【第二章】第三十八話
「俺はここ数日たくさんの歯周病モンスターを倒してきた。ヤマンバ族はもともと戦闘民族だ。闘争心を放棄した焼肉女と一緒にするな。」
「ハナゴンさんの物言い、すごくムカつきますわ!」
絵梨奈は怒りを露わにして、唇をかんでいたが、内心納得する部分がある自分に落胆していた。
「オラオラオラ!煙の中でも、ヤマンバには敵の動きが手に取るように見えるぜ。いつも砂塵の中でバトルしてるからな。」
ハナゴンは煙の中で真下からアッパーカットをアイラに喰らわせた。
『バキッ!』
竹が真っ二つに割れたような音がした。
「手応えありだせ。煙で視界が遮られた時、防御側の心理として、見えない相手は真正面か、左右どちらかから来るだろうと警戒して、真下からの防御は疎かになるもの。これもヤマンバの里での遊びが役に立ったぜ。」
大ドリルでの真下からの突き上げ攻撃は、黒くて丸い物体が受け止めていた。アミラが被っていた帽子である。
数秒後、帽子は粉々に壊れた。
「不意打ちとはヤマンバらしいな。でもこちらも、視界が悪い夜の森で戦闘を繰り返しているから、見えなくても音と殺気を感じて、この帽子が働いてくれるんだよ。相手に合わせて硬度をオートモードで調整するしな。」
『アミラが被っていた帽子は歯肉の一部なんだじゃん?その色は血液が固まって黒くなったということじゃん?』
「さすが、木憂華。私のことがよくわかってるな。でも今の武器の威力は相当なモノだった。この帽子はもう使えまい。ならば私も少々本気でやらせてもらうよ。死んでも知らないがな。」
「言うなあ。それぐらいじゃないと殺りがいがないぜ。」
「お望み通りにしてやるよ。本体である抜け殻を守るのは、体から追い出された者のたったひとつの存在意義だからな。」
「まるで墓守のような言い方をするんだな。」
「墓守だと?それは実にいい表現だな。今からはそれを私の登録商標としてもらい受けるよ。」
「いいぜ。でもタダじゃ売らないぜ。せめて、この大ドリルの滝修行を受けてくれないとな。」
すっかり煙の晴れたところで、ハナゴンはそれまでに見せたことのないような大ドリルの突きラッシュを展開した。
アイラはそのすべてを受け止めていた。それも素手である。
「やっぱりこの歯肉ゴムは役に立つなあ。」
『あれは歯周ポケットじゃん。絵梨奈を包んでいたモノと同じ。いつの間にか、アミラから持ってきたじゃん。』
「これで購入代金の支払いは完了ということでいいかな。それじゃ、おつりでももらおうかな。倍返しでな。」
アイラは手に銀色に光るロープを手にしている。それをビュンビュンと振り回し始めた。




