【第二章】第三十七話
『抜け殻を出した理由はどうあれ、今会話しているアイラはニセモノで、向こうのアミラが本当のアイラじゃん!そ、そんな~、うわ~ん』
「木憂華が気にすることじゃない。それより、そこの彼女は青い歯を探しているんだろう。それはこれだな。」
アイラが手にしているのは青い歯であった。
「そ、それだ!でもこの前は、そこにいるアミラが付けていたんじゃ?」
ハナゴンは両手を胸の前で握りしめている。荒くれたハナゴンには似合わないポーズである。
「さっき一本だけ抜いたんだ。これで勘弁してくれないか。」
「これは偽物だな。」
「どうしてわかった?」
「ヤマンバ族の勘だよ。野生に生きている俺たちは、倒れている動物が死んでるか、生きてるかを即座に判別しないと、命を落とすことにもなりかねない。歯だってそれは同じ。生きている歯と死んでる歯はすぐわかる。ましてや、生物なのか、作り物なのかもすぐにわかる。コイツはただの工作物だ。」
「なるほど、ヤマンバ族か。オペの技術は初心者みたいだが、野生の勘は警戒すべきだな。」
「本物の青い歯をよこせよ。俺にはどうしてもそれが必要なんだ。」
「それは無理な相談だな。歯がなくなることがどういうことか、貴様は知ってるだろう。私は抜け殻を守るために、ここにいる。青い歯を狙う輩は他にもいる。だから、抜け殻だけをこうして森の中で保護している。だが抜け殻には血液という栄養補給が必要だ。血液が欠乏すると制御が効かなくなり、暴れてしまう。」
「抜け殻アミラがこの前俺たちを襲ったのはそのせいか。」
「そういうことだ。だから、適当に魔法歯医者を捕まえて、エサにしている。魔法歯医者の血液はオペで血液を飛ばしているから、常に新鮮だからな。」
「俺には他人の記憶や人生がどうなろうと関係ない。母さんを助けるためであれば、鬼にでもなってやる。」
『もともとヤマンバじゃん。鬼よりコワいじゃん。』
木憂華が会話に横やりを入れてきた。
「うるさい!鬼とヤマンバは住んでる次元が違うだろ!ヤマンバは生の世界にいる者で、死後の世界に行って初めて鬼になるんだ!」
『ヤマンバが死んだら鬼になるとは初めて知ったじゃん。』
「そんなことはどうでもいい。こうなったら実力行使だ。ガキッ、ガキッ、ガキッ、ガキッ、ガキッ。」
『5ガキッ』をやったハナゴンの大ナタからは、夥しい量の煙が出ている。
「これは思ったよりもやるようだな。その煙、狼女の煤塵よりは強力そうだな。遠隔操作の抜け殻では太刀打ちできなかったかもな。」




