プロローグ
少年はふと目を覚まし枕の傍に置いてある時計を確認して現在の時間を確認する。現在深夜0時を回ったところだ。
布団から体を起こし、辺りを見回す。そしていつも傍に寝ているはずの姉がいないことに気づいた。姉の歳は10歳で少年は五歳、いつも一人で寝るのが怖いため、両親にお願いして一緒の部屋にしてもらっている。姉もそんな弟を愛おしく思っており、一緒に寝ている。いつも寝ても覚めても姉が傍にいるために少年は不安になってしまう。そうこうしていると部屋の外で何か物音がした。もしかしたら姉が飲み物を取りに行ったのかも知れないと思い、寝ていた部屋を出ることにした。
部屋を出て廊下を歩く。少年の家族が住んでいるのは賃貸マンションで廊下は全ての部屋は繋がっている。廊下は暗く、両親ともに出張のため人の気配がない。そのため幼い少年からすると恐怖のほかなんでもない。しかし姉がいないともっと怖い。少し我慢すればこの怖さから解放されると少年は自分に言い聞かせて足を進めた。廊下の端に微かに隙間があいた扉があり、そこから光が漏れていた。少年はそこの扉をあけるため、駆け足で向かう。お姉ちゃんがすぐそこにいて抱きしめ、僕を安心させてくれる!と気分を高揚させ、けた瞬間思考は停止した。目の前の惨事が理解できなかったのだ。
その部屋はリビングで、その壁には赤黒い血が点々としており、ところどころ置いてある家具が壊れている。また、苦しそうにうめいている女の子の声がきこえた。部屋の中には黒いトレンチコートを着て茶色の革手袋をはめている男性とうずくまっている女性がそこにいた。女性を見た少年は思わずお姉ちゃん、と声をあげてしまった。彼女のいる所は照明が壊れており、しっかりと確認できなかったが雰囲気と声と家にいるのは姉だけなのでそう思ったのだ。その声に気付いた男が少年の方へ振り向く。
「起きていたのか」
男から発せられる声は低く、重苦しい雰囲気を感じる。男の子の姉を一瞥し、ゆっくりと近づいてきた。よく見るとそいつの肩からは鮮血が流れ出ている。何か姉が言っているが少年の耳には入らない。ゆっくりと近づいてくる恐怖に体が動かない上、声も出ないのだ。
「見られたからには仕方ない」
そうそいつは呟き腰のホルダーからソードオフショットガンを抜いて銃口を向ける。その後、引き金に指をかけて引いた。その瞬間赤黒い血が少年の視界を覆い尽くし、その後すぐに体を思いっきり締め付けられるような痛みを感じた。そして薄れゆく意識のなか呪詛のような声が聞こえる。
「・・・・・・狩ル。・・死・・・・・無イ」と。