EP.1-3「きたるものからまもるもの」
要素とは守るためのもの。
それが原因で攻められることもある。
諸刃の剣なのだ。
「非常に素晴ラシイ要素です…だからコソ、守りヲ固める必要ガあるかと思イます。」
[恩恵]。
確かに話を聞く限り非常に素晴らしい要素である。
しかし、青年…要素にあやかり、グレイスと呼んでおこう。
彼にひとつの疑問が浮かんだ。
「…どうやってこの要素で迷宮を守るんだ?」
エルジストは硬直した。
「……どうヤ…って……?」
そして、ひどく悩んだ。
支援でどのように守るのか?単体ではまず不可能である。
しかし、援軍などを呼ぶタイプだって生み出せるかもしれない。
「…ひとまず、使役者ヲ生成シテみてハいかがデショウ?」
精一杯の提案だった。
さすがに彼も生成の仕方は教えられているはずだ。
「こうして、瓶を埋めれば良いんだよね…」
「そして待チます。強い者ホド、時間がかかりマス。」
すると数分後、地面から小さくて白い箱が飛び出してきた。
「にゃーん!」と可愛らしい声を上げて。
この世界には、少なくとも迷宮に図鑑のようなものはない。
個体の情報は実際に見て理解する必要がある。
しかし、ここには長きに渡りここを見てきた者がいる。
「…リペア・ミック。回復ニ特化した擬態系、支援派生ノ使役者です。
攻撃能力はホボ皆無、装甲は硬イですガ、中身は柔ラカク核を突カレルと即座ニ朽ち果テます。
しかしソノ可愛い素振リ、鳴き声に油断シ、倒さナカッタ人間が回復能力デ苦戦を強イラレタ例も存在スル…地味ながら優秀ナ存在デス。
人懐っこい面モあり、その能力、性格、鳴き声ナド様々な要因ニより人ノ街でも時折ソノ姿が見ラレルそうデス。」
ラビリムに生きる人々は「魔物」を
「ミーバー」「ゴーレム」「ドラゴン」等、大雑把な特性に対する分類の「系」分類と、
「攻撃」「防御」「支援」「特殊」等、その魔物の戦闘特性による「派生」分類にて分類している。
例えばだが、グレイスの横にいる彼、エルジストはゴーレム系防衛派生。ただただ守る事に特化した、神造兵器とまで言われたゴーレムである。
話が逸れたが、擬態系の者は本来、奇襲を得意とする。
オーソドックスな者であれば…
宝箱に擬態し、油断して開いた所を頭に噛み付いて再起不能にする攻撃派生の「トレ・ミック」
突如壁に穴を開け出現し、穴に相手を引きずり込んで迷宮から退場させる特殊な派生の「ウォールハッカー」
液状の身体を壁に貼り付いて同化し、人が近付くと己の身体を「破人槍」と化して貫いた人を破裂、即死させる攻撃派生の「サイコミーバー」
…等があげられる。
しかし、リペア・ミックは支援派生。
相手から分かりづらい場所からの回復を得意とする者である。
しかし、牙は無く移動も遅い。体は小さな白い箱。胴には緑の十字模様。
所謂、救急箱に擬態した者である。人の作った図鑑には、「世界で一番無意味な擬態」とまで書かれてしまうほどのものだ。
救急箱は普通、迷宮に落ちてないからね。
「…やっぱり[恩恵]じゃ、厳しそうだなぁ」
と、深くため息をつくグレイス。
「…他の要素ニ頼る他、ナイでしょう…」
そう残した彼は、静かに歩いていくのであった。
めるとめろんです!
あとがきがすこし適当になってきているきがします!
至らぬ点がまだまだ、あるかもしれません!
ひとこといただければ、うれしいです!