【第二章】第三十六話
「ううう。ええい。ままよ!あたしがママよ!!!」
奇妙な声を出して、大ドリルを黒い帽子の女子の口に突っ込んだハナゴン。
『バキッ!』
歯が折れた音が響いた。
「あれ?これは歯じゃない。歯ブラシだぞ!それに、青い髪の女子がもうひとり!?」
クロボーの口の前に歯ブラシがあって、大ドリルとぶつかっていた。
『アイラ?』
注射器内の透明な液体が、照れたように赤く染まり、小さな泡がブクブクと噴いている。
「あなたは、ターヘルアナトミアで会った女の子じゃありませんこと?」
『アイラに間違いないじゃん。こっちが本物。歯が真っ白じゃん。』
「木憂華。変わり果てた姿になったな。でもその方が似合っているな。」
『アイラのイジワル!でもほめてくれてうれしいじゃん。』
「今のって、ほめたと言えるのか?」
ハナゴンは腕組みをして頭をひねった。
『アイラ。その女の子はアイラにそっくりだけど、いったい誰なんだ?』
「木憂華たちならすぐにわかるだろう。それは抜け殻さ。」
『「「抜け殻!?」」』
三人が一斉に叫んで共鳴した。
『でも青い歯がついているんじゃ。』
木憂華たちが見ているクロボーには、しっかりとした青い歯が並んでいた。
一方、アイラの歯は純白に輝いている。
「抜け殻の名前はアミラだ。私の妹だと思ってくれればいい。」
『妹って。抜け殻は自分自身じゃん。でも抜け殻っていうことは、本体のアイラは歯周病モンスターってことになるじゃん。そんなことないじゃん。アイラは正真正銘の人間じゃん。注射器で血をもらってるから、Qにはわかるじゃん。』
「それはそうだな。こっちのからだはiPS細胞を水オペで急成長させて、木オペで細胞壁を強化したもので内蔵を作り、骨や皮膚全体は土オペでゴーレム化したものだ。血液も抜け殻と同一ものが作れるから、木憂華が間違っても不思議ではないな。」
『スゴク高度な複合魔法じゃん。誰にも真似できないレベルじゃん。でも体があっても、歯周病モンスターじゃ、意識をコントロールできないじゃん。』
「たしかに、ウイルスに冒された場合はそうなる。でも正常な状態の歯肉に遺伝子操作をすれば不可能ではない。抜け殻である本体と同一の意思を持ったモンスターと言うべきかな。」
『ま、まさか。抜け殻を作るために、わざとウイルス感染と同じ状態になるようにオペしたということなのじゃん?』
「そういうことだな。」
『どうしてそんなことをしたじゃん?』
「さあな。それは木憂華が考えてくれ。」




