応は所属によって正反対になる。

 衛兵や騎士はだいたい好意的。軍部の関係者も同様。

 反して、産業・財務関係の貴族や貴婦人からは蛇蝎のごとく嫌われる。


 これは彼が冒険者から成り上がった事に由来する。

 実力主義な一面がある軍部とは気質が合う。冒険者上りの顔なじみも少なくない。

 逆に、プルートーン財団によって利権を侵害された側にとっては不倶戴天の敵、というワケだ。

 列車関係の利権や冒険者ギルドからの上納金に関しては、貴族連中に先見の明がなかっただけの事。彼らは何もしないで利益を得ているんだから文句を言われる筋合いはない。──────というか、アイツらに任せておけない。身分や血統を重視する連中に任せたら、平民への被害を度外視するだろう。そんなんだから自動車を一般に普及させるのを止めているんだ。固定観念に縛られて変化を拒む典型的な老害ども。ホントに邪魔しかしねぇなアイツ等──────!


 内心で勝手に怒りをぶつける男。

 先ほどの会議室での一幕が原因で、色々と高ぶっていたのだった。


 男は後悔していた。

 見栄を張りすぎた。

 あそこまで見事に決裂しなくても良かったのにな、と思う。


 お姫様と話せたのは幸運だった。

 実に14年ぶりだ。宮殿で会う事はあっても、大抵邪魔が入ってしまった。おのれジジイども。


 威厳と共にいろいろなモノを垂れ流すボケ老人はどうでも良いが、彼らの機嫌を損ねたことで『帝国』に居づらくなってしまった。

 今後の活動に今以上の障害が考えられる。敵対した時の危険度からプルートーン財団への影響は大してないだろうが、俺自身への直接的な嫌がらせを兼ねて余計なちょっかいを出されると非常にめんどくさい。


「──────いっそのこと高跳びするかね」


 正門で敬礼をする衛兵に会釈を返したら、そんな独り言が零れた。

 ……悪い考えじゃないな。

 よし、思い立ったが仏滅(違う)!石橋をたたき壊してなお進む。押してダメならぶち壊せ。

 それじゃぁシャーロンに──────


「──────テラ様?」


 シャーロンに──────何だっけ?

 後ろを振り向くのが怖い。とても怖い。


「別に構いませんよ」

「え、良いの?」


 しかし、返ってきたのは予想外の返答。

 こっちは──────


 シャーロンには貴族のジジイどもの目を逸らさせるのに有効って言いくるめて、財団のコネを使って国境警備隊に根回ししてもらおう。

 よーし、こうなったら止まらないぞー!ごめんねシャーロン☆迷惑を掛けるね!


 ──────何て事を考えていただけあり、何となく気まずい。


「理由を聞かないのかい?」

「ええ、だって分かってますから」



「冒険をしたくなったのでしょう」



 ──────その通りだ。

 だって、堪らないじゃないか。


 シャーロンが周囲に簡易的な結界を張る。

 ありがたい。そこまで気が回らなかったし、抑えきれる自信がなかった。


『──────折角なら、貴方と大一番の戦いをしたい』


 ──────獰猛に笑う。

 情緒不安にもなろうというものだ。

 あの可愛らしい姫様が、あそこまで極上の好敵手に育つとは──────!

 ああ、なんと素晴らしい。素敵な宣戦布告だった。あそこまで見事に言の刃を突き付けられては、興奮しない方が無礼というものだろう。

 素晴らしい。最高に最悪だ。彼女は今までのどの敵より、これまでに想定していたどの仮想敵より難敵だ。実際に戦うのなら、プルートーン財団実行部隊と『帝国』軍部の正面衝突になりかねない。実質的な内戦だ。下手にゲリラ戦にでも持ち込めば膨大な被害が長期間にわたって出続けるだろう。だからこそ、決着は短期決戦。多くの英雄が露と散る、正しく神話のような劇的な戦いになるだろう。


 だから最善なのは今すぐに叩く事。

 勇者と言う戦力が整う前に滅ぼすのが最善だ。


 だが、それではダメだ。

 俺がオリガと一対一で戦うのではない。

 プルートーン財団を率いる俺が、全てを積み重ねたオリガと戦うのだ。


 それにはオリガが勇者を掌握するまで待たなくてはいけない。

 ならば、それまでの間、この高ぶりをどうして鎮めれば良いのだろうか。


 俺は冒険者だ。ならば、冒険をすることで鎮めるしかないだろう。

 ついでに、冒険から帰って来る頃にはオリガも勇者を掌握しているだろう。

 更に、プルートーン財団にとっても、新たな販路を開く事も望むことが出来る。


 俺にヨシ、敵にヨシ、味方にヨシ。三方ヨシだ。


「──────あぁ、楽しみだ」


 感情を抑え込む。

 これ以上高ぶると物理的に被害が出る。


「良かったですね、テラ様」

「ああ、少し残念ではあるがな」


 かつて救ったお姫様は永遠に手に入らない者になってしまった。

 皮肉なものだ。無邪気に抱き着いてきた少女と殺しあう関係になるとは。


「手に入らないからこそ美しいモノもある、か」


 俺を殺したい、俺に殺されたい。

 人生の最後に俺を選んでくれた。

 もしかするとソレは、最も過激で情熱的な告白かも知れない。


 ──────まったく、ロマンチックにも程がある。

 これじゃぁまるで、地面(テラ)から手を伸ばして、届かぬ(ステラ)を掴むようじゃないか。


「では、テラ様。いつものアレですね」

「ん?」ほんの刹那、戸惑い「そうだな──────」宣言する。



「──────さぁ、冒険を始めよう」



 それは俺たち冒険者の合言葉。

 皆で集まり、計画を立てて出発するのだ。

 可能な限り最善かつ最上の装備を揃え、体調を整えて旅に出るのだ。

 向かう先は迷宮か洞窟か。それとも古代文明の遺跡か、神話の時代から存在する魔塔か。果てには溶岩地帯や海底神殿なんて事もある。

 もちろん、無事に帰ってこれるかは分からない。──────だから、こう続くのだ。


「──────ええ、良い旅を」


 次に帰ってくる時。

 その時は決戦の日だろう、そう思った。


 ──────そう、思っていた。


 †


「──────大一番の戦いをしたいって言ったじゃないか」


 星空の下、列車に揺られながら男は呟いた。


 ──────元宰相、ウラジーミル大公女オリガ、行方不明。


 半年前に起きた、勇者によるクーデター。

 彼女は全ての責任を押し付けられた。


 見知らぬ誰かであっても傷ついてほしくない。

 身近な誰かと見知らぬ誰かなら身近な誰かを救うことを選ぶ。だが、自分が傷つくことで見知らぬ誰かが救われるなら、躊躇せずに自らを傷つける。


「──────そういう子だったな」


 昔からそうだった。

 全く──────仕方ないお姫様だ。


 出来る事は全てした。

 プルートーン財団の総力を以って捜索した。

 それでも見つからないのなら──────まぁ、覚悟はしておくべきだろう。


 飛行などの空中移動系統の神秘を利用した空路ではなく、列車を使って移動しているのは目を逸らすため。

 その為に、可能な限り目立つように移動する。

 入国するまで半年という時間が必要だった。国外でやり残したことを全て片付け、国境の『海峡交易都市』での入国審査でひたすら邪魔をされた。


 『帝国』に入ってから一週間余り。

 入国後の目立った妨害は無かった。だが、ここからは直接的な攻撃を含めて様々な妨害が考えられる。


 障害は全て排除する。今までと変わらない。


 特に目的のない、同伴者もいない。そんな身軽な旅が終わろうとしていた。


「さぁ──────」




 ──────さぁ、冒険を始めよう。




 思わず零れたソレに応える者はいない。


 新月の夜。星明りの下──────。

 今夜も列車は闇を裂いて、無人の荒野を進む。

 1話『ユメが交わるまで』でした。

 ──────霊峰の処女雪。その白銀。/最下層の泥濘。その漆黒。


 出来たら5000字。長くても8000字にしようと思ったのに、また長くなってしまった。

 帰って来た時、寝っ転がりながら手軽に読めるようにしたいと思ったのに……上手くいかないモノです。


 引っ越しする際、机の引き出しの奥にあった黒歴史ノートを発見しました。

 そんなわけでレッツSAN値チェック。

 ──────ついてこれるか(厨二病に)?

 どうやら初めから発狂してたようです。狂気どうしようかな……厨二病を倍付けとけば良いか?


以下、適当な爵位(ただし、皇族は除く)


 大公

 公爵

 侯爵

 辺境伯

 伯爵

 子爵

 男爵

  ここより上が貴族。

 準男爵

 騎士

  ここより上が世襲可能。

 準騎士


ご覧の通り、かなり適当です。現実には準騎士なんて爵位はないので注意。強いて言うなら騎士見習い(エスクワイア)とか騎士モドキ、という感じです。



 ここまで読んでいただき、誠にありがとうございます。


 そして、これからもよろしくお願いいたします。

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