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【第一章】第八話

 ふたりは2階の部屋を出て、1階にある食堂に向かっていった。


 大勢の高校生風の女子たちが、ジャージなどの部屋着でテーブルについていた。乙女の食事は大抵にぎやかであり、ここも例外ではなく、喧騒が食堂全体を支配している。


 四人掛けのテーブルに向かい合って、座った花子と絵梨奈。


「メニューはこれですわ。魚、肉、麺類なんでも自由に選択できますわ。」


「そうなんだ。じゃあ、あたしは肉が好きだから、肉!」


「奇遇ですわね。ワタクシもお肉を好んで食しますわ。」


「わ~い。牙狼院さんと初めて話が合ったね。」


「そうですわね。ワタクシたち、意外に気が合うのかもしれませんわ。」


 ふたりは立ち上がって、テーブル越しに握手をした。


「こんなところで意見が一致するとは意外だね。」


「そうですわね。これも何かの縁かも。」


「あたしたち、仲良くなれそう。」


「これは思わぬ掘り出し物ですわ。」


「うんうん。どんな肉なんだろう。楽しみだなあ。」


「今日はとっておきのステーキですわ。ミディアムレアがおいしい食べ方ですわ。」


「ステーキってなに?どんな料理なの?」


「ステーキのことを知らないんですの?肉好きの風上にもおけませんわね。そういうところは地方出身者っぽいですわね。ステーキとは切った肉をそのまま焼いたものですわ。」


「肉を焼く?あり得ないよ。肉は生で食べるって、昔から決まってるじゃない。生じゃないと肉の味わいがわからないよ。」


「肉を焼いて、調味料で味を整えるのが、正しい肉の食べ方ですわ。そもそも生肉を食べるなんて、赤い血をすするようで、気味が悪いですわ。生き血を吸う恐ろしくておぞましい種族もおりますけど、狼族とは相容れない存在ですわ。狼族にとっても生肉を食べていた時代は数千年前の話でしょう。現代では人間的な生活が狼族の基本です。生肉食が日常だなんて、なんと野蛮なことでしょうか。お名前の通りのヤマンバですこと。」


「たしかにあたしはヤマンバだけど、野蛮なんかじゃないよ。そんな言い方、失礼だよ。」


「事実を聞いた上での素直な感想を述べただけですわ。」


「余計に悪いよ!やっぱり狼族とは合わないんだね。」


「こちらこそ、ヤマンバ族は生き血を吸う種族と同レベルで排除排斥すべきですわ!」


こうして、ふたりはいがみ合ったまま、食事をし、寝る時も会話がなくなってしまった。


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