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第一幕 第三場

 都市郊外にある霊園へとやってきたおれは、とある墓の前に赤いバラの花束を添えた。その墓石には白石家の文字が刻み込まれている。それを見ると心が深く沈んでいくのを感じた。


「ごめん、おれはきみを助けることができなかった」


 くやしさからこぶしを握る。自分は白石ヒカリを助けることができなかったという事実が、胸に深く突き刺さる。


「あのとき白石を助けることができたのは、おれだけだったはずなのに。でもおれはそれができなくて、こんな結果になってしまった。ほんとうならいまごろ、きみは生きて自分の誕生日を祝えるはずだったのに。ほんとうにごめん」


 言い終えると、おれはズボンのポケットからビデオカメラを取り出した。そしてディスプレイ画面を開き操作すると、記録されていた白石の思い出の動画ファイルを再生する。


「ちょっと急に撮らないでよ」画面に映る白石が言った。「もう、いつもそうやって、人が油断しているときにカメラをまわすんだから」


「だいじょうぶだよ」自分の声が聞こえてきた。「ちゃんと美人に撮れているから、そんなに見栄えを気にしなくても平気だよ」


「またそうやって黒川はわたしをからかう」


「まさか、事実を言ったまでだよ。きみのきれいな姿を撮りたくて、こうしていつもビデオカメラを持ち歩いているぐらいさ」


「もう恥ずかしいからやめてよ。それよりもわたしなんかよりも、あれを撮ったらどうなの」


 画面が揺れ動くと、キャンプ場にある展望台から見おろす景色を映し出した。


 昔を懐かしむような気分で画面に見入っていると、背後から物音が聞こえてくる。おれは思わず動画を止めると、後ろを振り返った。そこにはスーツ姿の男が立っている。その男は長髪で眼鏡をかけており、少しさみしげな笑みを浮かべてこちらを見ていた。その顔には見覚えがある。


「青木」おれは自分がそうつぶやくのを聞いた。


 その男は大学時代の友人である青木ソウスケだった。青木の右手には花束が握られており、そのため反対の手でこちらに向かってぎこちない様子で手を振る。


「よお、ひさしぶりだな黒川」


 青木はそう言うと、こちらに歩み寄る。そして持っていた花束を白石の墓に添えた。

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