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終幕

 いまおれとアリスのふたりは、キャンプ場へとやってきていた。アリスははしゃぐようにして道を歩いているが、おれはぐったりとしていた。


「さあ急ぎましょう」そう言ったアリスの足取りは軽い。


「ちょっと待ってよ」おれは言った。「歩くのが早いよ。こっちは長時間の運転で疲れているんだから加減してよ」


「このくらいで音をあげない。黒川さんは宝石を弁償する代わりに、百万円分わたしをキャンプで楽しませなくちゃいけないんだから。これからも覚悟してよ」


 おれは苦笑いをうかべる。「肝に銘じておきますよ、アリス」


「その名前はやめてよ」アリスが言った。「いまはプライベートでキャンプに来ているんだから。その名前で呼ばれると仕事しているみたいで楽しめないじゃない」


「それじゃあ灰田さんって呼べばいいのか?」


「いまさらあなたに、さんづけで呼ばれても気持ち悪いわ。だからわたしのことはアカリでいいわよ」


「わかったよアカリ」


 おれと彼女はそのまま展望台へと向かうと、そこから外の景色をながめ見る。さんさんと輝く太陽の下、緑色をした芝がひろがり、そのまわりを青々とした木々が森を形作っている。青く澄み切った空にはくもひとつもない。そしてそこには七色に輝く虹がかかっている。外側が紫で内側が赤色だ。


「虹が出ている」彼女が言った。「きれいね」


「あれは副虹だよ」


「副虹?」彼女がおうむ返しする。「それはどういうこと」


「虹にも種類があるんだ。外側が赤くて内側が紫色をしているのが主虹で、その逆に外側が紫で内側が赤色なのが副虹って言うんだ」


「そうだったんだ」彼女は微笑んだ。「それにしても美しい光景だと思わない」


「ああ、そうだな。だからうれしい。またこうして色づいた美しい世界を見ることができるなんて、おれは幸せだ」


 彼女はにっこり笑うと、こちらに手を差し向けた。「ようこそ、いえ、おかえりなさい虹色の世界へ。あなたを歓迎するわよ」


 おれは差し出された手をとると笑った。「ただいまアカリ」

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