【第二章】第四十話
アイラは弓を引くように右腕を頭の後ろに持って行き、指を放した。
『ビュン!』
『ズドン!』
自動車衝突事故のような大きな音が、ハナゴンの耳を圧迫した。
「あっ、決めポーズ忘れた。どうせ君は見ることができないだろうから、アジトに帰ってからのお楽しみとするかな。」
『シュウウウ。』
砂埃でハナゴンの姿は見えなくなった。いや、姿そのものがなくなってるのかもしれない。やがて砂塵が晴れて、灰色の塊が見えた。
「焼肉女!どうして?」
絵梨奈の背中に矢が刺さっていた。絵梨奈はゴーレムの甲冑を着てハナゴンを庇っていた。絵梨奈の背中には矢が刺さっていた。
絵梨奈の背中はボロボロと崩れ、絵梨奈はハナゴンに縋るように地面に落ちていった。
「おい、焼肉女。どうして俺の身代わりなんかに。」
「ハナゴンさんの泣き顔が見たいからに決まってますわ。さらわれたワタクシを助けてくれたお礼も兼ねてますけど。ハナゴンさんは、ちゃんと青い歯をつかんでくださいね。さ、最後に生肉、食べたかったですわ。ガクッ。」
「焼肉女~!」
涙を飛ばしながら絶叫したハナゴン。その泣き顔を見ることなく、絵梨奈は動かなくなった。
「俺なんかを庇ってバカやろう、よし、仇を取ってやるぜ!と言いたいところだが、もはやこちらに余力が残っていないぜ。」
ハナゴンは、息を切らしながら立っているのが精一杯の状態である。
「これはこれは。狼女は勝手に倒れてくれて、一石二鳥だったな。」
『アイラ!どうしてこんなひどいことをするじゃん。アイラはこんな性格じゃないはずじゃん。この前は助けてくれたじゃん。』
「あれは必要があっただけさ、木憂華。それに性格に、あんなとかこんなとかいう分類はないぞ。私がやるべきことはアミラを守ること、ただひとつだけだ。木憂華がアミラを攻撃しないというのであればこれまで通り、血液を分けてやるよ。」
『アイラ、どうして?』
木憂華の注射器は、小さな泡を吹くだけで静かになった。
「さて、じゃあテスト提出前の見直しでもやるかな。」
アイラはハナゴンの首をつかんだ。




