3-10 勇気、前進、青信号
ホワイト・ギルドを率いる立場にある者の肩書き――つまり「査頭」であるが、彼らが現場で捜査活動に加わるというケースはほとんどない。その多くが、事務所の椅子に座って眠い目を擦りながら書類整理に勤しみ、適宜エージェントの採用や引き抜きに応じ、事件の調査に際しては各関係部署との連絡を通じ、現場に出張るエージェントたちの活動が円滑なものとなるように取り計らうといったものに終始する。
早い話が裏方であり、縁の下の力持ちであり、そしてここぞという時には、エージェント各員の意見を聴取して総合し、ギルドの方針を定めて連帯感を高める、屋台骨であることを要請される役職である。
無論のこと、ギャロップ・ギルドの査頭たるアレクサンドル・ミハイロヴィッチもまた、そうした屋台骨としての業務に取り組んでいる。それでも、彼が普通の査頭と違うのは、肉体に依る戦闘能力を有しているというところにあると断じて良いだろう。
少数精鋭といえば聞こえは良いが、アイリス・ツインブラッドも指摘していた通り、ホワイト・ギルドは人員不足に喘いでいる。
そして、事件が生き物であり、どこでどんな有機的結合の末に複雑怪奇なスケールを獲得するか、初動捜査の時点では完全には把握できない以上、査頭もまたエージェント業務を兼務する可能性を考慮する必要がある。
早い話が、プレイングマネージャー。自らも戦闘能力を保持することに、越したことはないのだ。
そして、今回自分たちが担当することになった事件が一筋縄ではいかないであろうことは、ルル・ベルも、そしてミハイロヴィッチも強く予感していた。可及的速やかに、協力者を募る必要性に迫られていた。だから、ブランドン・ブリッジスの勧誘に失敗した旨を報告したとき、ミハイロヴィッチが出張ってくるのは、ルル・ベルの予想するところではあった。
そんなミハイロヴィッチの勧誘手法は、普通のそれとは異なっている。そこは《ミハイロヴィッチ流》とでも言うべき、彼自身の人生観に基づいたもので、ルル・ベルはこれがどうも苦手だった。
『信号が青になっているのに、ずーっと後ろを向いて足元の影に視線を落としている人に向かってさ、信号青ですよーって呼びかけたところで、振り向かないし、歩き出さないでしょ。しつこくクラクションを鳴らしてやらないと、気づかないんだから』
つまり、そのクラクションを鳴らすのが自分の役目であるとミハイロヴィッチは考えている。先ほどのブランドンに対する挑発が良い例だ。あんな物言いを受けて、怒りをやり過ごす人の方が珍しい。
いつものことだ。ブランドンだけに限った話ではない。これまでもミハイロヴィッチは同様のやり口で、自らの眼力にかけて厳選した協力対象者の心に火を点け、能動的に彼らが動き出すように仕向けている。それで失敗したことが一度もないというのは、確かに実績としては誇らしいだろう。
それでも、他にやりようはあるはずだと、こうした場面に出くわすとルル・ベルはいつも思う。クラクションを鳴らすだなんて、そんな乱暴なやり方で、自分の人生にどう折り合いをつければよいか分からない人の足を目覚めさせるのは、やはりどうにもしっくりこない。
それじゃあ、他にどんなやり方があるのか? と問いかけられたら、具体的な妙案は浮かんでこない。そんな自分に腹立たしさを抱くこともある。
とにもかくにも、いまは目の前の出来事が、どのような結末を迎えるのか。それを見届けることしかできない。
ルル・ベルは、ポーチの中でドロップを弄びながら、二人の男の衝突を見守り続けた。
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捌く。いまは徹底的に捌くしかない。肘を突き上げ、手の甲でいなし、脚も使って、襲い掛かるミハイロヴィッチの猛攻を凌ぐほかない。それも、いつまで持つかわからないが、とにかく《殴られ屋》の自分に今できることと言ったら、それぐらいのものだ。
ミハイロヴィッチのような手合いを相手にするのは、ブランドンにとっては珍しいことだった。それというのも、客の多くは、力にものを言わせた湾港労働者がほとんどであるからだ。日々の労働で鍛えられた肉体を惜しげもなく晒し、自慢の拳の一発で相手をのしてやろうと息巻く彼らの呼吸を読むことは、そこまで難しいものではなく、タイミングも計りやすい。相手がサイボーグだろうと関係なかった。むしろ身体を拡張している者ほど、弱った小動物を発見した肉食獣のような目つきになり、動きに精彩さを欠いたパンチを平気な面で出してくる傾向にあるのだ。
ところが、ミハイロヴィッチは違った。深い森の中にじっと何時間でも潜み続けて好機を伺う、それこそ職業通りの狩人よろしく、油断や焦りとは無縁の身のこなしを披露している。ブランドンの、普段の動きの中に潜んでいる、隙とも呼べない隙を見つけ出し、そこへ的確な速度と的確な角度でパンチを送り込んでくる。
その堅実な攻撃は、開始早々に二発のクリーンヒットを与えてからも、変わることはない。淡々と、だが通り一辺倒の打撃ではなかった。隙を見せようものなら、果敢に飛び込んでくるような……そんな気配を拳に込めている。
手強い相手だ――もしかすると、自分はこの戦いを通じて、はじめて《殴られ屋》の本当の難しさを思い知らされているのかもしれない。
「残り一分です!」
携帯端末から時間経過を告げる電子音が鳴り響き、持ち主であるルル・ベルが声を上げた。
ミハイロヴィッチの手数は止まらない。捌いても、捌いても、牙を剥いた蛇のように襲い掛かってくる。外科手術により埋め込まれた外挿式スロット……うなじの辺りで緑色の稼働光を控えめに放つのは、技能の結晶たる《テック・カセット》である。だが、プリ・インストールされているプロ格闘家のスキルは使ってはいない。現状の己の身体に合ったかたちに、カスタマイズしているのだろう。
そう考えれば、動きに自然さがあるのも納得がいく。複雑なコンボ・プログラムを組んで、技能に身体が引っ張られていく「ぎこちなさ」というものがないのだ。そのために、ブランドンはミハイロヴィチの攻撃を読むのに苦労している。
拳が飛んでくる。
前傾姿勢を取りつつ腰を屈めた拍子、ブランドンの髪の毛が数本、カミソリで切られたかのようにパラパラと舞った。
足払いを仕掛けようと、腰を捻りながら、右足を鋭く突き出すミハイロヴィッチ……と同時に、視界の外からブランドンの顎を目掛けての左アッパー。
これを辛うじて読み切り、ブランドンが上半身を後ろに逸らす。眼前を通り過ぎる拳に一瞬視界が遮られる。その間、今後は右ストレートがボディを狙いにくる。
避け切れない。
ブランドンは背を丸めつつ、左膝を素早く鳩尾までひきつける。
弾かれる拳。どちらのものかわからない、くぐもった呻き声。およそ二秒間の出来事。ほとんど避け切れてなどいない。額や背中に滲む汗の量が、ブランドンの労苦を物語っている。ミハイロヴィッチの動きを読むことができても、距離を取ろうとした矢先に、あっという間に距離を縮めてくる。
「あと残り四十秒!」
ルル・ベルの声が上擦っている。試合の趨勢は見えていた。ブランドンは回避と防御に徹し続けようとしたが、その時、不意に脳裏を掠める何者かの声。
――あなたって、どうしていつもそうなの。
別れた妻の声。家を出る彼女の背中が、瞼の裏に焼き付いている。こちらを不思議そうに振り返りながら、妻に手を引かれてドアの向こうへ消えていった、幼い我が子の姿が、ブランドンの心の奥底でフラッシュバックする。
――頭の中でぐちぐちぐちぐちいつまでも考えて、なかなか行動に出ようとしないんだから。
まったく、本当に、君の言うとおりだ。
俺って奴は、こんな男でしかないのさ。
珠のような汗を額に滲ませ、ブランドンは心の奥で苦笑するしかなかった。
「残り、さ……三十秒です!」
いや……本当に『こんな男』でしかないのか?
眼前には、ふたつ並んだミハイロヴィッチの拳。そこから、ゆっくりと視線を上に動かす。狩人の、こちらを試すような怜悧な視線とぶつかり合った。
その瞬間、ブランドンは、自分がこの場に立っていることの是非について無意識の思考を巡らせていた。いまの状況が、ただの成り行きでしかなかったのかどうか……
違う。選択したのは自分だ。自分の意志で、この状況を選んだのではないのか。
七年前の、あの事件の日以来、いつの間にか失われてしまっていた熱。
生きるための力。前へ進むための勇気。
それをどうにか取り戻したくて、自分は《殴られ屋》なんて仕事に手を出した。
ミハイロヴィッチの誘いに乗ったのは、彼の言葉が、少なからずこちらの芯を喰っていたからだ。
「(まったく、単純なヤツだな。俺という人間は)」
己の心の弱さを一度認めてしまえば、不思議と肩から余計な力が抜けてくる。
ブランドンの中で、何かが吹っ切れた。
「あと十五秒! ブランドンさん!」
心臓は早鐘を打っている。熱さを取り戻しかけている血潮が、全身のあちこちを隈なく駆け回っている。頭蓋の裏で理性が囁き、呼吸は次第に落ち着きを取り戻し、スニーカーの裏で地面を掴むように立つ。
過去と未来。取り戻せなかった幸福と、去ってしまった希望。数々の出来事に想いを巡らせて、だが湧いてくるのは、息の詰まるような感情ではなかった。それは、電撃的な思考の連鎖が生み出した、自らを客観視する力。脳裏を覆っていた思考の靄を打ち払うための、意志の風。
《殴られ屋》――血気盛んな挑戦者の猛攻を、ただ凌ぎ続ける仕事。自分からは一切の手を出さず、ただの一発も拳を当てることをせず、その場を適当にうまくやり過ごし、相手を気持ち良くすることだけに重きを置いた仕事。
それで良いのか。
仕事だけじゃなく、生き方までも、それで良いのか。
今後もそうした生活を続けていくのか。
大切な仲間を……同じ時を過ごした仲間を……失ったんだぞ……
「(仲間? 仲間だって?)」
どれだけ都合よく解釈すれば気が済むのだ――己に対する怒りを、ブランドンは微塵も隠さず、ぎりぎりと奥歯を噛んだ。
仲間だなんだと言っておきながら、自分はピートのことを何も知らなかった。それでも「裏切られた」とは思わない。思えるはずがないのだ。出会った当時、自分と同じ境遇にある少年なのだろうと勝手に推測し、自分がそうされたくはないように、ピートの人生に深く踏み込むことをしてこなかった。ピートとの関係性を、不遇に甘んじる己を慰めるために「仲間」というカテゴリに縛ってきたのは、他ならぬ自分身なのだ。そのツケが、いまこうして回ってきているのだとしたら?
「の、のこり、十秒!」
浴びせられる拳。頑なに防御の態勢を崩さないブランドンの体躯に、恥ずかしさにも似た熱が駆け巡った。そんな自分から眼を背けて、これからも漫然とした日常へ回帰しようというのか。穏やかに生きて死ぬような、そんな人生を送り続けるつもりなのか。安穏とした人生が、罪を犯した自分に、約束されているとでも?
ふざけるな。
約束した覚えなどない。
――自分の人生は、自分の力で引き受けるしかないのよ。
「あと五秒! よん! さん!――」
「(ああ、まったく、本当に)」
君の言うとおりだ。
瞬間――ブランドンの世界から、全ての音が消えていた。
ルル・ベルの叫ぶような声も、ミハイロヴィッチの息遣いも、通りをまばらに行き交う人々の会話や足音も、電飾煌めくディスプレイから流れる宣伝歌も、なにひとつとして届かない。
その刹那のうちだけは、ブランドンの意識だけが世界の中心にあった。その意識が途方もない爆発を引き起こし、思いもよらぬ反応を、ブランドン自身の肉体から引き出した。
それまで自分の中で規定していた《殴られ屋》からの、脱却。
ブランドンの拳が、何かを強く拒否するように、そして前進を示すかのように、渾身の意志の下で突き出され、それを弾いていた。
ミハイロヴィッチが顔面を狙い澄まして放ってきた、鋭い右ストレート。その伸びきった肘の内側を、左の拳で叩き落としていた。
軌道は逸らされ、ブランドンの視界から脅威は去った。
「ゼロ! 試合……! 試合終了!……です!」
時の終わりを告げる合図が、少女の声と電子の音で知らされる。
ブランドンは息を切らし、肩で呼吸をしながら、グローブをその場に脱ぎ捨てた。
そうして、重大な決断を下した己の拳を、ブランドンはじっと見下ろした。汗に濡れる太く骨張った五本の指を、何度も握っては開き、握っては開く。
七年前、事件があった夜の日にハンドルを操作していたのも、そして今、己の立ち位置を明確にしたのも、全てはこの拳だった。だが、そこには明確な違いがあることを、他ならぬブランドン自身が自覚していた。
「いやぁ、このあたりがもう……ぜぇ……限界ですな。二分って、意外と長いもんですねぇ」
顔を上げると、ミハイロヴィッチが同じく大粒の汗を流して息を切らしながら、グローブを外していた。服のあちこちに、薄っすらと汗が滲んでいる。
「いけると思ったんですがね。最初の二発を不意打ちでやってしまったのがいけなかったかな。あなたの闘志を目覚めさせてしまったようだ」
苦笑いを浮かべながら、グローブを外してブランドンに受け渡す。年相応の皴が刻まれたその表情に悔しさはない。
「約束は約束ですからね。敗北は素直に受け入れます。あなたが暫定捜査官になってくれれば、こちらとしては大変ありがたいんですが、無理強いはできませんし」
「あの、ミハイロヴィッチさん」
「ん? なんです?」
「ちょっと待っていてください」
ブランドンはグローブを手に持ったまま、バッグパックのところへ戻り、新品の白いタオルを手に戻ってきた。
「これ、お使いください」
「おお、これはどうも」
タオルを受け取り、額を拭う。ひと仕事終えた男の表情は、どこか晴れやかだ。
「助かりますよ。これ、あとで洗って返しますからね」
「いや」
ブランドンが、小さく頭を振った。
「その必要はありません」
それから、一歩後ろに下がると、ほとんど直角に頭を下げた。
「挑戦……ありがとうございました」
そのまま、しばらく動かなかった。
ミハイロヴィッチは、タオルを持つ手を止めた。足元の影に目を奪われ、一歩踏み出す術を知らなかった男の黙礼。そこに込められた意味を正確に掴もうと、目を眇めて、ブランドンの後頭部を見つめる。
やがて、ミハイロヴィッチはルル・ベルのほうをちらりとみやり、それからタオルを自分の首にかけると、ポンとブランドンの肩を叩いた。
「その選択、本当に悔いはないですか?」
頭上からの声に応じるかたちで、ブランドンは、ゆっくりと面を上げた。
ミハイロヴィッチの瞳が、静かに燃えている。
「ピートさんの事件の真相を追えば……おそらくはあなたにとって、きっと辛いことが待ち受けている。これはあくまで、私の勘でしかないですが……しかし、事件は生き物だ。真実がどのようなかたちで目の前に現れてくるかは、誰にも予測できない。市警にだって、それは同じです。もちろん、この私にもわからないことだ。当然、あなた自身にも。それでもあなたは、私たちに協力するおつもりで?」
「はい」
「なぜ?」
ブランドンは、言葉に詰まらなかった。悪魔の男と揶揄されてきたその人物は、悪魔には似つかわしくない態度で、きっぱりと言い切った。
「友人を、正しく弔ってやらなきゃいけない。それが俺の責務だと、気づいたからです」
ルル・ベルが小さく息を呑み、ミハイロヴィッチは、驚いたように目を見開いた。この都市で数多くの陰惨な事件を解決しようと奔走してきた彼らにとって、言葉の真贋を確かめるのは、容易なことではない。
だがそれでも、二人は感じ取っていた。ブランドンの言葉に、嘘偽りがないことを。それが見栄や虚飾に染まったものではないことを。
「わかりました。よろしくお願いします。ブランドンさん」
ミハイロヴィッチが差し伸べる、親愛の込められた右手に、ブランドンは快く左手で応じた。
「こちらこそ、ミハイロヴィッチさん」
「ぼくのことは、ミハイロで良いですよ。もしくは査頭とでも呼んでいただければ。これから一緒に仕事をする仲間になるんだから」
仲間になる。その一言が、ブランドンに、また新たな決意を呼び起こした。
「だったら、伝えておくことがあります。俺が過去、どういうことをした人間であるのかを。七年前……二人ともメディアの報道である程度はご存じのはずだ。七年前に俺が起こした、あの事件……あれについて、ちゃんと自分の口から話さないことには」
「ブランドンさん」
それまで様子を伺っていたルル・ベルがブランドンの下へ駆け寄り、昨晩と変わらない瞳で彼を見上げた。
「もう夜も遅いですし、その話は、明日にしましょう」
「だが……」
「大丈夫です」
ルル・ベルは力強く言った。
「私たちには、あなたの話を聞く準備がちゃんと出来ていますから。そう焦らないでください」
「ルル・ベルの言う通りだ。まぁ正直、ぼくも最初は半信半疑だったが……しかし、いまは確信している。あなたはきっと、世間が言うような極悪人ではないのでしょう」
ミハイロが、後の言葉を引き継いだ。
「実際に顔を会わせて、昨日の出来事があって、そしていまさっきの試合を通じて、あなたは信頼に足りうる人物だと、ぼくも、そしてルル・ベルも判断した。それでは不満ですかな?」
「それは、ありがたい話だが……でも、なんというか、こんなことを言うのは決意が鈍っていると判断されるかもしれないが、俺が暫定捜査官になることで、不満に思う奴らもいるんじゃないのか?」
「いますね。ウチの事務所にも、おそらくいますよ」
気休めを言ってもしょうがないと思ったのか、ブランドンはあっさりと告げた。ルル・ベルが軽く睨みつけるが、その視線に気づいていないふりをして、ミハイロは続ける。
「あなたが事の真相を口にしても、暫定捜査官になることに反対の立場を取る者はいます。ウチの事務所にも、市警にも。だったらどうするか」
「……行動で示すしかない」
「その通り」
ミハイロは両腕を組んで、力強く頷いた。わかっているじゃないか、と暗に告げるように。
「無罪判決が出たとはいえ、起訴された人物を暫定捜査官に任命することは原則不可能なんですがね……そこのところは、まぁこの状況を上手く使えばなんとかなるでしょう。その辺の諸々の制約を突破するための書類をこれから作らなゃいけないので、一緒に事務所に来ていただいても?」
「ああ、もちろん。よろしく頼むよ」
「それじゃあ、行きましょう!」
ルル・ベルが音頭を取る形で、三人はそれぞれに荷物をまとめて歩き始めた。
夜の帳が降りた都市最下層。その先頭を行くのは、コーチ・ミハイロヴィッチ。その後ろを並んで歩くのは、ブランドン・ブリッジスとルル・ベル・アンダーライト。
交差点で三人を待ち構えている信号は、いつの間にか青に輝いている。
ここまでお読みいただき、ありがとうございます。
この話を以て、全三幕から構成される第三部のうち、第一章が完結しました。
続きまして、長い長い第二幕に突入いたします。




