〜麓の村〜
〜麓の村〜
「少しばかり騒がしいですね」
「そうね。あの噂は本当なのかしら」
2人は村の中をのんびり歩きながら様子を眺める。
「そうですね…何やら不穏な雰囲気も感じます。菊華様、なにか感じますか?」
「そうね…あそこの家からいやな匂いがする」
菊華は村の端にある家を指さす。そこには数人の祈祷師のような服装の怪しい人が集まっていた。
「すみません。ここで何かあったのですか?」
ヤマトは集団に声をかける。その集団はいかにもと言った感じの服装だが、それがより一層怪しさを引き立たせていた。
「実はな…ここの娘さんが呪われてしまってな。ずっと体調を崩してしまっているんだ」
「呪い、ですか…」
「そうだ。医者に診てもらったが原因も分からないらしいんだ。話によると夜な夜な『ごめんなさい』とうわ言のように寝言を言っているそうだ」
その言葉を聞いてヤマトの顔が曇る。
「ねぇ、ヤマト…」
菊華も同じことを考えたらしく、ヤマトの袖を引いて不安な顔をしていた。
「そうですか…ありがとうございました。何とか救ってあげてください」
ヤマトは真剣な顔に変わって祈祷師の集団に頭を下げる。
「ありがとうございました」
菊華も頭を下げて、2人ともその場を離れる。その間、二人の間には沈黙が流れた。
「ねぇ、ヤマト?」
村から離れ、人に聞かれない場所に来た時、菊華が口を開く。
「そろそろ大丈夫でしょう。恐らく私も同じことを考えていますよ、菊華様」
ヤマトは周りを確認してから口を開く。
「恐らく、噂は本当でしょう。悪霊かどうかは別としても、かなり恨みの感情を持っているのは確実です。今回は大仕事になりそうです」
「やっぱりそうよね…あそこからはかなり悪霊のそれに近い匂いを感じたわ。入ってないのに結構感じたから、恨みも強いはずよ」
2人は情報を共有して静かに俯く。数秒の沈黙の後、顔を上げて話しかける。
「とりあえず、お店に戻りましょう。まずは色々と調べることからです」
2人は喫茶店・隠世にもどるのだった。




